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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第三章 この世界の日常と非日常
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12話:ハロウィンナイト2

 ハロウィンパーティー当日。

 夕方から行われるステージのオープニングでゲストとして出演する。まもなく夕日が沈んで夜が訪れる時間だ。

 聖堂前にのステージに行くと、ずらりと観客が並んでいる。座席はなくオールスタンディング状態のためか、数はハルメリアの時より多い。最前列にアキレウスとメロンが並んでいるのが見える。

 徐々に暗くなっていくステージに、パッと照明が灯る。

「ゲストのサウザンド・カラーズです! この前のステージ見ていただいた方も、初めましての方も是非楽しんでいってくださいね!」

 セーレが喋るのを渋ったので、代わりにマリンが皆に愛想よく挨拶をしている。

「それでは、ミュージックスタート!」

 マリンの合図の後に、バックから楽器の演奏が流れはじめる。


 今回は、マリンとモカが一緒に歌うところがあったり、俺とセーレの間にシオンが挟まって歌うシーンがあったりと、前回とは微妙に違う。

 派手なスキルを使って演出代わりにしてみてはどうかという意見で、雰囲気に合うスキルを合間に挟んで使って前回より派手な演出にし、俺たちの後ろでバルテルとクッキーが踊っているのもあって、前回より一層賑やかだ。二人の踊りは微妙にずれていて逆に愛嬌がある。

 観客たちもコスプレした状態で飛び跳ねていて、壇上から見る風景も楽しい。

 セーレと一緒に歌っていると、黄色い声援が上がってむず痒いが、目の前にあるセーレの表情は声援にピクリともしない。まぁ、そうだよな。と心の中で苦笑する。

 観衆の前で歌って踊るのは独特な感覚だ。時間の流れが早くも遅くも感じて、一瞬一瞬が目に焼き付く。

 光と音に包まれてステージを終えれば歓声が巻き起こって、その歓声に手を振りながら皆で退場していく。もっともセーレだけは手を振らなかったが。


 控室として使っている聖堂近くの建物に入れば、マリンがセーレに文句を言っている。

「あんた、ファンサしなさいよー」

「オレに何のメリットもないのにするわけないでしょ。むしろデメリットしかない」

「こいつ~」

 二人のやりとりの横で、バルテルとクッキーが頭の被り物を外して会話している。

「いや~。やってみると案外楽しいものじゃな」

「ええ、まさかこの歳でこのような体験ができるとは。人生何があるかわかりませんね」

 まだテンションが上がっているのか、クッキーがピョンピョンしている。

「クッキーさんたちいくつなんすか?」

 相変わらず遠慮せずにモカが聞く。近頃はもう止めるのも面倒だ。

「わたくし53です」

「わし48」

「おー。うちの親と同じくらいっすね」

「な、なんじゃと……。よし、クーさん今から飲もう」

「わたくしは飲めませんと何度申し上げたら。しかし、モカさんは孫のようで可愛らしいですよ。まぁ、わたくし子どもはおりませんが」

「クーさーん……」

 モカの言葉にダメージを受けたバルテルが、クッキーの頬をツンツンしているが、クッキーは気にした様子もなくマイペースだ。

「二回目だけれど、やっぱ人前出るの緊張するなぁ~」

 シオンが机に椅子にぐたっと身体を預ける。

「そうだな~。まぁ、楽しかったけど」

「そだねー。今回は賞もかかってないから、その点では少し気楽だったかなぁ。いや、嘘。緊張するものは緊張するよぉ。やっぱ」

「ははは。でも、シオンさん本番には強いよね」

「ええ~。そ、そうかなぁ~」

 しばらく雑談しているとマリンがパンパンと手を叩く。

「屋台とか出てるはずだし、そろそろ外行こっ」

「はーい」


 ぞろぞろと皆で大通りまで来たはいいが、あっという間に他のプレイヤーに気付かれて囲まれて分断されてしまう。

「あー! 歌ってた人たち!」

「えっ、どこ?」

「モカちゃんシオンちゃん、近くで見るとかわい~!」

「マリン様サインください!」

 あれよあれよと女性陣が、人の波にさらわれていってしまう。

 そして、俺とセーレの周りには別のプレイヤーたちが押し寄せてくる。

「セーレ様~!」

「レオンハルトさんこっち向いて~!」

 これはさすがにセーレでなくとも困ってしまう。まるでアイドル状態だ。

 セーレがクラスチェンジをする素振りを見せたので、セーレの手をひしっと掴む。おそらくアサシンになって逃げる気だ。

「一人にしないで?」

「女々しいこといわないでくださいよ」

 セーレがげんなりした表情で俺を見てくる。

「お願い」

 俺が懇願すると、セーレは手を下ろして、ため息をついて小声で言う。

「一緒にいてあげますから、どうにかしてください」

「俺だってどうしていいかわかんないし、どう見てもお前のファンのが多いだろ」

 ひとまず俺は苦笑いを浮かべて適当に手を振る。

 二人で対応に頭を悩ませてその場に留まっていると、周囲の声がだんだんと静まっていき、人だかりが割れていく。その光景に、おや、と思ってその方向を見る。

「はっはっはっ。盛況だね」

 人の波を割って現れた声の主は、吸血鬼衣装を身に纏ったアキレウスだ。

 さすがにトップクラスの戦争ギルドのマスターともなれば、皆少し距離を置いてしまうのだろう。それを見たセーレが呟く。

「アキさん。あなた、たまには役に立ちますね」

「うん?」

 アキレウスが笑顔のまま首を傾げる。首を傾げているアキレウスの後ろから、別の人影がパタパタと走り寄ってくる。

「もう、先に行かないでくださいよぅ」

 両手にお菓子をいっぱい持ったメロンだ。オレンジと黒のドレスを着て、カボチャの形の髪留めをつけてサイドテールにしている。

 メロンが加わったことで、人だかりがさらにもう一歩下がって、距離ができる。

「……メロンさん、よかったら一緒に屋台回りませんか?」

 セーレがメロンに話しかけるとメロンは二つ返事で承諾し、アキレウスも一緒についてきて四人で屋台を回ることになる。廃人オーラを前に、誰も近寄ってこなくなり平和が訪れる。


「セレさま~。トリックオアトリート!」

「Trick」

「え、えーっ! お菓子くれないんですか?」

 セーレに即答されて、メロンが悲しそうにする。

「持ってませんので」

 それは嘘だ。お菓子をクッキーからわけてもらっているのを確認している。きっとメロンの反応を見て楽しんでいるのだろう。

「セレさまに、悪戯かぁ……ど、どうしようかな……」

 うーんうーんと唸っているメロンに、しばらくしてセーレがお菓子を差し出す。

「時間切れです」

「えーっ、持ってるじゃないですかぁああ! もぅ」

 そんな二人の後ろ姿を見ながらアキレウスが笑う。

「あの二人、仲いいですよね」

「そうだね。オフで仲良くなったものあるけれど、なかなか彼女らと同じスピードで駆け抜けていけるプレイヤーはいないからね……」

「なるほど……」

 昔、メロンと一緒にパーティーをした時のことを思い出す。確かに、四六時中ゲームをしていそうな印象だった。

「えーっ、セレさま99なったのですか~? 私も今度狩り連れてってくださいよぅ」

 などと聞こえてくる。

「えっ、99? マジ?」

 隣のアキレウスが衝撃を受けた表情をする。

「はい。99になってましたよ。毎日ってほどではないですけど、皆で狩り行ってるので」

「君たちのギルドちょっとおかしくない?」

「うーん、他にそんなにやることもないし、スポーツ感覚……みたいな?」

「そうか……。すっかりセーレ君に毒されてしまったのだね」

 アキレウスが憐れむような瞳を向けてくる。

 そうだろうか。と考えたが、そうかもしれない。だって、狩場では他のプレイヤーを全然見かけないのだから。

「アキレウスさんたちは、あまり狩りに行っていないんですか?」

「たまに行くことはあるが……。そうだね、レベルを上げるのは悪くないかもしれないね。ちなみに、狩場で他のギルドは見かけるのかい?」

「いえ、あまり見かけませんね」

「まぁ、そうだろうね。……そうだ」

 アキレウスがこちらを向いて、俺の顔を見る。

「僕のことはアキでいいよ。長くて呼びづらいだろう?」

「じゃあ……。アキさん」

 皆が呼んでいるように、そう呼ぶとアキレウスは満足げに笑う。


「あっ、ねえさま!」

 メロンが屋台に駆け寄って行く。

「おう。メロンさん……っと、あれ? マリンちゃんたちは一緒じゃないんだね」

「ええ、はぐれてしまって……」

 エリシアは魔女の衣装に身を包んでいて、その横にいるリコリスは男装の吸血鬼姿だ。

 二人は夏祭りと同じく綿あめを売っているようで、オレンジ色と紫色の綿あめが並んでいる。

「わー。色付きですか?」

「どっち欲しい?」

「両方ほしいです!」

 メロンが目を輝かせて言う。

「メロンさん相変わらずやねぇ」

 そう言って、エリシアがメロンに綿あめを二つ渡す。

「セーレさんもどうぞー」

 リコリスがセーレに綿あめを渡す。

「僕にもいただけるかな」

「はいよ」

 俺とアキレウスもそれぞれ綿あめを受け取って、礼を言う。

 オレンジ色の綿菓子を口に入れると、見た目と同じくほんのりオレンジの味がする。

「ワンちゃんたち、今日のライブも盛況だったね~」

 ワンちゃんとは俺とセーレの狼男のコスプレを指してのことだろう。

「オレは盛況で嬉しくないですよ」

「そうやろな~。ていうか、セーレは今回何で出たの?」

「……まぁ、ギルドの付き合いで」

「そうかそうか。ええこええこ」

 エリシアが狼の耳ごとセーレの頭をなでなでする。

「エリさんやめてください」

 セーレがむすっとした表情でエリシアを見る。

「はいはい」

 セーレの表情にエリシアが笑いながら手を引っ込める。

「あっ、セーレさん」

 リコリスが思い出したように口を開く。

「昔、狩りした時のが、探したら倉庫にあったのであげます」

「おっ。ありがとうございます」

「どういたしましてー」

「何をもらったのです?」

 メロンが不思議そうに二人を見る。

「アビスの素材です」

「おー。99装備。セレさまは、やっぱアビスの方ですか。私はシエル集めなきゃ……。狩り行きたい……」

「今から行きます?」

「きゅんっ」

「こらこら、今からはやめなさい」

 夜だというのに本当に狩りに行ってしまいそうな二人をアキレウスがなだめる。

「しゅーん。また今度!」

「はい」



 皆と雑談してから適当に露店を見て回ってギルドハウスに帰ると、シオンとマリンがソファに、モカがラグの上に転がっている。

 バルテルとクッキーは、席についてそれぞれビールと緑茶を飲んでいる。

「何があったの」

「セーレさんの気持ちがわかったってやつっす……」

「なるほどな」

 前回は、セーレ以外はあまり名前が知られていなくて被害はなかったものの、今回はライブ後すぐに人に囲まれてしまったから大変なことになったのだろう。

「レオさんたちは平気だったの……?」

「途中で歩くイージスが手に入りましたので」

「何それ」

「アキさん」

「へー。アキさんそういうのに使えるんだ……。ま、上背あるし……城主だし、知らない人から見れば威圧感はあるのかなぁ……」

 マリンがぐったりと言う。


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