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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第四章 光明
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4話:火竜の住まう山4

 ぼんやりと何もせずに天井の模様を眺めていると、二人が帰ってくる。

「戻りました」

「ただいまぁ~」

「おかえり」

 あまりうだうだした姿を見せるのもどうかと思って起き上がる。

「レオさま、温泉饅頭買ってきました! いかがですか?」

「えーと……うん、もらおうかな」

 メロンが座敷机の上に饅頭と緑茶を置くのでいただく。

 俺が食べ始めたのを見るとメロンも食べ始めて、セーレはその様子を眺めている。

「セレさま、お饅頭苦手でした?」

「……それ、こしあんですか?」

「そうですけど……?」

「では、いただきます」

「つ、つぶあんお嫌いなんですか~?」

「食感があまり好きではないです」

「つぶあんも美味しいのに……もったいない……。あっ、そういえばアキさま和菓子好きだからお土産にもう一箱買ってこう。いや、ギルドの皆の分も買おうかな……」

 二人が会話しているところに、たまに相槌をうちながら聞いていると少しは気持ちが落ち着いてくる。


 夕方になると、メロンが窓際をそわそわと歩いている。

「露天風呂入りたいなら入ったらどうですか?」

「ぎくっ」

「気になるなら外見張ってますよ」

 セーレの言葉にメロンがうーんと唸る。

「そこはさほど気にしていないのですけど、お外でお風呂ってなんだか恥ずかしくて……。でもでも、せっかく来たので入りたい気持ちもありつつ……うーん。あ、そうだ」

 メロンが服を水着にチェンジして、髪をアップにする。

「よし、セレさま」

「はい。見張りですね」

「一緒にはいりましょー」

「え……いや、オレ……今は男なので一緒に入るのは適さないと思いますよ?」

「水着なので! お気遣い無用です!」

 ぐいぐいくるメロンにセーレは困惑している。

「一緒に入ってあげたら? せっかくだし」

「……まぁ、わかりました……」

「わーい。レオさまもご一緒にどうですか?」

 なぜ俺まで誘われたのか。

 信頼されているのはありがたいことだが、もうちょっと警戒心を持った方がよいのではと思ってしまう。まぁ、セーレがいるから安心しきっているのかもしれないが。

 しばらく悩んだものの、水着ならいいかということで二人と一緒に露店風呂入る。


 露天風呂は三人入ってもある程度スペースは保てる程度の広さだ。

「はぁ~、お空の下でお風呂入るのって不思議な感じですねぇ」

 夕焼けに染まる空を見ながらメロンが言う。

「まぁ……思ったよりは悪くないですね」

 水着に着替えたセーレが温泉に浸かりながら空を見上げる。

 メロンの方に視線をやりづらいので、俺も自然と景色を眺めることになる。

 赤く染まった空は、色合いは違うもののフレイリッグの攻撃を思い起こさせる。

 同じことを考えていたのか、メロンが呟く。

「あれ、倒すとしたら……どうするのがよいのでしょうか……」

「正攻法では無理でしょうね」

「正攻法……」

 セーレの言葉をメロンが反芻する。

「うーん、全プレイヤーを集めて突撃しちゃうとか……?」

「一網打尽にされるだけですね」

「ですよねぇ~」

「あの攻撃を受けて、まだ倒す方法考えようとか感心するよ」

 呆れる思いもありつつ、感心もする。

「オレはまだここはゲームだと思っていますので、ゲームなら攻略法もあると思います」

「前向きだなぁ……。しかし攻略法か……」

「正攻法じゃないなら、邪道になるのでしょうか?」

 メロンの発言に、少し考えると脳裏に浮かぶものがある。

「ガトリングでもぶちこむとか……」

「……なるほど。一考の余地はありますね」

「え。そう?」

「ガトリングでなくとも、他の兵器であったり……、防御に使えるものであったり、行動を阻害出来るものが用意できればあるいは……」

 適当に口をついて出た言葉であったが、そうか。普通に戦う必要もないのか。と気づく。

「ふふふっ、楽しくなってきましたね!」

 メロンが楽しそうに言う。

「二人とも、死んでもめげないね」

「むしろ、死を体験できたので、もう何も恐れることはありません」

「わ、私はちょっと怖いけど~。でも倒したいので!」

「そっかー……。うん、俺も……もう一回考えてみようかな」

 二人の言葉にだんだんと気持ちが前向きになっていく。



 ベレリヤで一泊してからカーリスに戻ってギルドハウスの扉を開ける。メロンもお土産を渡したいからと、ついでに同行している。

「ただいまー」

 中に入ると、マリンが鬼の形相で仁王立ちをしていて、なぜか後ろに苦笑いを浮かべたアキレウスが立っている。ギルドの他の皆も部屋にいたが、マリンに触れるのはやめておこうという雰囲気でチラチラとこちらを見ているだけだ。

「えーっと……?」

「おかえり。三人でどこに行ってたの?」

 マリンは不機嫌だ。

「狩りと……温泉に……」

「フレイリッグのとこ行ったでしょ?」

「え」

 それは伝えていないはずだが、もしかしてメロンがアキレウスに言ったのだろうか? と、ちらりとメロンを見る。

「おっ、その様子だと行ったな?」

 視線の意味を察してマリンが言う。

「……はい」

 頷くと、マリンはため息をつく。

「まぁ、無事帰ってきたのならいいけど、昨日西の山の上空が真っ赤に染まったって聞いて、もしかしたらって心配したんだからね! アキさんもどこ行ったかは聞いてないって言うし~!」

「ごめんなさい」

「セーレも、危ないとこに付き合わせちゃダメでしょ」

 マリンがセーレに向かって言うが、とばっちりである。

「すみませんマリンさん、言い出しっぺは俺」

「えっ」

「見学に行こうって……」

「もーっ! なんで、相談してから行かないかな!?」

「心配かけたら悪いと思って……」

「あのねぇ……」

「まぁまぁマリン君、その辺で」

 それまで様子を見ていたアキレウスがマリンをなだめる。

「それで、昨日の山の様子だとフレイリッグは、いたということでいいのかな?」

「……はい」

「何か収穫はあったのかい?」

「フレイリッグは、意志を持って喋りました。そして、この世界の状況を作ったのはフレイリッグだと。さらに、フレイリッグを倒すことができれば、また願いを叶えると……」

「なるほどね。しかし、勝算はあるのかな?」

「いえ……今のところはありませんが、ただ……」

 二人と相談した内容をアキレウスに話せば、アキレウスは腕を組んでしばらく考え込む。

「まぁ、希望はなくはないと思うがね。結局のところ討伐に参加する人数はそれなりに必要になるはずだから、実行するのはかなり困難になると思うよ。全体攻撃の範囲は避けられないし、先の戦争よりよほど絶望的な戦いになると思うから、人を集めることがやはり一番のネックとなるだろうね。討伐に希望が持てたとしても、自ら望んで死地に行けるようなプレイヤーはそう多いとは思えない」

「……そうですね。……でも、もし討伐するとなったらアキさんは協力してくれますか?」

「僕個人としては構わないけれども、戦争で結構参ってしまった子がいるのでね。イーリアス全体での支援は今の状況だと残念ながら難しい。ギルド内で参加するしないで溝を作りたくもないからね」

「はい……」

「まぁ、気には留めておくよ。それでは無事を確認できたことだし僕は失礼するよ」

「あっ、私も……ああっと、こ、これ。お土産置いていきますね!」

 メロンがわたわたとお土産を机に置いて、アキレウスと一緒にギルドハウスから出て行く。


 アキレウスが去ったあともマリンは不機嫌だ。

「マリン、ごめん」

 セーレが謝るが、マリンからの返事はない。

「マ……マリンちゃーん。そろそろ許してあげよう?」

 見かねたシオンが席を立って、マリンの隣に来る。

「……レオくん、なんでセーレだけ連れていったの?」

「えっと、危険だから皆に内容話したら反対されるかと思って……。でも、セーレなら来るかな~。って……」

「そう……。わたしたち……わたしって、レオくんから見たら頼りないのかな?」

「そんなことは……」

「危ないとこ行って怒ってるのもあるけど……置いていかれたみたいで悲しいよ……」

 そう言うと、マリンは踵を返してギルドハウスの奥へと消えていく。

 マリンの言葉に部屋が静まり返る。

「……すみません」

 何に対してなのか、自分でもあやふやなまま皆に頭を下げる。

「まぁ、誘ってくれなかったの寂しい気持ちは私もわかるけど……そこは配慮してくれたんだと思うし……。落ち着いたら仲直りしよ?」

「はい……」

 心配そうに見上げてくるシオンの言葉に力なく頷く。

「オレ、マリンの様子見てきます」

 歩き出したセーレをクッキーが止める。

「セーレ様はおやめになった方がいいかと。わたくしが見てまいります」

 そう言うと、クッキーはマリンがいる部屋へと消えていって、セーレが自らの髪に手を伸ばして、くしゃりとしてからため息をつく。

「セーレもごめん……」

「いえ。オレは共犯ですし、お構いなく」

「まー。重い空気はなしにするっすよ」

「そうじゃな。今度、皆でどこか行こう。もう年末じゃし初詣とか」


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