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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第一章 白のエリュシオン
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8話:火竜討伐3

 前回のフレイリッグのレイドから二週間後。各々鍛えてきてリベンジとなる。

 セーレが、さすがにレベルが上がりにくくなってきたとぼやいていたが、それでも1レベルあがって97になっていた。俺も頑張ったがすでに十分上がりにくく1レベル上げるのでやっとだった。装備はバルテルに借金を返して、少し強化をして前回よりいくらかよくなった。


 フレイリッグの討伐メンバーも増えて150名越えとなった。最大人数にはまだ満たないが、装備の揃っているプレイヤーが多いので全体の水準は高いだろう。

 序盤は滞りなく進み、前回失敗した55%に差し掛かる。

 対策としては一か所に固まらずに、フォーメーションを決めてパーティー毎にばらけることで、被害を少なくすることになった。あとはもちろん個人の装備やスキルの強化だ。

「よーし、順調順調」

 前回と同じメンバーで、55を超えたところでも壊滅せずに進んでいる。何が来るかわかっているという心構えの差も大きいだろう。

「そろそろ50%だが、何が来るかな?」

 楽しそうにアキレウスが言う。

 50%で動きが変わるレイドは多く、フレイリッグもその例だったようで、フレイリッグは甲高い声を上げると上空へと飛び立っていく。

「む」

 地面に赤いマークが出現したので、ひとまずそこから移動するとそこに空から隕石のような火球が落ちてくる。赤いマークはあちこちにランダムにでき、直撃した人はほぼ即死していた。

「シューティングゲームだな。これは」

 もっとも、撃ち落されるのはこちらであるが。攻撃もできないので、皆うろうろと逃げ回る。

「あわわわ」

 リコリスの周りにマークが重なって慌てて逃げている。それでも、そこまで理不尽な動きは要求されないため、55%の行動よりは楽だった。

 しばらくするとフレイリッグがバサバサと羽を羽ばたかせて、再び地上へと降りてくる。


 ここからは、HPの残量に関係なく全体攻撃が飛んでくるようになったようで、立て直しのために止まることに意味がなくなる。

 30%になると、フレイリッグが消去不可の強化魔法を発動してフレイリッグの攻撃力が上がり、周囲には部下と赤いクリスタルが五つ出現する。

「ん、攻撃通りませんね。あの石かな」

『ウィズパーティーは、部下処理。他パーティーは持ち場付近の石の破壊』

 皆が統制の取れた動きで各自の役目を全うする。


「攻撃痛くなってきたね」

 そう言うアキレウスのHPを見ていると、確かに減りが早くなっている。俺にターゲットが来たら厳しいかもしれない。

 クリスタルを壊し終わると再びフレイリッグに攻撃が通るようになる。

 しかし、フレイリッグの攻撃力が上がっているため、通常の攻撃でも倒れるプレイヤーが増え、15%付近になるとフレイリッグが暴れ始めて行動の予想がつかなくなる。


「MPちょいきつ」

 ヒーラーのエリシアが発言する。

 ディレイ毎に各自回復POTを使っているものの、MPはじりじり減っていく。とは言え、手を休めて回復に専念することもできない。

「他パーティーもきつそうだけど、ここまで来たらやるしかないよね」

「おうさ」

 フレイリッグの炎で焼けた足元は、まるで溶岩が流れているかのように赤く光り、空気中には火の粉が舞い散って、それが空に舞い上がって夕焼けのように空を赤く染めている。

 何度も何度も激しく炎が吹き荒れ、壊滅に追い込まれるパーティーも増えてきたが、まだ半数ほどは生き残っている。


「残り3%……!」

 フレイリッグの僅かになったHPを見ていると、高揚感でドキドキしてくる。残っているメンバーも、ここまで来たら倒したい。という気持ちは一緒だろう。それぞれが持てる力で懸命に戦っている。

 もう何度目かもわからない炎がフィールド全体を覆い、一人、また一人と倒れていく。

『いっけぇえええ!』

 ラスト1%。もうアタッカーのMPは空で、ヒーラーもあと数回ヒールを回したらMPが尽きてしまう。それくらいに全力を出し切ったところで、どう、と大きな音が響いて、振動とともにフレイリッグがついに倒れる。

 皆の、勝利の雄叫びがこだまする。


『お疲れ様でした! オークションは、この場で行います』

 パーティー毎に集合して、主催のアキレウスの周りに集まる。

集中していたから気づかなかったが、3時間くらいは戦っていたようで、どっと疲れが出てきて椅子にもたれかかって姿勢をだらけさせる。

『えー、ドロップはフレイリッグのマント、ミョルニル、イチイバル、ハデスアーマー、オブシディアンサークレット、金獅子のネックレス、オーロラリング。以上です。転売、代行不可。本人使用のみ』

 レベル95からの装備がずらりと並ぶ。目玉はなんといってもマントだろう。

「お金足りない場合は50Gまで貸せるから言ってね~」

 ギルドのチャンネルで、バルテルが発言する。

 なかなかの富豪発言である。1Gは1000M。普通の単位に置き換えれば10億。以前俺が借りた金額はバルテルにとっては些細な金額だったようだ。

 オークションは価格の安いものから進行していく。落札価格はオーロラリング10M、金獅子のネックレス28M、オブシディアンサークレット120M、ハデスアーマー、2.1G、ミョルニル7G、イチイバル16G。

 そして迎えたフレイリッグのマント。


『フレイリッグのマント、10Gから』

「10」

「20」

「30」

「35」

「50」

 わけのわからない単位で、値段が釣りあがっていく。

「バルさん、お金足りなかったら貸してください」

 どうやらオークションに参戦するらしいセーレが言う。

「はいよー。セーレくんがお金足りないの珍しいね」

「最近倉庫整理さぼっていたもので……」

 その間もオークションは進行して、現在100Gを余裕超えた。

「126」

「127」

 段々と下の桁が刻まれるようになっていくが、それでも一桁当たりの単位は馬鹿でかい。やがて……。

「130」

『130から~』

 セーレが言った130のあとは発言がない。

『いないかな。5、4、3、2、1、0。おめでとう』


「足りた?」

「はい」

「おっけー。おかげさまで分配が美味い」

「セーレごち~」

 その言葉で、分配金額がとんでもないことに気付く。強い人たちはこうして金を稼いで、さらに強くなっていくのか。と、しみじみ思う。


『いやー、お疲れ様でした。分配終わったところから帰ってオッケー。もう明日仕事行きたくないね』

 その言葉の後に、参加者たちの発言が続く。

「ほんと、ずっとゲームしてたい」

「俺もゲーム中に住みたいな~」

「あー。いいねぇ。いつゲームの世界に入れるようになるんだろう」

 そんな会話が続いていき、討伐後の時間経過でダンジョンが崩れて最寄りの街に強制送還される。


「おつかれさま~」

「おつっす」

「おつかれさま」

「おつかれさまです」

「おっつー」

「お疲れ様でした」

 パーティーが解散されて、会話がギルドに移る。

「わたし、お風呂入ってくる。またねー」

「わしも祝杯上げるので離席」

「わたくしは、寝る準備をば……おやすみなさいませ」


「セーレさん、マントつけたの見せてほしいっすー」

 装備大好きのモカがセーレにおねだりを始める。

「あ、俺も見たい」

「いいですよ」

「どこいけばいいっす?」

「個人の方の家、リステルにいます」

「はーい」

 テレポーターで街から街へと移動していく。


 セーレの家があるという場所は初心者エリアではあるが、今回のアップデートで近くに美味い高レベル狩場が実装されていたので、それ目的でいるのだろう。

 リステルは街というよりは村と言った雰囲気で、緑の丘陵がを背景に民家がポツポツと並んでいて牧歌的な雰囲気だ。ゆったりとした優しい音色の音楽が流れて、合間に鶏や羊の声が聞こえる。


「おじゃましまー……うわ、家具なしとかマジっすか」

 モカがセーレの部屋に入るなり失礼な感想を述べているが、入った部屋にはマジで何もない。デフォルトで設置されている木箱がぽつんと置かれているのみだ。

「家はアプデに合わせて移動しているので……。どうせ中継にしか使いませんし」

 絵に描いたような効率厨発言である。セーレはすでにフレイリッグ討伐用の装備からいつもの装備に着替えて、黒い軽鎧になっている。

「それで、マントマント―」

 モカのセリフで、ばっとセーレの衣装が変わって、赤いマントが翻る。背中には金色の竜の刺繍がされている。

「わー。カッコイイっす」

「その装備に合いますね。どんな効果がついてるんすか?」

「火属性耐性アップ、スキルディレイ短縮、スタン耐性アップ、灼熱地形ダメージ無効ですね」

「ディレイ短縮……つよ……」

 これがまだゲーム内に一つしかないであろうマントか。と、セーレの周りを移動して眺めていると、ピンポンと音がなって運営のアナウンスが入る。

「ん、なんだろう?」


『おめでとうございます。先ほど、フレイリッグが初討伐されました』


「おー、やっぱ初討伐だったんだ」

 モカが手を叩いて飛び跳ねる。

 

『これより、討伐後に最も多く望まれた願いを反映させていただきます』


 その場にいた皆で首を傾げる。

「何か新しく実装されるんすかね……?」

「追加のクエストでしょうか?」

 なんだろうなんだろうと言っていると、周囲が眩く光り輝き、視界が白に染まる。


 眩さに目を閉じて、光が去った後に再び目を開く。

「え」

 目の前にいたモカがポカンという顔をして部屋の中に視線を彷徨わせている。セーレもきょとんとしてから自らの手を見つめて握ったり開いたりしている。

 俺も頬に手を当てる。


 おかしい。


 先ほどまで椅子に座ってゲームをしていたはずだが今は立っているし、俺はゲームと同じ服装で、左右の手にあったデバイスの感触はない。頬に触れればリアルと同じように触った感覚がある。

 二人の表情や動きもゲーム内のものとは違う。


「何これ、ゲームの中……っすか?」


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