俺の周りは変人ばっかりです 4
ウェディルとの演技が終わった後、俺は少しでもリディウス様との接触を避けるため、
庭掃除を命じられた。
いい天気なのでちょっと鼻歌を歌いながら掃除していた俺。
歌でも歌っておかないと余計な事を考えてしまうのだ。
いや、歌っていても考えてしまう。
先程、俺はウェディルにくっそ恥ずかしい言葉を耳元でささやかれすぎて今、変にドキドキしている。
そして気が付くと先ほどのなんかエロイウェディルの発言を思い出してしまうのだ。
(くそっ!!あれがモテる男か!!)
手慣れているといったほうがいいのだろうか。
なんかもう、めちゃくちゃ恥ずかしい程愛を囁かれた。
全部嘘だとわかっててもときめいてしまう自分。
悔しくてたまらなかった。
「あらあら、顔を真っ赤にして、初心なのね。」
「っ!!」
聞き覚えのある声が背後から聞こえてくる。
俺は驚き振り返ると、そこには予想していた人物、リディウス様の姿があった。
「リ、リディウス様、どうしてここにっ……。」
談話室から出さないようにすると先ほどウェディルはいっていた。
にもかかわらず、今庭に一人で来ている。
というか、俺にわざわざ話しかけてくるって事は結局さっきの作戦は失敗したという訳だ。
無駄もいいところだ。
「ねぇ貴方、歳はいくつ?」
「え?あ、14です。」
「あら意外。成人していたのね。」
(え…………?)
もしかしてこの世界では成人が日本よりはるかに速いのだろうか。
俺が成人している歳だとは全然知らなかった。
でも、驚いていては何故そんな事も知らないの?といわれかねない。
俺は頑張って平静を装う。
「う~ん……おかしいのよね。絶対ディルのタイプじゃないのに。」
俺とウェディルの関係が疑わしいのか訝しげな表情で俺をじろじろ見てくるリディウス様。
まぁ、そもそも俺、男ですしね。
とは言えないのがなんだかなぁ。
「……自分のだって証までご丁寧につけてくれちゃって。
…………ふふっ、そうだわ!良い事を思いついちゃった。
ねぇヒナタ。貴方、私の友達になりなさい。」
「…………へ?と、と、友達、ですか?いやいや、そんなの恐れ多いです。」
しかも友達になればウソがばれる確率が上がるだろう。
絶対なるべきではない事は瞬時に判断できた。
「あら、貴方に拒否権はないのよ。だって私は貴方より身分が上の人間。逆らえると思わないで?」
(お、横暴!!)
というか、確かに身分は上かもしれない。
仮にも天使様であられるわけだし。
だけど、それでも俺の主ではないわけだし、拒否権くらいあるはずだ!
と、言いたいが、この世界では違うのかもしれない。
「わ、解りました。」
「ふふ、素直でよろしい。特別に私の事はリディと呼ばせてあげるわ。ちゃんとリディと呼んでね。」
「は、はい、リディ様。」
「……ちょっと他人行儀だけれど、まぁいいわ。ではさっそくだけど、今晩はここに泊まるから、今晩私の部屋に来て。
一緒にお酒を飲みましょう。」
「え!?あ、いや、お――――私はお酒は……」
正直、この世界で成人していても日本では成人していなかったわけで、お酒なんて飲んだことがない。
飲めるはずがない。
「あら、私のお酒が飲めないというの?」
(う、うわぁ……なんか漫画とかでよく聞くセリフだ……。)
実際、現代日本でこの発言をしたら呑ハラとかいわれるやつだろ、これ。
でもそんな考えきっとこの世界にはない。
更に、友達といえども上の身分の者に逆らえないのなら……
「わ、解りました。でも、私はそんなに飲みませんよ?」
了承するしかないのだろう。
「えぇ、構わないわ。それでは夜、二人きりで。」
品のある笑い方をして俺に背を向けて歩いていくリディ様。
二人きり、という言い方がなんかちょっとやらしく感じた。
色気がむんむんってタイプじゃないけど、ところどころに色気がにじみ出ている。
大人の女性って感じだ。
(怖い人じゃなかったら結構タイプかも……。)
でも、怖い人ならしいので警戒はしておかないと。
そう思いながらも俺は庭掃除を再開したのだった。