百戦錬磨の手練手管
古代ローマを舞台に5歳の女の子プリューラと8歳の貴族の息子ルキウスが頑張ってます。
ルキウスはプリューラにメロメロです。
御屋敷の使用人たちは、ルキウスにメロメロです。
※2019.10.31の活動報告にのせた小話の続きとなります。
誘導で申し訳ないのですが、そちらを読んでいただいてからの方が楽しめるかもしれません。
読まなくてももちろん大丈夫な内容です。
よろしくお願いします
※ルキウスside※
(眠れない...)
ひとり自室のベッドに横たわった。
眠りたくても眠れない。目をつぶればあの子の顔が浮かんできて、胸が苦しくなって、目が覚める。
喉が渇いて調理場にいけば、使用人たちが全員集まってまた集会をしていた。
屋敷の主はぼくなのに。
いつもぼくは除け者で。
ゴロンと寝返りをうち、部屋の隅の屏の向こうの螺旋階段に目をやる。
あれをのぼったら、プリューラがいる。
きっと可愛い寝顔で、優しい寝息をたてているに違いない。
そんな想像をすると、微笑ましくって。
また胸が熱くなってきて...。
仰向けになって、真上に手を伸ばす。
この上に、あの子がいる。
プリューラが寝ている。
なんて幸せなんだろう。
「プリューラ...」
本当は名前で呼びたくない。
プリウスの娘。女って意味の名前なんか。
でも、それももう少しだけのこと。
プリューラが返事をくれれば、改名して
ぼくの女って名前に。なる。
はず。
(ぼくの女)
っ!
なんか恥ずかしい
って、布団替わりの薄布を頭から被る。
「はぁ...」
「プリューラ...大好き...」
と、壁に掛けた緑に染まった服をみる。
(楽しかったな、大笑い)
ってくすぐられたのを思い出す
(あんなに笑ったの、初めて)
プリューラと一緒にいるだけで、本当に幸せで、楽しいのに、あんなに大笑いして...
プリューラに触れられたところを、そっと自分で触ってみる。
不思議なことに、全然くすぐったくない。
...気持ちよくもない。
そして、ふと気がつく。
『プリューラ、百戦錬磨です』
って言った。
それじゃ、誰がプリューラを百戦錬磨にした?
あの可愛いプリューラに触って教えたのか。
それとも、手取り足取り...?
チリッと、胸を焦がすような痛みが走る。
ぼくの中の独占欲と嫉妬心がまたニョキニョキと顔を出す。
くっ。
誰なんだほんとに。
今目の前にいたら、殴り掛かるかもしれない。
なんて思ってびっくりして飛び起きた。
...ぼく、今なんて?
殴り掛かる?
そんな乱暴な自分を知らない。
こんなぼくが生まれていたから、プリューラに「ちょっとこわい」なんて言われたのかもしれない。
とにかく目が完全に覚めてしまって。
屋敷内を散歩しよう。
回廊から見える星空でも見るとしよう。
と、そっとドアを開けた。
大きな音を立てて、2階で寝ているプリューラを起こしたくない。
そっとそっと、部屋から抜け出した。
(今何時間なんだろう)
さすがに使用人たちも、もう寝静まっているようだ。
(あれだけ騒いで、みんな疲れたんだろうな)
って思わず苦笑い。
屋敷をぐるっと回って、回廊から見える星空は、本当に美しかった。
いつもの景色すら、綺麗に見える気がするのだけど。
この広い星空の下、ぼくはローマ出身なのに。
この地に来られて、プリューラと巡り会えた奇跡。
ぼくは本当に幸せで。
ついつい顔がにやけちゃうのを感じる。
そのニヤケ顔を誰にも見せたくなくて、手で覆ってたけど、どうせ隠しきれないのだから。
もういっそ受け入れようと思う。
星空を仰いで、手を合わせ、
(プリューラがぼくを受け入れてくれたら、ぼくはプリューラを生涯かけて愛することを誓います)
って星空に誓ったよ。
本気で思ってるよ。
こんな気持ち悪い髪色と白すぎる肌のぼくを、きみが受け入れてくれるのなら。
ぼくはきみ以外のだれもいらない。
きみだけを、永遠に...。
どのくらいの時間が経っただろう。
流石に、そろそろ眠くなってきた気がする。
部屋に戻ろうと、来た時とは反対方向から帰る。調理場の前を通る方。
(流石にもうだれも居ないだろう)
そう思ったから。
だけど、
調理場からは光が漏れていた。
中を覗くと、かまどの前でなにかを煮込むバエビウスの背中が見えた。
「まだ起きていたのかバエビウス」
「うわ、ぼっちゃん!
どうしたんですか、こんな夜中に!」
「うん、ちょっと眠れなくて...」
「そうですか...。
よかったらポスカをもう一杯どうですか?
それとも、薄めたワインでも?」
「ワイン?」
「ええ。あなたの初めてを俺に」
「なっ!!」
「いやいや、冗談ですよ。
ポスカ作りますね」
一瞬物凄く焦った。
プリューラとの会話を盗み聞きされてたんじゃないかって、疑うところだった。
まさか、バエビウスに限ってと思い直すまでにちょっと、時間がかかった。
「はい、ぼっちゃんどうぞ!
バエビウス特性ポスカです!」
「ありがとう。
うん、おいしいよ。」
バエビウス特性ポスカには、蜂蜜とお酢と、この地域の花が添えられて、ローマで飲むポスカよりもいい匂いがする。
ぼくもお気に入りだ。
ちびりちびりと口にして、少し眠気に襲われてきて。
ボーっとしてきた頭で、今日の話をしだした。
「ねぇ、バエビウス。質問してもいい?」
「はい、ぼっちゃん。なんなりと」
「バエビウスは、好きな人とかいたの?」
「そりゃー若い頃は色々とありましたよ。
ぼっちゃんほど情熱的ではなかったですが」
「ぼく、情熱的かな?」
「はは、ぼっちゃん無自覚ですか?
プリューラにお熱じゃないですか」
「うん...。プリューラ、大好き。」
「...!ぼっちゃん本当に可愛らしい」
「いや、可愛いのはプリューラだよ
プリューラが言うのには、ぼくはカッコイイんだって」
「はは!プリューラもよくわかってら!」
「ぼく、かっこいいかな?」
「そりゃもー。女どもはぼっちゃんにメロメロです」
「女ども...」
「はい!どこの女でもイチコロですよ」
「女どもなんていらないよ。
ぼくはプリューラがいいんだ」
「(キューン)」
「?なんの音?」
「さ、さぁ...」
一瞬静かになり、ぼくはまたゴクリとひとくちポスカを飲む。
バエビウスは鍋から手を離し、ぼくの前に座った。
「ぼっちゃんは本当にプリューラがお好きなんですねぇ」
「うん。好きだよ。本当に好き...。プリューラが居てくれると、気持ちも体もあったかいんだ。あのね、今日、ぼくはじめて大笑いしたんだ。」
「ぼっちゃんが大笑いを?」
「うん。あんなに大きな声で笑ったの、初めてなんだ。苦しかったけど、楽しかった」
「へぇ...。もう少し詳しく聞いても?」
「聞いてくれるの?」
「そりゃ喜んで!」
キラキラとした目でバエビウスをみる。
大人の付き合いじゃなく、本当に話を聞こうとしてくれてるのがわかる。
「プリューラってさ、凄いんだ。
百戦錬磨の達人らしいんだ」
「はぁ?」
「ぼくの弱いとこ、すぐ見つけちゃって、攻めてくるんだよ...」
さっきのプリューラを思い出して、ちょっとまた赤面する。
照れ隠しに手に持ったコップの中のポスカをクルクルとかき混ぜてみても、全然混ざらない。
でも、これを説明しないと、次の話にいけないから。
「ぼくの手の平から、手の甲から、さわさわって触れてたかと思ったら、徐々に腕を上に上がってきて、するって服の中に手を入れてきて...」
「...ごくっ」
「プリューラの中指で、這うように触れるか触れてないかくらいのギリギリのところで這わせてきて、ゾクゾクってしてる間に、反対の手は服の上からわしゃわしゃって、ぼくの体のあちこちを激しく...!」
「(ひえぇ〜)」
「右手と左手の落差が、それはもうっ...!脱力するは、くすぐったいは...!
触れられることに慣れてくると場所を移動してまた攻めてくるんだ。脇腹から脇の下からっ!それが、びっくりするくらい気持ちいいやらくすぐったいやらで。」
「ん?」
「その後、ぼくに覆いかぶさってきて、今度は道具を使うなんて、卑怯じゃない?」
「道具!?」
「プリューラの髪の毛でコチョコチョって...!」
「こちょこ...?」
「あと、耳に息をふーって...!ゾクゾクしたよ」
「あ、やっぱりそっちですよね」
「とにかく、嫌がるぼくを無理笑わせるんだっ」
「わらわ?」
「それをとめどなく連続でやられて、呼吸出来なくなるくらい攻めてくるんだよ。これって普通?こんなことする?」
「呼吸でき...なんて激しい...
う、うーん、プレイにもよるかもしれません」
「プレイ?おかげで腹筋が痛かったよ」
「腹筋?」
「それよりなによりさっ!ぼくがね、1番怒ってるのはプリューラに、だれがそれを仕込んだかってこと!」
「...話を聞くに、だいぶ手馴れてますよね」
「許せないでしょ?!ぼく、そいつを処刑したい」
「処刑!?物騒すぎます!」
「でも、そのくらい怒りがおさまらないんだよ」
「確かに、プリューラが5歳ってことを考えると、ちょっと早すぎますよね...」
「どうせなら、ぼくが教えたかった!勉強だってぼくが教えてるのにっ!」
「ははぁん。ぼっちゃん。自分好みに染めたいってやつですな?」
「違うよ。プリューラの初体験は、全部ぼくがやりたいの」
「!!!ぼっちゃ!」
「ぼくがプリューラの大笑いの初体験させたかったぁ!!」
机をドンっ!と叩きつける。
ビクッとするバエビウス。
「あー、それで、『きみの初めてをぼくにちょうだい』って話になったんですね」
「うっ。どこでそれを...」
「で、ぼっちゃんはプリューラになにをしたんですか?チューとか?」
「ちゅ...ききき、キスなんてしてないよ!」
「なんでですか。無理やりするくらいの方がよろこびますよ?」
「そうなのか?」
「こうね、女ってのは、ちょっと危険くらいの方が燃えるもんですよ」
「ふーん...そうなんだ」
「だからぼっちゃんも、つぎはプリューラにぶちゅーっ。と行っときましょう!」
「それは嫌」
「なんでですか。そのくらいやんなきゃヘタレですよ」
「ヘタレ…なんとでも言えばいいよ。ぼくは嫌だ。」
「えー...。なにか理由が?」
「...プリューラが、キス経験済みだったら、立ち直れないよ...」
「あー...。それは、確かに...」
意気消沈のぼくたち。
またぼくは、ポスカをごくりと飲んだ。
「それにしても、ぼっちゃんもちゃんと男だったんですねぇ」
と、ニヤニヤするバエビウス。
「ぼくは元から男だ!」
「5歳の女の子に組み引かれて気持ちいいことされてるようじゃ、男とは言い切りづらい気もしますがね」
「気持ちいい?」
「え?」
なんだろう、会話がなんとなく噛み合ってない気がする。
「とにかくぼっちゃん。自分がしてもらって嬉しいこと、気持ちいいことは相手にもやってあげたらどうですか?きっと喜びますよ」
「なるほど!」
「まぁ、それだけ手馴れてるなら、生半可な実践経験じゃ悦ばせてやれるかわかりませんがね」
「そういうものか...」
「女はねー、難しいんですよね」
「そうなのか...」
「でも。ぼっちゃんも気持ちよかったんでしょ?」
「ゾクゾクはしたけど、気持ちいいというより、死にそうだったよ」
「は?」
「笑いすぎると呼吸が出来なくなるなんて、知らなかったよ。」
「はい?」
「だから、大笑いって、楽しいけど苦しいんだなって。」
「...ぼっちゃん...プリューラになにをされたんで?」
「え? コチョコチョだけど?」
「.........はぁあ?!」
ぼく、変なこと言ってたのかな?
なにこのバエビウスの反応。
口をあんぐり開けちゃって、固まっちゃったよ
「だから、プリューラが手先から脇の下、脇腹に首筋と顔面と、背中も!あっちこっちくすぐってきて、それが、くすぐったいのなんの。
で、油断するともーだめで、大笑いしちゃったら呼吸出来なくなっちゃって、やめてって言ってるのにプリューラはまだ続けるんだよ。
酸素足りなくって、頭ぼーっとしちゃうし、プリューラの小悪魔みたいな笑い方が可愛くて可愛くて。
って、ねぇ、聞いてる?」
ダメだ、バエビウスまだ、固まってるし。
「ねぇ、プリューラを百戦錬磨に仕立てあげたのって誰だと思う?ぼく、そいつと対決しなきゃダメかな?ねぇってばバエビウス!」
さっきまで愛想良く聞いてくれたのに、今は瞬きひとつしないバエビウス。
「うーん、ぼくもう自分の部屋に戻るよ?
バエビウスも料理の仕込みはありがたいけど、そろそろ休んでよね?」
と、ポスカを飲み干して調理場を後にする。
途中まであんなに一生懸命聞いてくれてたのに、どうして途中で固まっちゃったんだろう。
程よく眠気に襲われてきて、自室のベッドに入ると同時に倒れ込むように眠りにつけた。
なんて幸せなぼく。
どうか、明日も良い日でありますように。
プリューラ、君を包む今夜の夢が、どうか幸せなものでありますように。
おやすみなさい。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ルキウスsideはつい長くなってしまいます。ビバ漢字!
8歳の男の子ってどんな感じかなーとイメージしていたのですが、何故かルイ17世の話になり、意気消沈しながらもそれなら...と、こんな話になりました。
伝えづらい内容なので、全く伝えられてないですね、一応R15ではないということで、すみません。
今後、シーズンが変わったら、イチャイチャ出来るチャンスも減ってしまうので、いまのうち、いまのうち、とイチャイチャさせてます。
今回料理人のバエビウスがルキウスを焚き付けてくれたので、ちゅうまでたどり着けるといいなぁと思ってます。
頑張れルキウス!
次回 いよいよ念願の先生に勉強を習うお話です。




