前払いのご褒美タイム
古代ローマ時代を背景に5歳の女の子プリューラと8歳の貴族の男の子ルキウスが頑張ってます。
2人は両思いです。
プリューラは平民なので、普段は8人家族で雑魚寝です。
両思いでも生活習慣や価値観、世界観にはヅレがあるようです。
※※ルキウスside※
(パチッ)
目が開いた。
今日もどこも痛くない、辛くない
幸せな目覚めだ。
今日も、というより、今日は極上の眠りだった。
そんな気がした。
いつもより、安心して深い眠りについていた。だから昨日の体の疲れとか、一切感じない。
剣術を習い始めた初日なんて、次の日筋肉痛に襲われて、身体中が痛くって...
何となく寝心地というか、居心地というか...、が良すぎて、もう一度目を閉じ、そんな物思いをしてふふっと笑った。
そもそも、剣術を習い始めたのだって、あの子を守りたいから。
強くなって、あの子を守りたい。
強くなって、父上に認められたい。
強くなって、戦場で手柄をあげて、1人前と認められて、正式にあの子と祝言を...。
って思うと、自然と剣を握る手に力が入った。
もう少し、頑張れると思えた。
もっともっと練習できる。
基本動作は頭に入っていたから、剣を受け流すのは簡単に出来た。あとは自分の体が動きをしっかり覚えること。もっと体力を、筋力をつけること!
目標があるって、わかりやすくて好きだ。
ぼくのすべての行動の原動力が、あの子になっちゃってる。
そう思うと、ちょっと情けないな、と思うんだけどもう仕方ない。
だって事実なんだから。
昨日、夕方。
ぼくが剣術を習っているのがあの子にバレた。
『きみのために強くなりたい』
なんて言えば聞こえはいいのかもだけれど、どうにもみっともなく感じて、あの子には体を鍛え始めたことを言えないでいた。
だって、自分が今はひ弱なんだって、公言してるみたいで...。
プリューラは時々、ぼくを尊敬の眼差しで見てくれる時がある。
こんなに何にもできないぼくなのに、
「すごい!」
とか
「かっこいい!」
とか
「キレイだ!」
とか
「頼りになる!」
とか
「さすが大人の男!」
とか
その他もろもろぼくをほめる。
思ったことをそのまま口に出してくる。
それがこそばゆいやら気持ちいいやら、照れるやら嬉しいやらで、とにかく他の人に同じことを言われるのとは、全然違う気持ちになるんだ。
(あー...幸せだー...)
あの子がぼくの部屋の2階で寝ている。
こんなに近くに居ると思うだけで、ぼくはこんなに幸せになっちゃう。
ぼくの今までの人生がウソみたいに感じる。
そう、きみがぼくのそばで、まるで寝息をたてて寝ているようなこの距離感。
むしろ寝息の幻聴が聞こえるくらい。
あの子がぼくのプロポーズを受けてくれたら、ローマに連れて帰ったら絶対一緒に寝るんだ。
目が覚めた瞬間、目を開けて朝一番にあの子の姿が目に入ってきたら...なんて想像すると身悶える。
(あー...ダメだぁ、幸せ...)
ぼくには、
『ふられる』
という選択肢はないと、もう思い込んでいた。
だって昨日、剣術の練習がバレたとき、
「プリューラ、
こんなすてきなだんなさまと
けっこんできてうれしいです」
ってあの子が言った。
思わず聞き返したけど、絶対言った。
もう、間違いなく言った。
だから、ぼくは余裕をもって、あの子が大好きなぼくの像
『大人のぼく』を演じて待てばいい。
なんて思わず顔が赤くなりながらも、どこかむず痒くって2度寝なんてとても出来そうもない、と体を起こし、まだぼーっとした視界で部屋を見渡す。
(あれ、ぼくのベッドってこんなに狭かったかな...?)
と、目を擦る。
ぼくの横には、黒いなにかがある。
それはモゾモゾっと動いた。
(...?)
じーーっとそれをみる。
(なんだ、プリューラか。)
(ぼく、プリューラが好きすぎてとなりにプリューラが寝ている幻覚まで見ちゃうんだ)
ってふふっと笑った。
それにしても、よく出来た幻覚だ。
スースーと寝息といっしょにふくらむ腹と肩とか、もう本物にしか見えない。
人は恋に溺れると言うけれど。
って前も言ったけど、ぼくは溺れるどころかこれじゃ病気だ。
でも、病気だって構わない。
あの子を好きな気持ちは全部、否定しないと決めたから。
体の病気はお断りだけどね。
でも、せっかく見えてる幻覚だもの。
堪能してなにが悪いというのか。
きっと触ったら消えちゃうだろう可愛い可愛いプリューラの幻覚を、起こさないようにそっと見つめる。
何度見ても黒黒とした美しい髪。
不思議なことに、まつ毛も、眉毛だって黒い!
ぼくとは全然違うんだ。
この閉じたまぶただって、開けば真っ黒い瞳がそこに閉じ込められてる。
ぼくの蒼い目とは、見えてる景色も違うのだろうか。
そう思うと少し悲しい。
幻覚が消えないように、そっと触らないように、正面側に移動する。
寝ていても、楽しい夢を見ているのだろうかと思うほど、優しく微笑んでる。
この寝顔を守るためなら、きっとぼくはなんだってしちゃうんだろうなって、容易に想像がつく。
ご飯を食べさせた時は、後ろからハグを楽しんだ。
移動をする時は、手を繋いで横に並んで歩いた。
勉強を教える時も、横か後ろから。
こうやって、真正面に、それも無防備な状態でいると...
は、恥ずかしいものなんだね
ぼくの顔がかーーーっ!!と一気に熱くなるのを感じた。
顔というか、全身が、暑い。
ダラダラと、汗をかきそうなレベルで暑い。
なんだ、これ、と自問したいのだけど、そっちに思考が行かないほど、目の前のプリューラに釘付けで。
ちょっともう触っちゃおうかと思ってしまう。
そう思うと起こすまいとする理性なんてグラグラで、ぶっくり可愛い唇も、ツヤツヤの髪の毛も、小さな肩も、気になって気になって仕方ない。
これだけよく出来た幻覚だから、1箇所触ったくらいで消えたりしない。そう、だから大丈夫!
なんてよく分からない言い訳すら自分にしてる。
ぼくが1番触りたいのは...
そう、この髪。
プリューラの髪の毛を、そっと1束つまんでみる。
幻覚は、消えない。
ほっと安心するも、欲望は次々と襲ってくる。
このプリューラの可愛いツヤツヤ黒髪を、ぼくの指にクルクルと巻き付けてみる。
うわ、楽しいっ!
巻き付けた髪の毛を、ギュッと握って離すと、髪の毛ってクルクルってなるんだね!
それを何回も繰り返したら、極上のクルクルヘアになっちゃった!(1部のみ)
いままでストレートプリューラしか見なかったから、このクルクル巻き髪プリューラをまた正面からじっと見つめる。
髪の毛が顔に垂れ下がってきて、すごくかわい...。
ううん、美しいよ、プリューラ...
(あぁ、だめだ)
(プリューラが好き)
(好きすぎて胸が苦しい)
って本当はジタバタしたかった。
でもそれで幻覚が消えちゃったら悔しいから我慢はしていた。
じりっ...じりっと近づいて、コツンと頭をつけてみる。
プリューラにスリスリと頬を寄せる。
いつかのように、そっとまつ毛をかさねてみる...。
だけど、消えない幻覚に、調子に乗ってきたぼくは、だめだもーこりゃたまらん。というばかりに、プリューラに抱きついた。
「プリューラ、大好きだーー!!!」
「わー!何事ですかー!?」
「へっ?」
飛び起きた幻覚。
目を擦る幻覚。
開いた口から飛び出す言葉は幻聴...
「あ、ルキウスさま、
おはようございます!
今日もごきげんうるわしゅーですか?」
と、寝癖と、ぼくに付けられたクルクル巻き髪プリューラがにこぉっ!と極上の笑顔をみてた。
「あ、あれ?幻覚...」
「げんかん? ここからじゃみえません」
「う、うん、たしかに玄関はここからじゃみえませんね、じゃなくて!え?ここ。きみの部屋だった!?
ぼく部屋間違えた!?」
あたりを慌ててキョロキョロと見渡す
「ちゃんとルキウスさまの、
おへやのベッドです!」
「ほっ」
「ルキウスさま、おおあわて、
どうしたですか?」
「うっ...」
い、言えない。
プリューラの幻覚だと思って、寝顔を堪能しまくってたなんて
「いや、ぼく、うっかり、きみに夜這いをかけたのかと」
「よばい?」
しまった、夜這いより、寝顔が可愛かったって言った方のが大人ぶれた!!
痛恨のミスだ!
ああぁ、と頭を抱えた。
「よくわかりませんが、
よばい?ならプリューラがしました!
よる、1人はさみしです。」
「え?」
「プリューラはふだん。
はちにんでざこねです。
ルキウスさま、昨日はこっそり
ベッドに、もぐりこんで、ごめんなさい」
ってぺこりと、あたまをさげる。
そんな、仕草もすごくかわいい。
「あ、うん、どういたしまして...」
「ではまた、あさごはんどきに!」
って、
呆気に取られるぼくに気遣いなんて、一切みせずに、プリューラはトントントンっと螺旋階段を登っていく。
だから、その階段は夫婦じゃなきゃ使っちゃダメなんだってばって!
なんて焦るぼくの気持ちなんてお構いなしだ。
もう。プリューラってば。
って思っていたら、ぼくの部屋の扉がノックされた。
「ルキウスぼっちゃま。リーウィアでございます。もうお目覚めでしょうか」
「う、うん。今起きたところだ」
って気の抜けた返事をした。
「失礼いたします。
ぼっちゃま、部屋にプリューラが居ないのですが...」
(どきーっ!)
「ふぅ...。
ぼっちゃまは近頃表情が豊かになられて、それは微笑ましいことではあるのですが...。社交界では致命傷ですよ?」
「HAHAHA...
な、なんのことやら...」
「...ぼっちゃま?」
リーウィアが、ピシッと背筋を伸ばして、
ぼくの横から圧をかけてきた
「...はい」
「このリーウィアに隠し事が出来ると?」
「...おもいません...」
「プリューラはどこです?」
「部屋に帰っちゃいました...」
「...は?」
「その...さっきまで、ここで...」
「まぁ...!」
「プリューラの幻覚だと思い込んで、手出しもなにも...」
「...は?」
「...だって、可愛すぎて...」
「...ぼっちゃま?」
「......はい」
「ぼっちゃま!」
「はい!」
「察するに、プリューラと同衾なさっていたけれど、ヘタレだった、そういうことで?」
「なにもそこまで...」
「はぁ...」
「た、ため息まで!?」
「呑気なことですこと...」
「うっ...。」
「今日のプリューラの父親、プリウスとの対決は、上手くおやりくださいませね?」
「...が、がんばる」
「それではわたくしはこれで。お着替えは他の侍女を呼びますわね」
「...いや、1人で大丈夫。
プリウスの前で侍女に頼るわけに行かないから」
「...。
ふふ。かしこまりました。」
そういうとリーウィアは出ていった。
圧が日増しに強くなっている気がするんだけれど...。
まぁ、焦るリーウィアのきもちも分かるから仕方ない。
それより、リーウィアがなにか衝撃的なことを言った気がした。
なんだ...?
『察するに、プリューラと同衾...』
同衾!?
同衾!!!???
ショックを受けて固まるぼく。
既成事実とやらの最大のチャンスを逃したと言うことか...と。
でもまぁ、既成事実って、何をすればいいのか、イマイチ分かってないんだから、そっちを教えてもらったほうがはやいと思うんだけどなぁ...。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
BADENDが辛すぎて、小説書けませんでした。
どんなやねんですね
ルキウスが途中で暑くなってますが、当然です。子供の体温は暑いのです!それも、寝ている時は、メッサ体温を発してます!
というところをお察しいただけたら幸いです。
次はルキウスvsプリウス(プリューラ父)です。
プリウスは女性には弱いけど、男には横柄寄りです。
いいお父さんのはずでした。
さて、どうなるやら...




