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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第二章 世界変容
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5話:リザードマンの野営地

 盾である俺を先頭に、次にセーレ、シオン、モカと続く。

 リザードマンの野営地と記された場所は、名前の通りトカゲの亜人モンスターが出るところだ。民族的な模様が施されたテントがいくつか見え、その周囲にリザードマンがいる。

 昔は低レベル狩場ではあったが、一度リニューアルされてレベルが上がった狩場だ。


「川沿いは敵が多いので、もう少し山沿いを行った方がいいですね」

「了解です」

 セーレの言葉に頷いて、周囲を警戒しながら歩みを進める。

 その時、ガサっと前方で何かが動いたので盾を構える。

 しかし、それっきり音はしない。

「見てきます」

「えっ、ちょっと」

 すっとセーレが前に出て歩いて行く。

「うーん、何も……ああ……リスでした」

「そ、そっかー」

 こういう時、真っ先に出ていくべきなのは俺だろうに、と少し落ち込む。


 それからしばらくは何事もなく進んでいけたが、進行方向に柵が張り巡らされているのが見え、警備のリザードマンが決められたルートで何匹か歩いている。

 山を登れば迂回できそうではあるが、傾斜がきつくて難しいだろう。転落したら敵の真ん中に落ちてしまう可能性もある。

「俺が邪魔そうなヤツ一匹ずつ釣ってくるんで、シオンさんはモカの近くから離れないでください」

「はい」

「ボ、ボクが守るっすからね!」

 モカが杖をぎゅっと握りしめる。

「じゃ、じゃー。行ってきます」

 大丈夫。レベルは少し高いけど、昨日絡まれたバジリスクよりは小さいし怖くない、怖くない。今のレベルなら大丈夫。と、スキルを使う。


「セイクリッドチェーン!」


 突き出した右手から光り輝く鎖が放たれて、リザードマンを絡めとって目の前に引き寄せる。自分でスキルを使っておきながら、目の前に引き寄せられてくるのは怖くて、一歩下がってしまった。

「ギギャ!」

 すぐさまリザードマンが槍でついてくるので盾でガードする。ギンッとはじく音がして、攻撃を防ぐことができた。

「はっ」

 リザードマンの背後からセーレが斬りかかって一太刀浴びせれば、それだけでリザードマンのHPは半分以下になっている。

 こちらは攻撃を防ぐことに集中すれば問題なさそうなので、次の攻撃に備えて盾を構えるがそれより早くにリザードマンのHPは尽きて、ばたりと地面に倒れる。

 リザードマンからは緑色の血が滴り、死体と血の臭いがその場に残っている。

「ちょっと気持ち悪いな……」

 死ぬ瞬間、大きく目と口を開いて倒れたリザードマンの顔が脳裏に浮かぶ。

「うぇっ、何この匂い」

 後ろから来たモカが死体を覗き込んだかと思えば、すぐに目を逸らして距離を取る。嫌な臭いを放つ死体はしばらくすると消えていったが、まだ鼻の奥に匂いが残っているような不快感がある。


「まぁ……油断しなければ余裕そうだな。あっ、もう一匹くるから下がって」

「おっす」

 先ほどと同じようにもう一体処理すると、シオンの身体が光り輝く。

「レベル上がったっすか?」

「そ、そうみたいですね」

「ふぅん……経験値ペナとかないのでしょうかね」

 セーレがしげしげとシオンを見つめると、シオンは恥ずかしそうに俯く。

「ちょっと行ってきます」

 言うが早いかセーレが近くのリザードマンが大量にいるテントに駆け出す。


「えっ、セーレさん!?」


 慌てて俺も追う。

「アサルトラッシュ!」

 セーレの突進攻撃でリザードマンがバタバタと倒れて、シオンのレベルアップの光のエフェクトが視界の端にちらつく。

「ギギ、シンニュウシャ」

 わらわらとセーレの周りにリザードマンが群がっていくが、それも範囲スキルで一網打尽にされる。

「わー、めちゃくちゃレベル上がるっすねー」

 背後からモカの声が聞こえる。

「な、なんか恥ずかしいですー!」

 顔を覆いながらシオンが言う。

「ドロップ品はないようですね」

 セーレがリザードマンの死体とインベントリを確かめながら言う。

「セーレさん、ちょっと……」

 周囲にはリザードマンの濃厚な血の臭いが漂っていて、吐き気がして手で鼻を覆う。

「行くときはきちんと相談してください。モカたちに攻撃いったら危ないし」

「……そうですね、すみません」

 そう言って、セーレが申し訳なさそうに戻ってくる。途中、セーレもさすがに血の匂いが気になったのか手の甲で鼻を塞いでいる。

 それからは、できるだけ敵の少ないルートを取りつつ、しかしすぐに倒せることがわかったので、ある程度は倒しながら進む。セーレはゲームと遜色ない動きで敵を倒していたが、俺の動きはまだぎこちないし、モカとシオンはおっかなびっくりという感じだ。

「この辺からは馬でよさそうかな」

 野営地を抜けて、平地が多くなったところで立ち止まる。

「ふぃー。緊張したっす」

 モカが伸びをする。俺もどっと疲れた気がして、深呼吸をする。心なしか空気が美味しく感じる。

「すみません、足手まといになってしまって」

「大丈夫、大丈夫。ボクも何もしてないし……」

 馬を呼び出すと、どこからともなく馬が走ってきて目の前に止まる。

「それじゃ、行きますか」



 馬を走らせて一時間ほど。

「お腹すきません?」

 モカが切り出す。

 リザードマンを倒した直後は食欲の欠片もなかったが、時間が経って落ち着いた今、そう言われるとお腹が空いてきた気がする。

「そうだな。休憩がてらどこか……。ああ、もう少し行くと関所だな。そこで食べるか?」

「うっす」


 少し馬を走らせると関所が見えてくる。入口にはNPCの兵士が二人。

 特に何も言われずに関所の中に入って馬から降りて、兵士たちの詰め所の机と椅子を拝借する。兵士たちは気にした様子がまるでないのはゲームの名残だろう。


 買ってきたサンドイッチを机に広げて、食べ始める。

「んー、そういえば水とか買わなかったっすね……」

「うん……水分欲しいよな」

「確か、商人いたと思うので、オレ買ってきますね」

「あ。俺も行くよ。二人は待ってて」


 セーレを追いかけて広場に行くと、セーレがため息をつく。

「疲れました?」

「ああいえ……。後衛見ていなかったなと思いまして」

「この状態だと後ろの確認難しいよな」

 いちいち振り返って確認をしていては、攻撃をモロに受けそうだ。

「マリンがいればよかったのですが……」

「そういえばマリンさんと仲いいですよね」

「まぁ、昔からの付き合いです」

「リアル繋がり?」

「ええ」

「そうなんですか。一緒にゲームできるリアフレいるの羨ましいです。それにしても……思ったより身体動きますよね。鎧邪魔になるかなと思ったんですけど」

「そうですね……。どれくらい動けるのかな」

 セーレが立ち止まってから、ジャンプをする。

「おー」

 軽々と俺の身長より高く飛ぶので、俺も真似してみるが、セーレほど高くは飛べなかった。それでもリアルよりはよほど高く飛べた。

 セーレは開けたところでバク転を数回してから、さらにひねりを加えた二回転のバク宙のようなことをして着地をする。まるで曲芸だ。

「へぇ……。これは面白いですね」

 セーレが口元に微かに笑みを浮かべる。

「俺は……そこまでは無理かな……」

 ステータスの差なのか元の身体能力の差なのか、先ほどのジャンプのことを考えてもセーレほど動ける気はしなかった。


 そして、身体を動かすのはほどほどにして、NPCの商人の前に到着する。

「飲み物は水、牛乳、エールですね」

「とりあえず、エールはないよな。サンドイッチだし牛乳でいいかな」

 苦手だと言われたら水を買って来ればいい。大した金額ではない。


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