お引越し準備!
「大丈夫?痛いところはない?」
じめんが大きくゆれて、つくえとイスがガタガタと音を立てました。
と、同時にルキウスさまは、まもるかのようにプリューラの上におおいかぶさり、ゆれているあいだ中、ずっと『ぎゅっ』としてくれました。
「はい!プリューラはいたいところはありません!ルキウスさまも、だいじょうぶですか?」
「ふふ。僕も痛いところはないよ。大丈夫。心配してくれて、嬉しいよ。ありがとう。」
と、にっこりほほえまれて、そっとプリューラからはなれました。
ルキウスさまととーちゃん、お兄たちが、海からお舟で帰ってきたあと、ルキウスさまはまんめんのほほえみとやらでプリューラのおうちにかけこみ、そして、
「やったよ!僕、父君に認められたよ!」
とおおよろこびしながらプリューラをぎゅってだきしめてくれました。
そして、あとから帰ってきたおにいたちに、ルキウスさまごとどうあげをされました。
ほんとうに、どうあげが大すきな一家です。
プリューラはしょっちゅうどうあげされているので、たまには上げるがわをやりたいとおもっていますが、あまりにもルキウスさまがうれしそうなので、プリューラもつられてえへへです。
そのあと、はなしあいをして、ルキウスさまがローマに帰るまでの1週間、1泊ずつ、することになりました。
わが家と、ルキウスさまのお家を、交代ごうたい、1泊ずつです。一夜をともにするというやつです。
そして今日からさっそくルキウスさまのお家の番です。
プリューラは、とうとうねんがんの、『先生にじゅぎょうを教わる』です!
先生は、ギリシアからきた先生で、なんとドレイさんだそうです。でもでも、ワルイコにはおしおきをする『けんげん』とやらをおもちで、ワルイコにしていると、手の甲をぴしーっとムチでたたかれるそうです。
こわいです。
なので、プリューラは、ひっしで先生の話を聞き、本をみつめ、メモをとりました。
今のところはぴしーってされてません。
そして、じゅぎょう中は、もう1人大人の方がいらっしゃって、緑色のねんどをコネコネしてます。プリューラ、あながあきそうなほど、見つめられて、はずかしはずかし、です。
でもでも、はずかししてると、先生のお話を聞けないので、そのねんどコネコネの大人の人はムシすることにしました。
ムシは、ワルイコなので、ぴしーってされないか不安だったのですが
「うふふ。心配しなくても大丈夫。彼は、プリューラの胸像をつくるためにココにいるだけだから。」
とルキウスさまがおっしゃるので、頑張ってムシ、ムシです。
そして、集中しておべんきょうしているとき、カタコトとつくえのうえのものが音を立てたと思ったあと、グラグラとお家が地面ごと揺れたのでした。
「それにしても、最近多いね、地震」
「本当におおいです。でも、こんなにゆれたのは初めてです。」
「そっか。僕も初めてだ。ということは、ここ8年はこんな事なかったんだろうね。怖かったね?」
「はい……。」
プリューラが、あまりにもおびえたので、ルキウスさまはやさしくアタマをポンポンしてくれました。
「もうおさまったから、大丈夫。きっと、大地の神がなにかヘソを曲げてらっしゃるんだろうね。勉強が終わったら、一緒に神のご機嫌を伺う祈りを捧げようね。」
と、言うと、ルキウスさまはもうさきほどのつづきのおべんきょうに取り掛かられました。
ちなみに先生は、つくえの横で、まだコシをぬかされています。
先生もビックリするくらいのゆれだったのですね、と、ねんどコネコネの人の方も見ると、なにごともなかったのようにまだコネコネしてます。
おそるべき集中力なのです。
そんなこんなで、午前中はみっちりとおべんきょうをし、おいしいおひるごはんをたべ、午後はルキウスさまは剣のれんしゅう、プリューラは見学をしたあと、ふたりでかけっこやボールけりをして遊び、よるごはんをたっぷり食べて、夜はぐっすり眠りました。
プリューラ、食べてねて、ぷくぷくのブタさんになりそうです。
それに、ルキウスさまのおうちのみなさんは、ひっこしじゅんびにおおいそがし、です。
あれやこれやを『こおり』とよばれるプリューラがすっぽりはいってもまだまだよゆうがある大きなハコに、どんどんとにもつをまとめています。
プリューラも手伝わなくていいのかと、ルキウスさまにお聞きしたら
「あれは僕たちの仕事じゃないからね」
とアタマをポンポンされました。
プリューラ、おうちのおてつだいできるです。
でも、お仕事じゃない、と言われれば、手は出せません。忙しそうなみなさんに、もうしわけなくてごめんなさいです。
そして次の日もおなじような1日をすごし、よるごはんの前におとぅがおむかえにきてくれたので、ダッコされてわが家へと帰るのでした。
わが家では、ルキウスさまのお家でのできごとや、勉強したことなど、お話することが、たくさん、たくさんです!
おにぃたちとわちゃわちゃしながら、いつものようにすごし、夜はルキウスさまのことをかんがえて、少しねむれない気持ちになりながら、ぐっすり眠り、そしてよく日の朝、お迎えの荷台付き馬車にのりこみ、またルキウスさまのおうちにお泊まり。
プリューラは、先生にべんきょうを教えて貰えることや、おいしいおいしいごはんをたくさん食べられることもうれしいし、たのしかったのですが、なによりルキウスさまといっしょにいられる時間がたっぷりできて、ルキウスさまと『けっこん』したら、これからずーっと、ずーっといっしょにいられるのだと、うれしくて、たのしくて、くすぐったくって、ワクワクどきどきと、むねがあったかでシアワセがたぁっくさんなのです!
プリューラそっくりな胸像もいつの間にかかんせいしていました!あまりにもお上手でびっくりです!これを今度はローマに持ち帰り、銅像や、大理石をつかった像にするそうです。手がこんでます。びっくりです。
そしてあっという間に1週間がすぎ、とうとうローマへとたび立つ、当日になったのでした。
その前日の夜は、わが家で、おにぃとおとぅといつもよりごうかなごはんをおおわらいしながらたべ、みんなでまるまってねました。
これで、しばらくおにぃとも、おとぅとも会えなくなるなんて、ちっともかんがえず、ただただおにぃたちに『ぎゅっ』ってされて、押しつぶされて、でもいつまでもねむれないよと、いつまでもはなしつづけ、やがていしきが落ちるかのようにねむったのでした。
次回、最終話の予定です。
ハッピーエンドにはなりません。すみません。




