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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第四章 光明
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20話:水晶の洞窟

 一夜明けて、アダマンティアの棲家である水晶の洞窟に向かう。道中はほぼ荒野で、低木や雑草が所々生えている殺風景な風景だ。

 洞窟の入口まできて、周囲の様子を伺う。

「NPCいないねー? 中かなぁ?」

 マリンが洞窟の入口を覗き込みながら言う。俺も周囲を見渡してみるが、せいぜい低木がある程度で、NPCや意味ありげなものは見当たらない。

「じゃあ中へ……」

 言いかけた時に、周囲の茂みからガサッという音がして、セーレが音のした方向に行こうとするのを遮る。

「俺が見てくるね」

 念のため盾を構えつつ慎重に茂みを覗き込むと、そこにいたのはウサギとリスを混ぜたような生き物だった。耳の長いリスと言えばわかりやすそうだ。白いふわふわした体毛で、額には赤い宝石がついている。

「うーん? ウサギかリスみたいなのがいる」

 俺がそう言うと、ウサギかリスのような生き物が口を開く。

「失敬な。私はカーバンクルです」

 甲高い声でその生き物は俺に文句を言う。カーバンクルの声に皆がぞろぞろと集まってくる。

「わっ、可愛い」

 シオンがしゃがんでカーバンクルを覗き込む。

「あなたは見どころがありますね」

「カーバンクルさんは、ここで何をしているの?」

 シオンが聞くと、カーバンクルは耳をしゅんと下げる。

「主の洞窟に盗人が入ったのですが、私にはどうすることもできず……。そうだ、旅の方々。助けてください。主の助けになれるなんて幸せなことですよ」

 そこでクエストを受けるかどうかのウィンドウが出てくる。

「洞窟の主ってことは……、アダマンティアかな?」

「様をつけなさい、この人間」

 俺の言葉に、またカーバンクルが文句を言う。若干面倒なNPCだ。


「では、旅の人。準備ができたら洞窟の中へ案内しますよ」

 カーバンクルが言うので皆で頷くと、視界がブラックアウトして洞窟の中の大きなフロアの中央に移動させられる。洞窟の壁には光り輝く鉱石があって、それが周囲を照らしている。

「道いっぱいあるっすねぇ。どこだろ」

 モカの言った通り通路らしきものが複数見える。ぐるりと動いて確認してみると通路の数は五つ。

 マップを呼び出してみたが、表示できないエリアのようで何もない。

「順番に行ってみるしかないかな」

 と、足を踏み出すと、どこかの通路から耳障りな声が聞こえてくる。

「ホウセキ、タカラ、ウバエ」

 掠れ気味でやや高めの声を発しているのは、ゴブリンだ。緑色の小柄な人型のモンスターが十体。様々な武器を手に通路からこちらに向けて走ってくる。

「盗人というより強盗だな」

 ゴブリンは雑魚のイメージはあるが、ひとまず警戒して盾を構える。

 先頭のゴブリンの棍棒を盾で受け止めると、拍子抜けするほど軽い。

「ジャッジメント!」

 攻撃スキルを使うと、ゴブリンは汚い悲鳴を上げてぱたりと倒れる。

「よ、よわ……」

 思わず呟く。

 俺の様子を見ていたセーレが、ゴブリンの群れの中心に行って範囲スキルを使うとゴブリンは全滅した。

「初心者向けのクエだったのかな……」

「エリア的にはもう少し強くてもいいとは思いますけど……。強いモンスターも出てくるのでしょうか?」

 セーレが足元のゴブリンの死体を眺めながら首を傾げている。

 通路の方に目を向けると、また、どこかの通路から耳障りな声が聞こえてきて、ゴブリンの集団が出てくる。先ほどのゴブリンの倍くらいの数だ。

「アローレイン!」

 マリンがスキルを使うとスキルの範囲内のゴブリンが全て倒れて、スキルの範囲から漏れたゴブリンはセーレが大剣を一薙ぎすると倒れる。

「うーん?」

 やはり強くはない。そして、また声が聞こえてくる。今度は二方向からゴブリンが走ってきて、アタッカー陣に一瞬で殲滅される。

「まさか、ずっとゴブリンだけってことないよね?」

 マリンの発言の後に、またゴブリンが走ってくる。今度は三方向から。そして、やはり一瞬で殲滅が終わって、次は四方向、その次は全ての通路からゴブリンが群がってくる。

「いやいやいや。まじでゴブリンだけなの?」

 マリンがスキルを使いながら文句を言う。

 倒し終わるとまたゴブリンが、次は倒している間に追加でゴブリンが、やがて途切れることなく通路からゴブリンがひたすら出てくる。

「数多すぎでしょー!」

 フロアが緑色の生き物だらけになる。


 倒しても倒してもゴブリンが止まらない。

「耐久クエストかな……」

 セーレが懐中時計の時間を確認しながら、大剣を振るっている。

「うぇぇ。気持ち悪くなってきたっす……」

 モカが呻く。見た目の話もあるが、体臭なのか血の臭いなのかゴブリンがとにかく臭い。そして、耳障りな声が全方向から聞こえてきて気が滅入るし、死んだときの様子も白目をむいたり涎を垂らしたり、血反吐を吐いたりしていて見たくもない。

 適当に剣を振っているだけでゴブリンは倒れていくものの精神的に参ってくる。

「十五分経過」

 セーレの声にも張りがない。

「これ……本当に倒してるだけでいいのかな……」

 不安になってくる。

「通路の中見てきますね」

 セーレが突進攻撃でゴブリンを吹き飛ばしながら移動していく。

 単独行動で何かあったら……。とは思うものの、止める気力もない。

 しばらくすると、ゴブリンを吹き飛ばしながらセーレが戻ってくる。

「何かあった?」

「一応全ての通路を見てきましたが、ゴブリンが出現してくる魔法陣があるだけでした……。魔法陣は壊せる気配もありませんでした」

「そっか……」

 それから黙々とゴブリンを倒し続ける。

 鼻は段々と麻痺してきたようにも思うが、気持ち悪さは抜けない。

「まもなく三十分」

 きりのいい数字だ。何かあるかもしれない。と、期待したがゴブリンが減る気配はない。

「一時間は嫌っすよ……」

 杖でポカポカとゴブリンを殴りながらモカが言う。モカの杖でさえゴブリンは一撃だ。

「このクエ作りが雑すぎでしょー!? もーやだー」

 マリンが矢を放たずに弓そのものでゴブリンを殴り倒す。

 皆の士気は低い。セーレですら、やる気がなさそうに大剣を低い位置で雑に振るっている。

 なぜこのレベルになって、雑魚ゴブリンと戦わなければならないのか。経験値は確認していないが、この弱さなら何も期待できないだろう。

 セーレが五分単位で経過時間を知らせていき、やがて……。

「もうすぐ一時間になります」

 ゴブリンは相変わらずうじゃうじゃいる。

 セーレが発言してから、一分か二分か経ってもまだゴブリンはいた。

「時間でないなら討伐数でしょうか……、もしくはどこかに親でも混じっているのかな」

「わたくし、ソーサラーにCCしますね」

 クッキーが攻撃を中断して、クラスチェンジをする。ソーサラーは範囲効率がいいから、その判断だろう。

「わたしもソサに……。あー、だめだ。セーレ。ソサの装備持ってない?」

「あるよ」

「かしてー」

 マリンもセーレから装備を受け取って、ソーサラーにクラスチェンジをする。

 二人がソーサラーにクラスチェンジしたことで、殲滅速度が上がる。セーレとシオンは他と違うゴブリンがいないか探しに、武器を振り回しながらゴブリンの群れの中に移動していった。

 ひたすらゴブリンを倒していると、セーレとシオンが戻ってくる。

「それらしきものはいませんでした」

「こっちもー。そもそも顔が判別つかないし、あまり差異なかったらわからないかな……」

「倒しまくるしかないか……」

 さらにゴブリンを倒し続けること凡そ。


「まもなく二時間……です……」


「もう、外出たいんですけど……」

 しかし、脱出する方法もわからない。一つあるとすれば死ぬことだが、このクソ雑魚ゴブリンの攻撃で死ぬには時間がかかりすぎるし、自然回復が上回って死なない可能性も大いにある。

 皆、目が死んだ魚の目のようになっている。

「フレイリッグに焼かれるほうがマシです……」

 セーレが呟く。

「ほんとにな」

 あれなら一瞬で終わらせてくれる。

「全く、ハーフタイムくらいくれよ……」

 ぼやきながらゴブリンの群れを見渡すと、緑の塊が少し減ったように見える。

 まぁ、疲れてるから気のせいかもしれないが……。

「ゴブリン減った?」

 俺の声に、皆が顔を上げる。

「あ。壁が少し見えるようになってるっす」

「うおー! ほんとだ! ブリザード!」

 気づいたあとは、ゴブリンの数がみるみる減っていき、やがて動くゴブリンはいなくなった。

 ゴブリンの死体が全て消えると、小さな光が部屋の中央に現れ、カーバンクルが姿を現す。

「ふぅ、平和になりました。主も喜ぶでしょう」

「このクエ、バグってると思うんだけど!」

 マリンが文句を言うが、カーバンクルはマリンを無視して話を続ける。

「それでは、主の元にご案内いたしましょう」


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