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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第三章 この世界の日常と非日常
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8話:不穏な兆し1

 なんだかふわふわとした夢見心地のままカーリスに帰って、さらにその翌日。大部屋に行くとセーレが二人掛けのソファにだらりと寝転がっている。

「セーレ、どうしたの」

 珍しい恰好に思わず聞いてしまう。別のソファに座っていたマリンがけたけたと笑う。

「街でめちゃくちゃ話しかけられて、もう外出たくないってさ。カーリスでもライビュ流れたみたいでさ~」

「なるほどなぁ」

「今まで、皆怖がって近寄ってこなかったもんね~」

「うるさーい」

 覇気のない声でセーレがマリンに文句を言う。完全に不貞腐れている。


「あっ、レオくん。リング渡しておくね」

「本当にもらっちゃっていいのかな」

「いーよいーよ。他のはみんなで分配するし。この状況で個人の資産がどーのとか言ってても仕方ないしね」

「では、ありがたく」

「陽炎さんとリルさんにも少し包んでおこーっと。どれくらいがいいかな」

 アダマンティアリングを装備して、ステータスを確認すると防御力と魔法防御力が目に見えて上がる。

「うお、すげー」

 防御力が上がる以外にも、地属性耐性と石化耐性がついていて、最大HPと最大MPが結構増える。前衛はMP量が少ないので、最大値が増えるのはありがたい。

「セーレ、ちょっとPvする?」

「……外出たくない」

 セーレは寝転がったまま、こちらを見もせずに言う。

「重症だな」

「まぁまぁ。一週間もすれば皆忘れるって」

「どうだろう……。あまり娯楽あるとは言えないし」

 そんな話をしていると、玄関の呼び鈴が鳴らされる。


「はーい」

 マリンが立ち上がって、玄関に行く。セーレものろのろとソファから起き上がって、髪を整えている。

「やあ」

 聞き覚えのある声がする。アキレウスだ。

「なんだアキさんか。メロンちゃんはいないの?」

「ひどいね。マリン君」

「だーって、アキさんめんどくさい話しか持ってこないじゃーん」

「ははは、今日はライブの感想をね。皆、素敵だったよ。思いもよらない才能があるものだね」

「どうも~」

「ありがとうございます」

 セーレは無言だ。

「ライブというものにはあまり興味はなかったのだが、なかなかいいものだね。夢中になる人の気持ちが少しわかったよ」

「まぁ、立ち話もなんだしどうぞ」

 マリンが空いているソファをアキレウスに勧める。


「お邪魔するよ。おっと、お土産を持ってきたんだ」

「ふーん、何?」

「日本各地の銘菓再現した、お菓子の詰め合わせだよ」

 そう言ってアキレウスが机の上に和風の包装がされた箱を置く。

「二日で消えちゃうから気を付けてね」

「ありがとー」

「ところで、セーレ君はずいぶんと不機嫌そうだね」

 アキレウスがニコニコとセーレに話しかける。

「ええ、まぁ」

「ふふふっ、街でモテモテだったのを僕のギルドメンバーが見かていてね、原因はそのあたりかな? いっそ狂戦士からアイドルに転職したらどうだい?」

「……喧嘩売ってるんですか?」

「いや、正直な感想だよ。君には魅せる力があるよね。次は王子様衣装でどうだい?」

「……おう、表に出ろ。カリアゲ」

 セーレが立ち上がって、大剣を出現させてアキレウスに向ける。

「怖い怖い。物騒なものは閉まってくれないかな。プリンス」

 この人は完全にセーレをおちょくりに来たんだな。と思う。そのアキレウスの頭を、マリンがポカっと殴る。

「はーい、その辺にしてねー。やめないと殴るよ」

「今、殴られた気がするのは一体?」

「防御力高いから、いーでしょー」

「ははは。ライブではマリン君とレオ君も素敵だったよ。マリン君は、高音パートが綺麗だったね。レオ君はセーレ君と一緒に歌っている時がかっこよかったよ。あの、観客を煽る動作好きだな」

「どーも」

「……ありがとうございます」

 アキレウスに言われると、なんだかんだ少し照れてしまう。

「セーレ君も素敵だったんだけどなぁ……」

「まだ言うの?」

 セーレがアキレウスを睨みながら言う。

「そんなセーレ君のイメージを、変えられそうな……いや、元に戻せそうな話を持ってきたんだけれど、聞くかい?」

「……何?」

「あー! アキさん、やっぱり面倒くさい話持ってきたでしょ!?」

 マリンが頬を膨らませる。

「まぁまぁ、聞くだけならタダだから聞いてくれたまえよ」

「聞きましょう」

「なんでもブラックナイツがPvPトーナメントを計画しているらしくってね」

 ブラックナイツとはイーリアスとほぼ同格の、トップクラスの戦争ギルドだ。個人の戦力がずば抜けているイーリアスに対して、ブラックナイツはそれなりに質の高い人間が多く在籍していて、イーリアスよりアクティブメンバーが多い。

「ふぅん。それに出て相手の面子潰してほしいってわけですか?」

「話が早くて助かるよ。イーリアスがあまり動くと角が立ちそうなのでね」

「かと言って、放置しておけばこの状況での対人最強を持っていかれると」

「うんうん。さすがだね。優勝したらうちのギルド倉庫で所有している好きなボスアクセをプレゼントするよ」

「ちなみに1on1ですか? GvGですか?」

「1on1」

「よし、マリニアンあります?」

「容赦ないね。あるよ」



 アキレウスが帰ると、マリンが呪詛を吐き続けている。

「アキさんのばーかばーかばーか。セーレもばーか。なんで受けるかな?」

 セーレはアサシンのスキルを使えば人目につかずに移動できると気づいて、文字通り姿を消して、対人の準備で街へと出かけてしまった。

「まぁまぁ……。セーレがやるって決めたらそうそう曲げないだろうから、もうどうしようもない」

「よくわかってるね~。ほんと、あいつ~、も~~~」


 アキレウスが言った通り、数日後にはブラックナイツ主催のPvPトーナメントのイベントが告知された。場所はカーリスの闘技場で行うとあった。元のゲームでは闘技場であればPKペナルティはないが、現状は闘技場でなくてもペナルティはないと聞いた。とは言え、PvPをやるなら闘技場が適しているので結局は闘技場なのだろう。

 優勝者にはケレスレンイヤリングが送られるとあった。竜アクセほどではないが、スキルダメージアップがついているので、アタッカーには人気のレアアクセサリーだ。しかし、PvPトーナメントに出るような層はすでに所有しているだろうから、優勝したところで売るくらいしか使い道はなさそうだ。

「観戦どうしようかなぁ……」

 マリンがソファにぐたっともたれかかっている。

「無理に行かなくていいんじゃないかな」

「ボクはパスっすね……」

「私は考え中」

「わしは行こうかな」

「わたしくは……」

 クッキーは何かを言いかけて、想像してしまったのだろうか。そのまま口を開けてフリーズしてしまった。


 トーナメントは、黒猫のイベントと違って今一つ楽しみにはできないイベントだ。現代人にリアルな闘技場は刺さらない。

 街を歩いてみてもトーナメントの話題にはあまり触れられておらず、相変わらず黒猫のイベントの話で持ち切りである。そして、俺が散歩がてらカーリスの街を歩けば、イベントの件で何度か声をかけられて驚く。顔や名前など覚えられていないだろうと思っていたのに、時々視線を感じるので想像以上に皆の関心があったようだ。


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