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最低賃金魔王 ~歴代最強の魔王軍、その足を引っ張るのがお仕事です~  作者: 安泰
第六章:激闘。

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旧神の使者。その一

挿絵(By みてみん)

電子書籍版にて2巻が発売されております。

 風族と地族の間に行われる定例会、その開催地はローテーションで入れ替わる。

 ワシは互いの領主の館で行われる回よりも、互いの領地の間に建てられた施設で行われる回が好きだ。

 理由は定例会の前後で互いの土地をゴアガイムと共に観光できるから。

 ゴアガイムは出不精な性格ゆえ、こういう機会でもないと中々一緒に出掛けてくれないのだ。

 今回は定例会前に地族の造った岩盤浴、後には風族に人気な森で森林浴のプランだった……のだが。


「全ク……キャンプ道具なぞ忘れたところデ、支障ないだろうニ」

「ウワハハッ!そういうな!森林浴にキャンプ道具は欠かせぬ物よ!」

「まァ……お前の考えた計画ダ。とやかくは言うまイ」


 そんなわけで今はゴアガイムを掴み、自身の領主の館まで飛行中。

 定例会後の細かい雑務を部下に全部丸投げしたことは申し訳ないが、地族領主をもてなすという大役はワシにしかできぬことなのだ。

 時刻は昼休憩を少し過ぎた頃合い、訓練を再開したばかりの者達を多少驚かせてしまうだろうなぁ。


「うむ、任されよ!必ずや記憶に残る思い出を――」


 前方、街のある方角の空に赤色の狼煙が立ち上っている。

 風族は風を操れる為、多彩な煙とその煙の炊き上げ方で複雑な情報を伝達することが可能だ。

 しかしあの狼煙からは訓練で学ぶような情報ある内容はなく、ただ煙を上げているだけだ。

 それでも警戒の意識が芽生えざるを得ないのは、赤色の使用は原則として『敵』に関するものとされているからだ。


「どうしタ?」

「街の方角から赤い狼煙が上がっている」

「――我を捨てて行ケ。こちらも急ぎ追ウ」

「かたじけないっ!」


 街中であのような狼煙を使う意味とは、外から戻るワシへの合図他ならぬ。

 掴んでいたゴアガイムを離し、最高速で街へと向かう。

 街の外の様子が目視できる距離まで接近すると、街の外に倒れている風族の姿が見えた。

 風族二人分の遺体、片方はフォーリグ。もう一人は頭部がないがあの翼の形状はカリートで間違いないだろう。

 否応なしに全身の感覚が研ぎ澄まされていく。

 何かの手違いであれば良いという願いが裏切られ、有事が起きていることを確信させられたことによる緊迫感が、そうさせている。


「すまぬ……あとで必ず……っ!」


 街の外には降りず、そのまま狼煙の上がっている方向へと向かう。

 場所は領主の館付近で間違いない。だが嫌でも街並みの異様さが視界に映り込んでくる。

 街中には風族の遺体が老いから若きまで、区別なくいくつも転がっている。

 生きている風族の姿が見えない。総数を考えれば風族の戦士達が避難誘導を行ったと考えられるのだが――その戦士達の死体も数多く転がっている。

 不思議な点としては、街の損壊はそこまで見られない。多少の荒れは感じるが、それらはおそらく風族の戦士の技による余波だろう。


「一体、何が、何がこの街を襲った……っ!?」


 狼煙が上がっていたのは領主の館、その正面門の先。

 燃え盛る炎の中から夥しい量の煙が立ち込めている。

 だがワシの視線が向いているのはその横。

 何人もの同胞達の遺体が積み重なり、その上に鎮座している男がいる。

 食糧庫から奪ったであろう干し肉を齧り、呆けた目で炎を眺めていた。

 ワシの接近に気付いてか、男は視線をこちらに向けた。

 そして小さく息を吐いたかと思うと、口に含んでいた干し肉を吐き出し、ワシの着地に合わせて同胞達の上から飛び降りた。


「何者だ、何の目的で――」

「それだ。俺より弱かろうと、戦士相手ならって名乗ってたんだが……もう名乗る時間の方が長いんだよ。こっちの連中よりも質が全然良いもんだからって、素直に答えるもんじゃねぇな」

「……貴様がやったのだな」

「ああ。皆殺しにするつもりだったんだが、流石に飛んで逃げる奴らを全員撃ち落とすのは無理があったわ。槍は一本しか持ってきてねぇし、一人でやろうとするもんじゃねぇな」


 この男が素直に話しているのであれば、この場にいるのはこの男のみ。

 協力者はおらず、単独での犯行ということになる。

 そしてこの男はイミュリエールと同じく人間である。


「人間がなにゆえ、このような真似をする」

「理由が必要なのか?」

「決まって――」

「そんなもん、いくらでも言えるだろ。魔族は放っておいたらこっちにきて暴れるんだ。先にこっちで間引いておいた方が合理的だ。それとも私怨的な方が良いか?俺は孤児でな。理由としちゃ貧しい村に生まれたわけなんだが、貧しい理由は過去の魔界の侵攻から復興が遅れたからだ。そのせいで苦しい思いをしたとかそんなことを言えば、お前らはこの殺戮を『仕方ない』で済ませてくれるのか?」

「……っ」

「殺しに理由が必要な時ってのはな、秩序が乱れねぇように同類に示しをつける必要がある時だ。お前らは獣を狩る時に、獣に獣を殺す理由を語るのか?」


 なるほど、理由ならばいくらでも取り繕える。

 取り繕う必要があるのは、その先がある相手のみ。

 ならばこの殺戮に理由は必要ない。

 その主張は把握した。つまるところ――


「御託はいらないということか。ならば貴様の名もここに来た目的も問うまい」

「おう、話す甲斐があるなら話してやるよ」

「好きにするが良い。ただし……こちらも好きにする。『天空よ、我が爪の一端と成れ』」


 風族の戦士達をここまで殺しつくした相手、戦えばその規模は相当なものとなるだろう。

 同朋の亡骸をワシの風で傷つけるわけにはいかない。

 竜巻を生み出し、男の体を街の外の上空へと飛ばす。

 人間であればその重量はたかが知れている。どれほどの膂力を持とうとも、足を地に縫い付けていようと、その周囲ごと持ち上げれば飛ばすことなど容易。

 一呼吸の間に男の体は雲を突き抜ける高さまで浮き上がった。


「ハハッ、一気に雲の上かよ!このまま叩きつけようってか?」

「そのような温い真似なぞしない。ここは我が暴風が織りなす『風縛牢』。貴様の姿がなくなるまで、風の裁きを受けよ!」


 この『風縛牢』はワシの特異性『天空よ、我が爪の一端と成れ』により生み出されたる前後左右上下、全ての方向を囲む暴風の檻。

 落下すれば跳ね上げられ、上昇すれば叩き落される。どこに逃げようとも初期に捉えた位置へとその身を削りながら強制的に滞空させる束縛の奥義。

 魔界に単身で来るような男、その強さを侮ることはしない。

 イミュリエールと対峙し、殺し合うくらいのつもりで攻めきる。


「こういうのは、一気に――」

「視えぬ壁だからと侮るなよ」


 男は空間に魔力を固定させ、こちらの方へと凄まじい速度で跳躍を行う。

 その勢いで『風縛牢』を貫くつもりだったのだろう。

 しかし幾重にも重なる風の層が男の体を抑え込み、その勢いを殺し弾き飛ばす。

 この奥義は彼女との、イミュリエールとの鍛錬を経て編み出されたもの。

『時渡り』ですら容易には抜け出せぬのに、只の跳躍で抜ける道理なし。


「っと……壁……と言うより糸束だな。いやらしく纏わりついてきやがる。ま、この程度の風じゃこっちも痛くも痒くもないんだが。このまま魔力切れまで空の上でお喋りでもするか?」


 並の者なら今の弾き飛ばしだけでも全身の肉が抉れ、跡形も残らない程度の損害を与えることはできただろう。

 だがこの状況に驚くことはない。

 イミュリエールにも天性の柔軟性があったように、この男にも相応の頑強さはあるというだけのこと。

 遠隔で飛ばす風の刃程度ではかすり傷一つ与えられないのだろう。


「風の本分は切り刻むことではない。運ぶことである」


 懐から袋を取り出す。

 中には薄いカミソリの刃ほどに加工された鉱石がいくつも入っている。

 これはゴアガイムが創り出したる特異な鉱石。

 その硬度は魔界でも屈指であるが、最大の特徴は魔力に触れているとその魔力を一定量取り込む性質がある。

 そしてその魔力は鉱石の魔力強化に自然と流用される。

 つまるところこの鉱石の刃を『風縛牢』の中へと放り込めば、風の魔力を吸いこみ達人レベルの魔力強化を施した状態へと変貌する。

 そしてその刃は風によって運ばれ、『風縛牢』の内部を縦横無尽に駆け巡る。


「――ん」


 これから起こることを察した男が両腕を交差して顔を守る。

 鮮血が空に舞う。風で飛ばされ磨かれた刃が男の全身を切り刻む。

 極薄の鋭き刃、肉体の硬度は意味をなさない。

 相手の肉も骨も容易く貫くはずの刃……なのに、奴の肉体は原型を留めている。

 血塗れになった奴の腕の奥から、煌めく刃が見える。

 皮膚を刻まれるのは諦め、魔力強化された肉の圧力で刃を挟み込んで止めているのか。

 続く刃は肉に挟まれている刃によってそれ以上奥を切り裂けていない。

 腕だけではない、足や背中、風に吹かれる部位その全てで同じ芸当を行っている。


「器用な真似を。だが、その守りいつまで保てるか?」

「思ったよりかは浅いし、我慢比べしてやっても良いんだがな」

「強がりを……っ!?」


 男の体からポロポロと刃が零れていく。

 肉の圧力だけで止めていたのであれば、緩めれば零れるのは当然。

 だがそれよりも異様なのは、刃が突き刺さったはずの全身から新たな血が零れていないということ。

 強引な止血ではなく、出血が完全に止まっている。

 これがワシ等魔族ならば再生能力を褒めるだけの話、しかし奴は人間。

 魔法の行使もなしに傷を治癒させるのは明らかに異質。

 イミュリエールやアークァスとてそんな技は持っていない。


「驚くことでもないだろ。肉が動かせるなら皮膚だって動かせる。なら斬れる前の形にしてやればいい。ただ切るだけの攻撃なんざ、それで治せる」

「貴様……本当に人間か?」

「血を見なかったのか?血も涙もある人間だろ。つーか冷静に考えると便利だな、これ。軍規模でもあっという間に壊滅しかねねぇか」


 ほぼ無傷でありながらどの口がほざくのか。

 だが確かに血は流れた。人間は血の再生を行なえない、傷を塞げるとて血を失い続ければ容易く息絶える生物。

 奥底まで届かずとも、全身から出血を繰り返せばやがては死に至る。

 風は巡り、次の刃の波が既に男の眼前へと迫っている。


「ま、もう見切れたけどな」

「――っ!?」


 奴の周囲に無数の刃が現れる。

 それは風の加速を失い、滞空していることを意味する。


「驚くこたねーだろ。やってることは同じなんだ」

「……身にまとう魔力を広げ、その圧で刃を掴んだのか」


 奴が纏っていた魔力、それが広がっているのが見える。

 体内で肉を使って刃を止めていた芸当を、体外で魔力を使って再現。

 ガウルグラートの剣に纏う魔力を掴み、剣に張り付いて見せたアークァスにも匹敵する魔力操作技術。

 一度はその身で受け、刃の速度や重量、挟み込むのに必要な力を分析していたということか。

 あの姉弟にも負けず劣らずの観察眼と判断力はあると考えるべきだろう。

 それにあの愉快そうな顔……自らの体を確かめるかのように傷のあった場所を眺めている。


「道具に頼ったとは言え、俺に傷をつけた奴なんざ片手で数える程度だ。誇って良いぜ」

「これで終わりだと思うな……っ!」


 刃は奴の身の回りの魔力で止められる。しかしそれは極小の刃を掴むための力しか持ち得ていない。

 その程度ならば魔法による攻撃で貫くことは容易、刃が解き放たれれば再び『風縛牢』で再加速からの攻撃を再開できる。

『天空よ、我が爪の一端と成れ』により新たな風の槍を生み出し、『風縛牢』内部へと放っていく。


「近づく気はなしか。自信がねぇのか、よっぽどな相手と戦い慣れしているのか……後者か。小手先で遊ぶのも嫌いじゃねーんだが、少し段階を上げさせてもらうか」


 男が構えの姿勢を取る。

 それはワシ等が川を泳ぐ魚を目掛け、槍を投擲する時と似た仕草。

 こちらに向かって投げるのならまだしも、大地に狙いをつける意味――


「一点突破で『風縛牢』を破るつもりか。確かに貴様の膂力による投擲を以てすれば細い槍ならば突き抜けることはできるだろう。だがこの牢は穴が開いたとて即座に――」

「一点突破だ?違えよ、全面突破だ」

「――っ!?」


 男が槍を投擲するその刹那、男の槍に羽根が生えたのが見えた。

 それは魔力で編まれた四枚の羽根。

 槍には回転が加えられており、槍の回転に合わせ羽根が螺旋を描く。

 それは風に対する暴力だった。

 男の放った槍の羽根の回転に、暴風で編まれたはずの『風縛牢』が引き千切られた。

 下側だけでなく、そこに連なる前後左右、はては上側までの風が巻き込まれ破壊されていく。

 羽根を以って風と共に生きる風族にとってその光景はあまりにも醜きものだった。

 破られた『風縛牢』と風の槍の名残がこちらに届いてくる。

 その風の音はあまりにも悲痛なものだった。

 男はそのまま大地へと降り立ち、その感触を確かめるかのように数度地面を踏みしめる。


「よっと。やっぱ地に足はつけなきゃな。とと、回収回収っと」


 男の腕から伸びるのは魔力の紐、投擲する際に槍に付随させていたのだろう。

 その紐が続く先は槍がめり込んだ大地の奥。

 男が紐を自らの腕に巻き付けながら引っ張っていくと、その奥から土で汚れた槍が姿を現す。

 憤りはあるが焦りはない。

 対イミュリエールを想定した技が破られたとて、それはまだ想定が甘かったというだけ。


「……嵐よ!」


 周囲の空に風を集め、嵐を形成していく。

 ワシの特異性『天空よ、我が爪の一端と成れ』は風を形として掌握し操作する。

 だがあの男相手では生半可な風では特異性を以ってしても有効な攻撃に成りえない。

 ゆえにワシの眼に映る全ての風を集め、嵐として戦場に配備する。


「結構多彩じゃねーの。……ひょっとしてお前さん、魔界の領主だったりするのか?」

「――如何にも。風族領主ルーダフィン=テロサンペである」

「なんだよ、なんだよ、名乗るのめんどくなった途端にきやがって……ま、獲物に会えたのは素直に喜ぶべきなんだろうがなぁ……」

「獲物……だと?」

「おう、魔界の領主の首二つ。今回俺が魔界に来た目的だ。それなりに楽しませてもらったからな、ちゃんと名乗り返してやるか。旧神の使者、フォリオム=スークライン。恨みはねぇが、お前の首が必要なんだ」


 ヨドインがグランセルの森で出会ったという光の加護を受けた人間。

 あらゆる面で歴代最高峰とも言える成長を果たした魔界に対し、旧神ウイラスが自らの加護を与えたとされる抑止力。

 その内在する光属性の魔力によもやとは思っていたが……。


「やはりそうか。貴様がグランセルで目撃されたという旧神ウイラスの加護を受けた槍の潜伏者か」

「……ん?待て、グランセルで目撃された?それに槍の潜伏者?一体なんの――」

「領主の首が目的ならバ、我が介入しても文句はあるまいナ」


 フォリオムの立っている大地が左右から隆起し、奴の体を飲み込む

 この攻撃は考えるまでもない。フォリオムと戦闘に入ってからそれなりの時間が経過しているのだ、とっくに追いついていたのだろう。


「ゴアガイムか」

「もう暫く話させた方が良かったカ?」

「不要だ。あの程度で死ぬはずもなく、勝手に喋る」


 大地が粉々に吹き飛ばされ、中から無傷のフォリオムの姿が現れる。

 ワシの特異性の風を受けても平気なのだ、挨拶代わりの攻撃ではビクともしないのだろう。


「文句はねぇよ?試合じゃなく殺し合いなんだ。不意打ち共闘なんでも歓迎、悪いのは死んだ奴だけだ。つかその言い分じゃ、お前も領主なのか?」

「地族が領主、ゴアガイム=スアオンザ……ダ」

「おー!やっぱ行動って大事なんだな」

「……?」

「いやな、人間界に戦いたい相手は何人かいるんだが……思ってるだけじゃ何も進展なくてな。今回は率先して行動してみたんだが、まさかこうもポンポンと魔界の領主と会えるとは」

「計画性の欠片もないナ」

「一ヵ月くらい殺しまわる予定だったんだが、土産を探す暇くらいはできそうだ」

「もう目標を達成したつもりカ?」


 ゴアガイムの『空際よ、我が手の侵食を受けよ』が解放され、フォリオムの足場の大地が変化しその体を拘束していく。


「こんなもん――っ!?」

「『砂纏枷』」


 フォリオムの体を拘束していた大地が砕け、その中から黒い砂が現れる。

 あれは魔界の地下深くに存在する希少な金属。

 その金属の硬度はその辺に転がる石よりも脆いが、魔力を取り込ませると重くなる性質を持つ。

 その砂をゴアガイムが直接操作しており、フォリオムの体に纏わりつき動きを阻害していく。

 魔力を使い弾き飛ばそうにも柔軟に変化し奴の体から離れることはない。

 砕くことも斬ることもできない拘束。イミュリエールとの戦いを経て得たゴアガイムの奥義の一つだ。

 いくら膂力があろうとも、可動範囲に纏わりつく高重量の砂の塊があれば満足な力は発揮できまい。


「領主ともあろう連中が、束縛系の技ばっかりかよ。二人して獰猛な獣でも飼ってんのか?」

「否定はしきれないナ。ルーダフィン、合わせろ」

「ウム!」


 ゴアガイムが周辺の大地を圧縮、陥没が起こる。

 フォリオムの足場は瞬く間に光沢を帯び、頑強な鋼鉄のように硬質化する。

 頑強さには元よりの強度もあるが、戦士である以上は衝撃を逃がす技術が含まれる。

 この男はアークァスのような異様と呼べるほどの技術がある。

 つまるところ生半可な攻撃ではその衝撃の大半を吸収され、外に逃がされる可能性が高い。

 通常の大地はそういった衝撃を逃がすにはうってつけの場所。

 しかしゴアガイムが大地を硬質化させたことで衝撃は伝わり難くなり、ダメージは奴の体内により深く届くことになる。


「大地ヨ!」

「空よ!」


 更に円錐状に変化した宝石を空に無数に放ち、ワシの嵐の中で加速させていく。

 矢はゴアガイムが、弓はワシが担う。

 限界まで加速させた宝石の矢の全てを、地上に拘束されたフォリオムへと放つ。


「『嵐宝猛雨』!」

「――連携までバッチリかよ。対等な奴がいて羨ましいこった。ただまぁ――」


 フォリオムの声を飲み込み、響き続けるのは甲高い炸裂音。

 限界まで硬質化した地面と、降り注ぐ宝石の矢が衝突し砕ける音。

 その間に人間が挟まろうものなら、跡形もなく磨り潰されることになる。

 全ての宝石の矢が降り注いだ後も、空には音が僅かに響いている。

 砕けた宝石によって生じた煙が空間をチカチカと光らせ、フォリオムの姿を黙視することができない。


「ゴアガイム、どうだ!?」

「……奴は一歩として動いていなイ……放たれた矢のほぼ全てが命中していル……」

「ならば――」

「ならばじゃねーよ。鼓膜破れるかと思ったぜ」


 煙が晴れ、そこには依然『砂纏枷』に束縛されたままのフォリオムの姿がある。

 だがどういうことか。

 奴は束縛されているのにも拘らず、平然と槍を携えて自然体のままでいる。


「馬鹿ナ……。我が『砂纏枷』を纏った状態デ……『嵐宝猛雨』を全て叩き落したトイウノカ……!?」

「おう、馬鹿なのも含めてその通りだ。魔力強化をすりゃこの程度の重さ、服と変わらねぇよ」

「魔力強化……だと?よもや貴様、今まで魔力強化なしで戦っていたのか!?」

「槍にはちょこちょこ施してたさ。安物だからな、何もしねぇと即折れちまうからな」

「魔力強化をしたからト、人間の体で自由に動けるはずガ……」


 それほどの魔力強化、もはや領主クラスが独自に付与できる特異性にも匹敵する。

 過去にイミュリエールと会話した時の記憶が蘇る。

 彼女の『時渡り』は魔力強化を極めた神技、されどそれは刹那にて使われるもの。

 ワシは問うた。ならば継続的に使用される魔力強化の技はあるのかと。

 イミュリエールはワザとらしく声を潜め、魔族に教えてはならないけれどそれは確かにあると教えてくれた。


「俺の身体に施す魔力強化はちょっとばかし癖が強くてな。使っちまうとマジで手加減が下手になっちまうんだ。セイフの奴が言ってたな。なんかの技とほぼ同じって聞いてたんだが……確かトキノガレ?」




普通に使う魔力強化が『時遁れ』になっちゃうんじゃあ雑魚相手には封印せざるを得ないよね。

旧神の使者全員がこんなんじゃないとは思うけれど、ケッコナウはこんなに含まれると思う。




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― 新着の感想 ―
え?カークァスの変装じゃなかったのか? ニンゲンこわいわ!
これカークァスさんの出番いらなかったのでは?
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