だからいつも最後はあなたなの
「おはよう」
やっぱり最初はお母さんにご挨拶。
美味しい朝ごはんと美味しいお弁当をありがとう。
そして優しい笑顔をありがとう。
「おはよう」
次はお父さんにご挨拶。
お父さんには仕方なくなんて言っているけど本当はお母さんの次は絶対、お父さんって決まってるの。
「おはよう」
家で飼っている、ちょっとお腹にお肉がついた可愛い猫ちゃんにご挨拶。
喉を撫でるとニャーって返してくれるの。
「おはようございます」
近所のおばあちゃんがシワシワのお顔で笑顔を作って挨拶してくれるからご挨拶。
そしておばあちゃんに今日も元気だねって言うの。
「おはよう」
教室に入って友達にご挨拶。
その後は昨日のドラマの話で盛り上がるの。
「おはようございます」
クラスメイトみんなで先生にご挨拶。
クラスメイトみんなじゃなくて一人だけ、いつも朝はいないからその一人を抜いたクラスメイトみんなでご挨拶。
「おはよう」
いつも朝の挨拶の時にいない一人が来たからご挨拶。
その人は私の好きな人。
いつも後ろの髪がピンと跳ねて眠そうにアクビをしている彼。
「また髪が跳ねてるよ」
「また? よろしく」
「仕方ないなぁ」
私はそう言いながら笑顔で彼の跳ねた髪を直すの。
これが私のいつもの朝の風景だよ。
「おはよう」
その言葉の挨拶は彼に言うのが最後。
◇
「さようなら」
クラスメイトみんなで先生にご挨拶。
帰りは彼もいるからみんなで挨拶ができるよ。
「バイバイ」
友達に手を振りながらご挨拶。
また明日ねって言って笑顔でバイバイするの。
「またね」
いつもの通る可愛いお家の中に、毛がもふもふの綺麗な猫ちゃんにご挨拶。
私が手を振って言うと猫ちゃんは両手で顔を洗い出すんだ。
私に手を振ってるのかな?
そしていつもの公園の入り口の前に彼がいた。
「ごめんね待った?」
「ん? 待ちきれなかった」
「えっ」
「嘘」
彼は私をからかって笑ったの。
これもいつものことよ。
彼と公園の前で待ち合わせをしてここから一緒に帰るの。
何故かって?
それは彼の優しさなの。
一緒に帰っている所を誰かに目撃されて勘違いされたらいけないからって言ってたよ。
私は勘違いされてもいいんだけどなぁ。
それから彼と一緒に歩くの。
まだ離れたくないから少しだけゆっくり歩く私に彼はちゃんと合わせてくれる。
そんな優しい彼は私の好きな人だけど恋人じゃないの。
彼の手に触れそうで触れない私の手は冬の風で冷たくなってる。
手が冷たいから息をかけてあげると少しだけ温まるけれどやっぱり冷たいまま。
「寒いなら、ほらっ」
彼はそう言って私の手を彼のポケットの中に入れたの。
温かい彼のポケットの中と私の手を握る温かい彼の手。
触れそうで触れない手はたった今、初めて触れました。
「また明日ね。さようなら」
朝の挨拶をしたおばあちゃんに今日もいい日だったかな? また明日会おうねって言われたからご挨拶。
おばあちゃんは私と彼を見てニコニコしていたよ。
そんなおばあちゃんが可愛かったよ。
それから彼とのお別れの場所が来ちゃった。
十字路の真っ直ぐが私のお家への道。
左が彼のお家への道。
「それじゃあバイバイ」
私はそう言って彼のポケットから手を出そうとしたら彼が私の手をギュッと握って離さない。
「どうしたの?」
私は彼の顔を見ながら言った。
すると彼は顔を少し赤くしていたよ。
「このまま君の家まで送っていい?」
「うん」
そしていつもはここでお別れの彼と私の家まで歩く。
彼はポケットの中で私の手を握ったまま。
「ねえ、これからもこうやって手を繋いでもいい?」
彼はうつむいたまま私に言った。
「いいよ」
私がそう答えると彼は顔を上げて喜んでいた。
「ねえ、俺の恋人になってくれる?」
「いいよ。その変わりこれからは学校から一緒に帰ろうね」
「いいけど迷惑じゃない?」
「その逆だよ。とっても嬉しいよ」
「良かった」
彼は優しい笑顔を見せてくれた。
「それじゃあまた明日」
「また明日ね」
彼が言って私が今日、最後のご挨拶。
「君が好きだよ」
彼に最後のご挨拶の後に言われちゃった。
これだと最後のご挨拶はまだだね。
「私もあなたが大好きよ」
これが本当に最後のご挨拶。
私は笑顔で彼に言うの。
彼は嬉しそうに笑い返してくれた。
「また明日ね。大好きよ」
その言葉の挨拶は彼に言うのが最後。
◇◇
彼は朝のご挨拶も夕方のご挨拶も最後の相手。
どんどん積み重なっていくご挨拶は彼が最後で一番上に残るの。
毎日、毎日、彼が最後で一番上になる。
これからもずっと私の中で彼が一番上に残っていく。
だからいつも最後はあなたなの。
読んで頂きありがとうございます。