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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第二章 世界変容
22/139

13話:NPCと言えども

 翌日、色即是空のギルドに別れを告げて、また馬車で移動を始める。

 暇つぶしに買ったボードゲームを広げて皆で遊ぶ。運要素が大きく、勝敗が偏ることもあまりなくそれなりに楽しい。

「ボードゲーム初めてやったんすけど、結構楽しいっすねぇ」

「これはルール簡単だからいいよね。複雑なのだと、ルール説明でぐだっちゃうことあるかなぁ」

「へー。シオンさん結構やるっす?」

「会社にボードゲーム部があって、たまに参加してるよ~」

「会社も部活あるんすねぇ」

「モカちゃんは部活やってた?」

「高校の時は、美術部入ってたっす」

「ああ。絵上手だもんねぇ」

 モカとシオンは昨日一昨日で仲良くなって、二人でよく喋っている。可愛らしい少女の外見の二人がきゃっきゃしている光景は悪くない。

「上がりです」

 セーレも口数は少ないが、ゲームは楽しんでいるようだ。この世界になってすぐの頃よりは、セーレも皆に馴染んできたように思う。


「あーっ! も、もう一戦するっすぅ」

「それもいいけど、そろそろ飯にしないか?」

「あ、食べるっす」

「何食べる?」

「うどん……あーっ、馬車の上だからやめとこ。カルボナーラ欲しいっす」

「ほいほい」

 システムが要求してきた素材を放り込んで製作をして、モカの前に出す。

「いやー、料理便利っすねぇ」

「ハンバーガーとポテトありますか? あとナゲット」

「どうぞ」

 セーレがリクエストしたものを渡す。

「ありがとうございます」

「私は~。料理って、何があるんだろ……? フィッシュサンドみたいなのあります?」

「えーっと、魚とパン……なさそうだけど……」

 ふとオリジナルレシピという項目が目に入る。

 そこに魚とパンとレタスを突っ込むと、それぞれにどうするかという選択肢が出てくる。魚は揚げるを選んで、パンとレタスはそのままにして、製作ボタンを押す。

「お、できた」

 できた料理の名前はオリジナルレシピとだけ書かれていたが、シオンのリクエストしたものに近いはずだ。

「はい、どうぞ。味はどうなってるかわからないけど……。微妙だったら別の作るね」

「ありがと~」

「俺もパンにしようかな。ここだと食べにくいし」

 馬車はあまり融通が利かないのでプレイヤーの要望では止まってくれない。

「飲み物何かいる?」

「サイダー欲しいっす」

「はいよ」

「私、牛乳……あ、これは製作いらないね」

「ガラナありますか?」

「うーん、なさそう」

 セーレが要求してきた飲み物がなんだったか思い出せないが、リストにはなかったので一般的なものではないのかもしれない。

「では、ジンジャーエールください」

「オッケー」



 カタカタと揺られながら長閑な田舎道を馬車で走る。昼食を取り終わると、セーレが昼寝をすると言って寝てしまう。

「私もちょっと眠いなぁ」

「見張りなら俺がしてるから寝ていいよ」

「ボクも見張りするっすー」

「それでは、ちょっと……」

 シオンは、クッションをポンとだしてセーレの横で丸くなる。


「平和っすねぇ」

「平和だなぁ」

「なんか、こういうのも悪くないなーって思っちゃうっすね……」

 環境に慣れてきて、時折リアルのことなど忘れてしまいそうになる。

「そうだな。アンネさんとこ楽しかったな」

「そうそう。アンネさんとこのギルド見てたら、カーリスのギルドハウス使って皆で、わいわいしたいなーって思ったっす」

「シオンさんもサウザンド・カラーズに入れてもらえたらよさそうだよな」

「そいや、セーレさんは勧誘権限ないんっすかね?」

「たまに傭兵で抜けることあるから役職ないってさ」

「あー。上位のとこでたまに参加してるって言ってたっすもんね。前のギルドだとあまりランク高い戦場行かなかったから会わなかったっすけど……」

「同じ戦場で会ったら轢き殺されてただろうな」

「そういえば、セーレさんがイベントのGvGトーナメント出てたの見たことあったっすよ。装備もやばかったけどプレイヤースキルもやばかったっすね。位置取りとかスキルの使いどころが神すぎてやばいっす」

「へー。トーナメントはどうだったの?」

「アキレウスさんがリーダーのチームで優勝してたっすね」

「あー。それ、結果だけ見てアキレウスさん優勝したんだーって思って。同じチームだったんだな」

「メロンさんも一緒で、イーリアスのメンバーと外部少しみたいなチームだったっす」

「アキレウスさんたちもこっちいるのかな」

「いたら頼もしいっすねぇ」



「着きましたよ」

 セーレたちと交代で昼寝して、寝ていたところを起こされる。

「さんきゅ」

「ふぁああ」

 到着した先は、村にしては大きいが街と呼ぶには小さい。そんな規模の場所だ。


「宿あるっすかね」

「なくても、その辺の民家に勝手に入って寝ることもできるらしいけどな……」

「ゆるゆるっすね」

「でも、宿屋の方がセキュリティや設備しっかりしてるからそっちの方がいいな」

 そんなことを言いながら一軒だけあった宿屋に向かう。

「個室空いてるみたいだから、今日は個室でいいかな?」

 モカとシオンが頷く。

「あれ、セーレどこいった?」

「気になるとこあるから見てくるって言ってたっす」

「そう……。まぁ、セーレなら一人でも大丈夫か」


 手荷物があるわけでもなく、受付で鍵をもらってセーレを探しに外に出ると、プレイヤーが数名たむろしているところに混ざっている。

「セーレ、何かあった?」

「ええ。クエストで」

 厩舎の横に張り紙がしてあって、その内容を読む。

「馬車入手クエスト……」

「馬車……!」

「全員で受けておきますか?」

「そうっすねぇ。パーティーでも行けるやつだし全員でよさそうっすね」

「じゃあ受けようか」

 張り紙に手を伸ばすと、クエストを受注するかどうかのウィンドウが出てくる。

「あっ」

 シオンが残念そうな顔をする。

「馬持ってないと受けれないみたいで……」

「では、馬捕まえにいきましょう。レオさんたちはその辺、見ていてください」

 セーレがシオンを連れて、馬用の餌を買いに行ってしまう。

「あいつ、行動力の塊だなー」

「スイッチ入るのめちゃ早いっすよね」

 モカと二人で周囲を散策するが特に何もない。

「あっ。薬草生えてる。とってこー」

「俺、そこで食材見てるね」

「うんー」



 大した時間もかからず、セーレとシオンが馬に乗って帰ってくる。シオンは小柄な葦毛の馬に乗っている。

「戻りました。では、行きましょう」

 クエストは街道の途中で立ち往生している商人を助けるという内容のもので、所謂護衛クエストだ。クエストを開始すると、視界が暗転して横転した馬車の横から始まる。周囲を見ると特殊なエリアのようだ。試しにマップを呼び出してみるが、マップは空白で表示できないエリアと出ていた。

「ああ、すまないね。岩に乗り上げた拍子に……」

 NPCの小太りな商人が話を始めると、近くから熊が現れる。

「ひっ、お助け~」

 と、商人はその場で頭を抱えて縮こまる。

「実際の生き物はなんか嫌っすねぇ」

「熊はまだいいけど、犬や猫だったら嫌だなぁ」

 と、話している間にセーレが熊を倒してしまった。低レベルでも受けられるクエストのようなので難易度は低く、一薙ぎすれば敵は死んでしまう。

 ぱらぱらと間を置いて熊が現れるのを適当にあしらう。

「私でも倒せる~」

 とシオンがやってきた熊を槍で突いている。

「無理しないでね」

「うん。近くきたのだけ対処するね」

「へへっ、楽勝っすね」


 しかし、しばらくすると人間の声が聞こえてくる。

「こんなところにいい獲物がいるじゃねぇか」

 と、現れたのは山賊だ。

「に、人間っすか……」

「NPCですよ」

 セーレが近くにきた山賊を一刀のもとに切り伏せる。山賊は断末魔の悲鳴を上げて倒れ、斬られた山賊の左腕が宙を舞って、並んで立っていたモカとシオンの足元に落ちる。

「ひっ……」

「うわ、ぐろいねぇ……」

 二人は落ちた腕から少し後退りして距離を取る。

 二人にはあまり近づけさせないほうがいいな。と思って、できるだけ出現ポイントに近いところに向かう。前方と中ほどは範囲でカバーできるだろう。

「後ろ対応します」

 俺だけに聞こえるか聞こえないくらいの声で囁いてセーレが走っていく。


 前方から三体現れた山賊を引き付けて、一体ずつ剣で倒す。

「いてぇよぉ……」

「い、嫌だ……死にたくない」

 などと言いながら、ある者は白目をむき、ある者は口から血を吐き出し、山賊は倒れていく。

 斬った山賊の血が俺の鎧にかかる。血の匂いがして、吐き気を催しそうだ。

 倒れた山賊がぴくぴくと痙攣しているのが見える。

 NPCだと頭で理解していても、感情が追いついてこない。

 後方からも山賊の悲鳴が聞こえてくるので、セーレが倒しているのだろう。

 また新たに山賊が出現して襲ってきて、それを倒している間に新手の山賊が現れる。

「ごめん、ディレイ中!」

 範囲スキルが使えずに叫ぶと、セーレが大振りの攻撃で何体か倒す。その範囲から一体あぶれて、モカとシオンの元に向かうのを、シオンが倒す。

「こっちきたのはやるよ。モカちゃんは下がってて」

「あ……、うん……」

 それから、皆無言で山賊を倒していくとやがてクエストがクリアされて、無料の馬車が手に入ったが空気は重い。


「モカちゃん大丈夫?」

 モカの顔色は悪く表情は沈んでいる。

 話しかけたシオンもあまり気分が優れなさそうだ。俺もシオンと似たような顔をしているかもしれない。

「う、うん……まぁ、ボクは何もしてないっすし……。でも、すごくリアルで……本物みたいで……怖かったし、嫌だったすよ……」

「ただのデータですよ。気にしない方がいいです」

「セーレさんはそうっすよね。そういうの、わからないと思うっす」

「……は?」

「あ、いや……すみません。部屋戻ってるっす……」

 モカがパタパタと走って去っていく。

「あっ、待ってモカちゃん」

 シオンが少し躊躇してからモカを追いかけて宿に消える。

 セーレはその場に無表情のまま立ち尽くしている。

「あー……。ええと」

「……………」

 セーレの頭をポンポンと叩いて髪をくしゃくしゃしながら撫でる。

「二人に行かないよいにしてくれてたよな。ありがとう」

「……後衛やレベル低い人に行かせないようにするのは当然です」

「今日のは、シオンさんでも倒せるレベルだっただろ」

「オレが倒した方が早いですし。それに、モカさんの言う通りNPCとしか思ってませんし……。オレは別に相手がプレイヤーだったとしても躊躇わないと思いますよ」

「いや、うーん。なんでそこでそういう意地はるかなぁ……。まぁ、冷えてきたし俺たちも宿行こう」



 宿の食堂で夕食を取っているとシオンがモカの部屋から出てくる。

「モカは、どうだった?」

「だいぶ落ち着いたみたい」

「そっか、ありがとう」

「セーレさんは?」

「あー……、さっきまで一緒に飯食ってたんだけど、外行っちゃって……」

 セーレがいたところには半分だけ食べられたサラダと空のグラスが置かれている。

「そっかぁ……」

「あ、探しに行かないでね? 外危ないから」

「うん……。これセーレさんのご飯?」

 シオンがサラダに視線を落とす。

「うん。あいつがサラダオンリーとか初めてみたよ。まぁ、俺も食欲ないから似たようなものだけど」

 と、目の前のオニオンスープとパンを見る。

「セーレさんも、戦うの嫌だったのかなぁ……」

「うーん……そこは、なんとも。モカの言葉の方気にしてるかもしれないし……」

「ああ、うん。そうかんもね……。レオさんもありがとう。二人には嫌な役回りさせちゃったね……。こっち来ないようにしてくれてたのは、モカちゃんもわかってたんだけどね……」

「セーレはコミュニケーション不器用なとこあるからなぁ」

「うんうん。見てると可愛いなと思うけど、こういう時はこじれちゃうねぇ」

「セーレは可愛いのか」

「レオさんも可愛いよー」

「可愛いと言われると複雑な男心です」

「ああ、ごめんねー」

「そうだ。飲みます?」

「少し飲もうかな……まぁ今日は酔わなさそうだけど……」

 シオンも気丈に振舞ってはいるが、やはりいつもより元気がない様子だ。



 翌日、食堂で顔を合わせると、モカが頭を下げる。

「セーレさん、昨日はごめんなさい」

「はい。大丈夫です。もう気にしません」

「いや、そこは気にしておいてほしいような気も」

「謝罪をいただいたのであれば、それでよいと思いますが」

 また何か拗れそうな気配を感じて間に入る。

「はいはい、ストップ。仲直り。OK?」

「う、うん」

「はい」

「じゃー。厩舎でクエ報酬とは別の馬車売ってたから見に行かないか?」



 そう言って厩舎に来たものの。

「ボクはこのプリンセス馬車、一歩譲っても貴族風のやつがいいっす」

「オレはこのチャリオットがいいです」

「それ可愛くないじゃないっすか~!」

「乗るのに可愛さは必要ないと思います。こちらの方が移動速度も速いですし、物理装甲と魔法装甲に加えて弩砲付きですよ」

「そんなの買って一体どこに向かうつもりっすか! 屋根ないし、それにめちゃくちゃ値段するっすよそれ。10Gとか頭おかしいっすよ!」

「金はオレが出すので問題ありません」

「ほんっと、セーレさん性能厨っすよね! 少しは見た目も考えた方がいいっすよ!」

「いやいや、それを言ったら見た目もこちらでしょう?」

 二人のやり取りを眺めながらシオンと一緒に、はぁ~とため息をつく。

 俺としては、フリルもりもりの馬車よりはチャリオットの方がいいなぁとは思うけれども、ここでそれを主張しても、さらにこじれてしまいそうで頭が痛い。


「まぁ……元気になってよかったねぇ」

 シオンがこそこそと話しかけてくる。

「それはどうだけど……」

「ちょっと! そこの二人はどっちがいいっすか!?」

「ひゃいっ!?」

 巻き込まれてシオンがびくりとする。

「えええと、私は……」

 シオンがチラチラとこちらに助けを求める視線を送ってくる。

「そうだなぁ……、両方買って交互に使えば?」


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