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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第三章 この世界の日常と非日常
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16話:雪血華1

 12月24日早朝。

 ギルドのメンバーと、日が昇る前から城に移動して待機を始める。昨晩から城で待機していたギルドもいくつかあって、時間より余裕を持って全体の配置が完了する。敵味方の識別のためにセーレを以外は、皆イーリアスがデザインしたお揃いの白いマントをつけている。


「寒いねぇ……」

 城門付近の篝火の前で同じパーティーのシオンが呟く。吐く息は白く、空は曇り空だ。日が昇っても気温は上がらないだろう。

「トラソルンよりはマシかも」

「そうだねぇ~。あそこ寒かったよね。そういえばみんなでクリスマスパーティーしたね」

 季節外れのクリスマスパーティーをトラソルンでした。そして、本当のクリスマスの今日はパーティーなどしている場合ではなくなってしまった。

 飾りつけをされた城や周囲の様子が、より一層もの悲しさを出している。

 城壁を見上げると、ちらりとマリンとミストラルの姿が見える。クッキーは別のところにいるのか、それとも小さいからか見当たらない。

 バルテルは城壁にもたれかかって目を閉じている。

 セーレとタケミカヅチは素手で軽く戯れていて、それをモカやメロン、他のプレイヤーが眺めている。

 少し周囲がざわついたかと思えば、アキレウスが中庭に姿を現す。

「南東に敵影との報告があった。まもなく開戦となるだろう」

 アキレウスが剣を掲げる。

「我らに勝利を!」

 皆も各々武器を高く突き上げ、皆が唱和する。


 ドンと、城から大砲が発射される。

 それからしばらくして、城門にも敵からの大砲か、あるいは元から攻城兵器としてゲームにあったカタパルトかはわからないが、攻撃が届いた重い音がして敵方の雄叫びが微かに聞こえてくる。兵器での攻撃が飛び交い、城壁にいた遠距離職や銃を持ったプレイヤーが迎撃を始める。

 絶えず大砲や投石機の音が鳴り、時折城壁の一部が崩れて、砕かれた石がばらばらと落ちてくる。

 中で悲鳴が上がって、その方向を見れば城壁にいたらしいプレイヤーが落下して地面に倒れている。その光景に、皆の顔が一層強張る。

「おうおう。早くぶちのめしてやりたいのう」

 タケミカヅチが右手を握って左手にパンと打ち付ける。

「どちらが、より戦果を挙げられるか競争しますか?」

「いいねぇ」

 セーレの言葉にタケミカヅチがニヤリと笑う。二人は物騒だが頼もしい。


 大砲の応酬の音や衝撃にもそろそろ慣れてきたところで、城門にドンと衝撃が響く。

 破城槌だろう。いよいよだ。

 俺は先頭に足を踏み出して盾を構える。城門が破られれば敵が雪崩れ込んでくるだろう。

「そういえば、レオさん。あれ使えそうなら使いません?」

「あれ?」

 セーレの言葉に首を傾げる。



「ファランクス!」

 城門が破られた瞬間、俺たちはチャリオットに乗って文字通り敵を轢き殺しにかかる。

 予想外のことに敵の先頭集団は反応できずに慌てて後退っていく。

 俺はチャリオットの先頭で盾を構えて、その後ろに立ったセーレとタケミカヅチが範囲攻撃を打ちながら敵を殲滅していき、バルテルはバリスタを撃って、シオンはリーチを活かして漏れた敵を槍で薙いでいく。

「オラオラオラァ!」

 タケミカヅチが威勢よく叫ぶ。

 チャリオットは勢いに任せて、逃げ惑う敵兵も応戦してくる敵兵も誰彼構わず一直線に殲滅していく。しかし、防御力は上がっているもののチャリオットのHPは、敵の集中攻撃ですぐに減って行き、まもなく消える。

「あそこ狙いましょう」

 セーレが敵の銃兵の集団を指さす。

 そこをめがけてチャリオットが消える前に皆飛び降りる。

「スルーズ!」

 シオンが一定時間パーティー全体の攻撃力を上げるスキルを使う。

「メリークリスマス! だ、オラァ!!」

「プレゼントのお届けです」

 タケミカヅチが拳を大きく振るって敵の集団を薙ぎ倒し、セーレも大剣をぶん回して数名のプレイヤーを葬り去る。

 的となった敵の集団からは悲鳴が上がり、一部は逃げ出していく。少し離れたところに陣を構えていたプレイヤーたちは一斉にセーレに狙いを定めて攻撃を放ち始める。予め撃破の優先順位の高いプレイヤーとして定められていたのだろう。

「ブリリアントオーラ! イージス!」

 セーレに向かっていたプレイヤーのターゲットが一斉に自分に向く。


 大量の銃口と、弓、魔法。


 それが、自分に向けられ、攻撃が飛んでくる。

 本来なら肝が冷える光景のはずだが、セーレとタケミカヅチに引きずられてか気分はむしろ高揚していた。いや、やけくそだったのかもしれない。

「かかってこいや!」

 イージス中は移動できないので、スキルで引き寄せた敵に攻撃を叩き込んでいく。自分が振るった剣でプレイヤーが血を流しながら倒れていく。本来なら震えがくる光景かもしれないが、手を止めている暇などない。手を止めれば、俺が、仲間が倒れてしまう。

 モカとメロンを狙ってきた敵はシオンとバルテルが排除してくれている。

 俺に攻撃をしていたプレイヤーたちは、前衛二人にあっという間に蹂躙されて跡形もない。

「イージスきれたら、左の大砲壊しにいく! 集合!」

 俺の声に、セーレとタケミカヅチが前方から戻ってきて合流する。

「いくぞお!」

 先頭で盾を構えながら走って行くと、矢や銃弾が飛んでくる。

 何もスキルを使っていないので、さすがにダメージを受けるがそんなことは構わずに、モカからヒールを受けながら走って行く。

 柵の配置された敵陣に飛び込んで、弾を装填していたプレイヤーを盾で殴り倒して、剣で斬りつける。

 その場には大砲が三門あったが、タケミカヅチに一瞬で全て壊されて、その間にセーレが付近のプレイヤーを薙ぎ倒す。

 二人とも何か掛け声をしているわけでもないのに、ターゲットの被りもなく、なかなかのコンビネーションである。

「次はあっちだ!」

 付近のカタパルトに狙いを定めて走り出す。

 銃兵がこちらに気付いて銃撃を行ってくる。その時、光り輝く矢がどこからか飛んできて、前方の銃兵数名を撃ち抜いて行く。

 きっとマリンの攻撃だろう。見えていないかもしれないが、軽く盾を上げて「ありがとう」の意を示す。

「どっせーい!」

 タケミカヅチが敵集団に体当たりをして、セーレがカタパルトのロープを斬る。

「城から救難信号あがってる!」

 シオンの声に、ちらりと見れば西の方の城壁が破られたらしい。黄色い煙が上がっている。

「……俺たちはこのまま敵陣地を攻撃する」

 逡巡したが、城には他の隊が応援に行くだろうし、攻城兵器は先に破壊しておきたい。

「うん!」


 攻城兵器を潰して回っていると、近接武器を持った集団が突撃してくる。装備から察するに高レベルプレイヤーだ。それが二十人ばかり。

「やっと、潰しがいのありそうなヤツが来たじゃねぇか」

 タケミカヅチが鼻息を荒くする。

「どうどう」

 前に出ていきそうなタケミカヅチを制して、俺が先頭に出て集団に突撃していく。

 人数差で回避すべきなのかもしれないが、これで怖気づくには少々材料が足りない。

 先頭にいた盾をもったプレイヤーにスタンを叩き込んで、後衛を狙おうと移動していたプレイヤーに引き寄せを使って、ホールドをする。

 そこからは乱戦になる。

「ヒーラー中心で守り固めて! セーレは遠距離職の殲滅を頼む!」

 モカとメロンを中心に、セーレ以外のメンバーで守りを固めながら戦う。

 敵は、敵同士が密集しているため、少々武器を振るい辛いようで、遠距離攻撃はあまり飛んでこない。

「ラーンドグリーズ! ラーズグリーズ!」

 シオンが範囲デバフをばらまく。

「それっ」

 バルテルはエンチャンターだが攻撃力はあり、巨大な槌で敵の鎧を粉砕していく。

「まだMP余裕もりもりなので、心配しないでください!」

「ボクも余裕っす」

 セーレが向かった方からは敵の悲鳴が聞こえてくる。

 目の前の敵を二人相手にするが、装備のわりには相手の動きはイマイチに思える。レベルは高くとも、戦闘には慣れていないのだろう。二人相手でも負ける気はしない。デバフ等は防ぎようもないが、それでもヒーラーのサポートもあり安定している。

 少し時間は食ったが、なんなく集団の殲滅は終わる。

 そうすると、また銃や弓を構えたプレイヤーたちがこちらに狙いを定めて駆けつけてくるので応戦しに向かう。

「バルテルさん、敵の攻城兵器どうなってます?」

「はいよ。見える範囲であと三つ。他の隊が向かってるから大丈夫そうじゃな」

「オッケー」

 自分たちはとにかく城周辺に布陣している敵プレイヤーたちを殲滅して回ることにした。


「あそこ、苦戦しているみたい」

 シオンの言葉に目をやると、少し離れたところで味方のプレイヤーが敵と戦っているが、二人倒れているのが見える。

 走っていって敵を引き付けて、敵が動揺している間にアタッカー陣が一瞬で殲滅していく。

 始めは少し躊躇していたシオンも、今は容赦なく敵に槍を突き立てている。

 皆、多少ダメージを受けても怯むこともなくなった。モカでさえも泣き言ひとつ言わずに戦場を走っている。


 なんとも、嫌な光景だ。

 こんなことをしたくないはずの人まで巻き込まれて、そして、争いに慣れていくのが、とても嫌だ。


「ありがとうございます。ヒーラー倒れちゃって……。リザお願いできませんか? こちらです」

 モカがリザレクションをかけると、倒れていたプレイヤーが起き上がる。その隣に倒れているプレイヤーはメロンが対応する。メロンがリザレクションをかければ、倒れていたプレイヤーのもげた腕が光に包まれて元の身体にくっついて高速で再生されていく。

 起き上がったプレイヤーは青ざめていたが、それでもまた武器を構える。

「他、大丈夫っすか?」

「あ……一人、見つからなくって……」

「はぐれたんですか?」

「いえ、大砲が当たって、し、死体が見つからなくて……」

 エルフの少女の外見をしたプレイヤーが、震える手で杖を握りしめている。

 塵も残さず身体が消滅してしまったら、もしかしたら……。という考えを遮るようにセーレが口を開く。

「どのあたりですか?」

「えっと、たぶん……こっちの方で……」

「マップに死亡したメンバー表示されてますか?」

「あ、あります……!」

 エルフの少女を追いかけていくと、茂みになっているところがあって、セーレが周辺を確かめている。

「……ここに名前見えますね。リザ試してください」

「は、はい」

 向こうのパーティーメンバーのヒーラーがリザレクションをかけると、何もない空間に人型が形成されてプレイヤーの姿が出てくる。

「あ……よかった……」

 復活したプレイヤーに向こうのパーティーメンバーが抱き着いている。

「この辺は俺たちがどうにかするから、もうちょっと味方多いところ行ってください」

「すみません、ありがとうございます」

 死んでも生き返りはするが、やはりいい気分ではない。


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