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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第二章 世界変容
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28話:再会の時1

 入口になっている門の一つからカーリスの街に入る。

 カーリスは大陸一の大きさを誇る巨大都市で、プレイヤーの往来も今まで訪れた街の中で一番多く、高レベルと思われる装備のプレイヤーを見かける頻度が段違いだ。

 街の中央には大聖堂があり、そこから放射状に街並みが広がっていて、大きな通りには花壇があり華やかさもある。

 歩いていると、たまにこちらを指さしているプレイヤーがいることに気付く。恐らく俺たちではなくセーレ個人を指さしているのだろう。セーレはいつも通り無表情なので何を考えているかはわからない。シオンは物珍し気にきょろきょろとしている。

「おっきいねぇ……迷子になりそう」

「慣れないうちはマップを見て移動した方がいいかもしれませんね」

「はーい。でも、皆のギルドの人と会うのちょっと緊張するなぁ……」

「皆、優しいから大丈夫っすよ! いるかどうかはわからないっすけど……」


「さて、その建物ですが……」

「いるかなぁ……」

 まぁ、悩んでもいても仕方がない。

 セーレがギルドハウスの扉に触れると、扉はなんなく開く。

 入ってすぐの部屋には、マリンとバルテルがテーブルを挟んで向い合せに座って、お茶をしていた。

「……久しぶり」

 セーレがそう言うと、マリンが手に持っていたスプーンを取り落として、すぐに立ち上がる。そして、駆け寄って勢いよくセーレに抱き着く。

「あああああああぁぁ! 心配したんだよおおおぉ!! ゆううううう」

「ま、マリン、名前……!」

 おそらくセーレの本名の一部か何かなのだろう。セーレが慌てている。

「手紙来たけど、だいぶ前に一通だけだったし、それから全然来ないし……PK出て道封鎖されちゃうしいいいぃ」

 マリンはポロポロと泣き出す。

「マリン、ちょっと落ち着いて」

 セーレがマリンの頬を軽く叩いている。

「落ち着くわけないでしょー! どんだけ心配したと思ってるの!?」

「いや、その辺の敵にやられたりしないから落ち着いてって」

「戦闘は心配してないわよ! でも、あんた世間知らずで、家事もできないからちゃんとご飯食べてるかとか、人に誤解されまくる性格だから、面倒ごととか巻き込まれてないかとか……!!」


 セーレにここまで言いまくれる人間が存在していることに驚くとともに、マリンはセーレの何なのだろうと思ったところで、俺はずっと重大な勘違いしていたのではないかと、ふと気づく。

 マリンは、セーレの家族ではない。以前、友人だと言っていた。恋人でもない。

 しかし、マリンの態度は、男友達に見せる態度にしてはなんだか違う気がする。


「もー、シゲルさんも心配のし過ぎで、頭に十円ハゲできたんだよおおぉおお!?」


 シゲルさんが誰なのかはわからないが、思い返せばセーレについて、疑問に思ってもよかったタイミングはいくつかあったはずだ。

 そして、それは次のマリンの言葉で決定的なものとなった。


「だいたい、女の子が一人でいたら心配するに決まってるでしょー!?」


 その言葉に、セーレは左手で顔を覆って、モカは「は?」と声を上げ、俺の頭は真っ白になる。

「マリン、あのさ……」

 セーレが何か言いかけたその時に奥の扉が開いてクッキーが姿を現し、セーレの姿を認めると、一瞬フリーズした後に駆け寄ってきて、セーレの右手を握って恭しく頭を下げる。

「あああぁ。お嬢様、よくぞご無事で」


 いやいやいや。百歩譲って女性なのはいいとして。

 なんか、聞こえた。

 いや、これは聞き間違えかもしれない。


「え、セーレさん……女の子って……?」

 モカがおずおずと話しかける。

「あれ……言ってなかったの?」

 マリンが少し落ち着いたのか、セーレの顔を見る。

「えっと……。すみません、性別を隠していたわけでもないのですが……言い出すタイミングがなかったといいますか……。明かして気を使わせたいわけでもなかったので……」

 セーレは渋面で俯く。

「あーっ、えーっと。ごめんね……?」

 マリンがセーレになのか、俺たちになのか両方を交互に見て言う。

 俺とモカはもう完全に思考停止状態だ。

 そういえば、シオンは……と、思っていると、シオンは俺たちの前に移動してくる。そして、俺とモカに向かって綺麗な土下座をする。

「ごめんなさい。私は初日から知ってました。セーレさん、言った方がいいのか悩んでることもあったので許してあげてください」

 なるほど……。これまでの二人の関係を思い出すと納得の距離感である。

「あー……ええと……うん。むしろ、勝手に勘違いしてたのはこっちだし……」

 セーレもシオンも悪くはないので、許す許さないではない。

 しかし、とにかく色々と失礼なことをしてしまったのではないかと思い、これまでの思い出がさながら走馬灯のように頭を駆け巡って行く。

「あの……すみません。しばらく一人にさせてください」

 セーレがマリンとクッキーの手を振り払って、奥の部屋に消えて行く。

 せっかく再会したというのに、とても気まずいムードになってしまった。

 そんな中、沈黙を保っていたバルテルが口を開く。

「まぁ、皆無事でよかった。とりあえず飲む? 今ならわしの個人情報もサービスでつけるよ」

「……いえ、結構です」



 ずーんと思い空気の中、とりあえずセーレ以外のメンバーでテーブルを囲む。クッキーだけは座らず、落ち着かなげにはわはわと歩いている。たまに見える後頭部の毛が一部丸く抜けていることから、こちらがシゲルさんなのだろう。

 バルテルがビールを出してくれたが、誰も口をつけていない。

「ぼ、ボク、めちゃくちゃ失礼なこと何回か言っちゃったっす……」

「俺も、なんかこう雑に扱いすぎたというか……」

「考えてみれば、あんなイケメン紳士が男なはずなかったっすよ~!」

 モカが両手で頭を抱えて机に突っ伏す。

「えーっと、その辺はあんまり気にしてないと思うよ……」

 シオンが苦笑いをしている。

「たぶん、セーレさんは態度変えられる方が嫌だと思うから……」

「あぁぁ。ごめん……わたしが迂闊だったあああ。メロンちゃんとかアキさんとかは知ってるから、レオくんたちも知ってると思っちゃってた……というか、いやそんなこと関係なくさっきのは、なんか色々口走ってたよね。うん」

 マリンが机に額をこつんとぶつけてそのまま突っ伏す。

「わたくしも気が動転しておりました。申し訳ないことを……」

「うんまぁ、今日のところは皆休んだ方がいいんじゃないかの」

 と言うバルテルの一言で解散になった。



 俺とモカはギルドハウスに居辛いのがあって、今日は外泊することにした。

 そして、二人で反省会を始める。

「いや、先入観って怖いよな」

「うん……男キャラで一人称オレのバリバリ脳筋アタッカーだったから、もう最初から完全に男だと思ってたっす。女キャラで一人称私だったら、半分は男だと思うっすけど……逆はあまり疑ったことがないっす……」

「普段の言動を取ってもな……。まぁ、育ちは良さそうだったけど……」

「あー、しゃんとしてるっすよね。ご飯食べる時のナイフとフォークの使い方めっちゃ綺麗。……綺麗と言えば……、あれ、女性だったらめちゃくちゃ美人っすよね……? いや、今も美人っすけど」

「そうだなぁ……」

 ぼんやり女性の姿を思い浮かべてみるが、想像力が貧困なのでほぼ女装になってしまう。それでも十分綺麗だとは思う。

「あんな美人に……なんか、その……」

 二人でため息を一年分くらい吐き出す。

「でもまー、たぶん態度は変えてほしくないって感じなんすよね?」

「そうだな……。俺も態度変えられても嫌だしな……。まぁ、そもそも男だから女だからで態度変える必要はないと思うんだけど、その辺尊重するしないは別だろ」

「レオさん真面目っすねぇ」

「見習っていいぞ」

「善処するっす。まー、そんなわけで今まで通り……」

「今まで通り……」

 果たしていけるのだろうか? と、モカと一緒にため息をつく。


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