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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第五章 最終決戦
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8話:協力者2

 翌朝目が覚めて部屋に行くと、クッキーとリコリスがお茶を飲んでいる。

 エリシアとリコリスはこちらに泊まっているとのことだ。

「おはようございます」

 俺が挨拶すれば二人とも返してくる。

「二人とも、朝早いですね」

「おじさんなので」

「わたくしは、早寝早起きをモットーにしておりますので」

 リコリスは、よく自らのことをおじさんと言うがどれくらいなのだろうか。聞くのも野暮なので聞きはしないが。

「リコリスさん、サポートしていただいてありがとうございます」

「ふふっ。久しぶりのオフィスワークという感じで楽しいですよ」

 リコリスが微笑む。いや、それは楽しいのだろうか。

「もう俺はリアル戻っても、仕事のやり方忘れてそー」

「ああ、そうですね。ぼくも、もう会社のPCのパスワード思い出せません。情シスに土下座しないと」

「いっそ転職しようかな……」

 それほど職場環境がいいわけでもないので、今ならなんだか転職も前向きに考えられる。

「ぼくのところ、口効きましょうか? ……戻って、ぼくの席あったらですけど」

「はははっ。もしもの時はお願いしますね」

 リコリスと話をしていると、クッキーがちらりと置時計を見る。時間は午前九時だ。

「そろそろ手紙の届く時間でございますね」

 そう言うと、クッキーがギルドハウスの外に出て行って、しばらくして手紙の束を手に戻ってくる。

「手紙って、朝九時なんだ?」

「朝九時と午後三時の二回でございます」

 普段、手紙が届くことはあまりなかったので時間は気にしたことがなかった。平時は、マリンとシオンが利用している程度だった。

「何の手紙ですか?」

「ターハイズからの進捗報告と、遠方からの参加表明ですね。こちらは、すぐには行けない人などから送られてくることが多いです。今日は質問などはありませんね」

 クッキーが手紙の内容を見て、ボックスに振り分けていく。

「おはようございます」

 セーレが部屋に入ってくる。

「もう、仕事されているのですか?」

「わたくしのことはお気になさらず」

「一応始業は十時からです」

「始業……」

 リコリスの言葉を反芻する。久しぶりに聞いた言葉だ。

 俺とセーレが朝食を食べていると、モカがマリンとエリシアに引きずられながら部屋に入ってくる。

「おはよう。モカー、お姉さんたちに迷惑かけるんじゃありません」

「ふぁーい」

 モカたちも朝食を取り終わると、クッキーとマリンがギルドハウスの外に出て行って看板などを配置していて、ギルドハウスの玄関の扉を開けた状態で固定する。

「モカちゃんは一緒に受付ねー。セーレとレオくんは、これ掲示板に貼ってきて。あと、大聖堂の看板もお願いね」

 渡された紙は掲示板に掲載する物で、現在の参加者人数と、昨日決めたパーティーマッチングの案内だ。

「看板は雑貨屋に売ってるから、それ買って適当に書き込んで」

「了解」


 ギルドハウスを出てセーレと二人で歩いて行くと、掲示板の周囲にはチラホラと人がいる。更新内容が気になって見に来ているのだろう。

 古い掲示物を剥がして、新しいものを貼る。

「あっ、主催の人だ! 頑張ってくださーい」

「うん、ありがとう」

 笑顔で手を振って、雑貨屋に行く。

「看板……いくついるかな」

「んー。6で」

 セーレに言われた数を購入して、大聖堂に向かう。

「えーっと……看板に文字ってどう書くのでしょうか……。彫る……?」

「とりあえず、彫るのはセーレがやると壊れそうだからやめて」

「では……」

 セーレが手持ちのペンで書いてみているが細いのでイマイチだ。色も木の色に溶けてしまってよく見えない。

「マジックとかないもんな。でもギルドの前の看板には書いてあった……あー、ペンキかな」

 二人でまた雑貨屋に行ってペンキを買ってくる。よくよく見れば看板のすぐ横にペンキが置かれていたのでセットで買えという話だったのだろう。ペンキの他にも木炭やチョークが置かれていた。

 木の看板に白いペンキでセーレが文字を書いていく。

「書きにくいですね……」

 そう言いつつも読みやすい楷書で、盾、ヒーラー、バッファー、近接、弓WIZ、召喚と書いていく。

 そして、できた看板を聖堂の内側に等間隔に並べて眺める。

「そういえば、掲示板に貼ったのと同じ案内、ここにあったほうがいいよな……」

「そうですね……」

 二人でまた新たに看板を買いに行って、それに掲示板に掲載したものと同じ内容を書いた紙を貼っておく。

「俺たち要領悪いな……!」

「こんな作業したことないですし……」

「いやー、それにしても昨日皆がしっかり対応してくれてて、主催なのに大したことしてないなーって思ったよ」

「どーんと構えていればよろしいのでは」

「そうかなぁ……」

「主催が自信なさそうにしていては周りが不安になるでしょう」

 話していると大聖堂にポツポツとプレイヤーが入ってきて看板を眺めている。

「あっ、初回は12時からでーす」

 プレイヤーたちは返事をしつつも看板の前に座っていく。

 時間はまだ11時頃だ。

「うーん、12時過ぎまで様子みてく?」

「そうですね」

 看板から少し離れたところに立って、二人で集合場所を眺める。

 しばらくすると新たに大聖堂に入ってきたプレイヤーが、俺の前にやってくる。

「あの、レオンハルトさん。パラの装備のことで相談したいんですけど、いいですか?」

「はい」

 俺でわかるといいのだが。

「強化を防具とアクセで迷っててどっちがいいかなって。あと、スキルの強化も」

「……たぶん魔法はこないと思うから魔法防御は無視して、防御力上がるもの重視した方がいいと思います。でも、つけられるなら火耐性はつけておいた方がいいかもしれません。スキルは緊急回避系で効果時間伸ばせるタイプがいいと思います」

「ありがとうございます!」

 プレイヤーが列に戻って行くのを見て、セーレに小声で聞く。

「……合ってた?」

「ええ、いいと思いますよ。各職の強化の方向性も案内出しておくといいかもしれませんね」

「そうだな。でも、掲示板いっぱいになっちゃいそうだな……」

「フレイリッグ用に増設すればよろしいのでは。コルドは掲示板増やしていたのでいけるでしょう」

「そうか。帰ったら相談するか。……ところでさ、セーレ」

「はい」

「お前、もうちょっと表情柔らかくできない? びびってそうな人いるんだけど」

 腕を組んで無表情に他プレイヤーを眺めている姿は、どことなく冷ややかで威圧感がある。

「オレにびびっていてはフレイリッグ討伐できませんよ」

「協力してくれる人たちなんだから、ね?」

 俺の言葉にセーレが少し思案してから、バイオリンを取り出して曲を奏で始める。

 ゲーム内で使われていたカーリスの街の曲だ。

 軽快なリズムの賑やかな雰囲気の曲調で、あれも今思えば主旋律はバイオリンだったのだろう。久々に聞くと懐かしさがある。パーティー希望者ではなさそうなプレイヤーも音を聞きつけて大聖堂を覗きにくる。

 セーレは、ゲーム内では無限ループだった曲のループを二回繰り返すと、最後をアレンジして締めて、お辞儀をして微かに微笑む。

「どうぞ、時間までごゆるりと」

 その場にいた皆から拍手が巻き起こる。観客は30名程度だったが、もれなく拍手をしている。そして、プレイヤーが一人看板の列から離れて歩いてきて、セーレの前に来る。

「……セーレさん、ベルセルクのことで相談したいのですが……いいですか?」

「はい」

 緊張した様子のプレイヤーは小さくガッツポーズを作ってから、セーレに質問していく。

「もうちょっとで92で、92装備用意はできてるけど、強化はできてなくて……。強化のアイテムもあまり売ってないですし……。90装備で行った方がいいと思いますか? あと、武器と防具どちらを優先しようかなと」

「今回は銃や大砲を使うこともあると思いますので防具優先で、装備の移行は強化状況にもよりますが、属性耐性だけでも上げられるなら92の方がいいと思います。強化アイテムはデイリーの配達クエでもらえることがあるらしいので、そちらもやってみてもいいかもしれませんね」

「は、はいっ。あ、あとスキルのことで……」

 プレイヤーの質問にセーレがすらすらと答える。しばらくすると他のプレイヤーもセーレの近くに寄ってきて、自分も相談に乗ってほしいと話し始める。受け答えが丁寧だったのを聞いて、相談したくなったのだろう。セーレもそういう話は苦ではないはずだから、なかなか饒舌だ。

 やがて人が増えてきて12時になる。集まった人数は、40名くらいいるだろうか。案内を出した時間を考えると、思ったより多い。

「お集りいただきありがとうございます。初回なので一応説明しますね」

 集まったプレイヤーに対して、掲示板に掲載していた内容の一部を改めて説明する。

「では、パーティーリーダーはバッファーの方お願いします。行き先で募集して手上げた人を前から拾っていってください。フルにせずに6人で、端数出たら最終的に空きのあるパーティーで回収していってください。盾、バッファー、ヒーラーは基本的に一人まで。パーティー組めたら、一旦列から離れてください」

 俺の言葉に一番先頭のバッファーが立ち上がって、パーティーを作っていく。

 編成はそれなりにスムーズにいって、パーティーが6つできあがる。

「パーティー入ってない人いませんかー?」

 声をかけるが、特にいないようだ。

「では、皆さんお気をつけて」

 そう言って、大聖堂から出発していくプレイヤーを見送る。


 ギルドハウスに戻ると、見知らぬプレイヤーがちらほらと出入りしている。

 ギルドハウスの前には看板が、ギルドハウスに入ってすぐのところは長机が一つ置かれて、マリンとモカが座っている。その奥の机にはクッキーとエリシアがいて、書類の整理をしているようだ。

「ただいまー」

「お帰り。遅かったね」

「ああ、大聖堂でパーティー編成見てて。あそこも、誰か進行を配置した方がいいなー。今日は、俺とセーレで見ておくから14時の回も行ってくるね」

「りょうかーい」

「そっちはどう?」

「朝のピークは去ったよー。次のピークは十五時前後かな……。他から移動してきた人がだいたいそれくらいにくるんだよね。さて、そろそろご飯交代で食べようか。モカちゃん先食べてていいよー」

「はいっす!」

「モカ、きちんとできた?」

「最初はてんぱったっすけど大丈夫っす!」

「お食事は奥の部屋でお願いします」

 クッキーに言われて奥の部屋に移動する。


「ふあーっ」

 モカが伸びをする。

「疲れた?」

「まぁ、そうっすねー。でも人来てくれるのは嬉しいっす。そっちはどうだったっすか?」

「こっちも初回にしては思ったより人来てて39人だったな」

「受付忙しいのはあと二、三日くらいかなーって言ってたっす」

「他の街の掲示板も、たまに情報更新しにいった方がいいだろうな」

「そうですね。ウィンダイムがそのまま貼ってきてくれればいいのですが」

 想像してみると愉快な姿だが、あの図体でできるとは思えない。

「それは無理だろ。チラシ撒くくらいならできるかもしれないけど……」

「あれ、そういえばウィンちゃんは今どこにいるっすか?」

「カーリスの城の中庭に置かせてもらってる」

「そうっすか」

 食事をして、また14時に大聖堂に様子を見に行って、またギルドハウスに戻ってくると、タケミカヅチたちが到着していた。

「おっす」

「こんにちはー」

「なんか困ってることあったら手伝うよ~」

 アンネリーゼの言葉に、大聖堂のパーティーマッチングの件を話すと快く引き受けてくれた。

「宿は決まってます?」

 いつもコルドではお世話になっているので、決まっていないならうちでと思って切り出す。

「おう。アキヒロんとこ泊まるから問題ないぜ」

「アキヒロ……」

 確かアキレウスの本名だ。深く追求せずに適当に相槌を打つ。

「んじゃ、長居しても邪魔なりそうやし、またね~」

「はい。ありがとうございました」



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