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傷だらけのキミとともに

※ルキウスside※


「プリューラあぁ!!!」


そう叫んで、剣を力任せに振るった感触が、まだ手に残っていた。


習い始めたばかりの剣が、プリューラに当たってしまっていたらと思うと、今でも腕が震える。


ここはぼくの屋敷のぼくの部屋。

ぼくのベッドに寝かされたキミ。


手も足も、背中もボロボロで、ぷっくりツヤツヤ可愛かった唇は、水分不足でガサガサにひび割れて痛々しい。


キミはたった1日でどれだけの冒険をしてしまったの?


ともに歩みたい、ともに成長していきたいって思うぼくを嘲笑うかのように、先に進んでしまうんだね。


ベッド脇に置かれた椅子に座ったまま、あの子の髪の毛をサラサラと弄る。


キミを屋敷に連れ帰ってから、すぐさま医者を呼んだ。

その間に、泥だらけ、怪我だらけのプリューラを侍女たちが風呂で洗い流し、ガサガサ絡まり放題だった髪の毛だけは、なんとか元に戻って。


でも、からだは軟膏を塗ったくられて、痛々しく包帯を巻かれた体と両足に、ぼくは自分自身への怒りが込み上げそうで。


(焦って村長のところへなど行かずに待てばよかった)


(いや、村長のところへは使いを出してこちらに来させるべきだった)


(そもそも行動が遅かった。もっとはやくに村長を介入してプリウスとプリューラの父親と話し合いをするべきだった)


と、後の祭りな事ばかり考える。


それでも昨夜、プリューラがみつかったあと、プリューラの父親プリウスと村長とぼくとで静かに話し合いをした。


なぜプリューラが家出をする結果になったのか。

森へと行ってしまったのか。

今後どうするのか、と。


ちゃんとした話し合いをしてみてやはりと確信した。

それは2人とも、いい人だということ。


2人とも、普段ぼくが相手にしている大人とはタイプの違う気持ちの良い大人だ。


村長はちゃんとぼく側の立場でぼくとプリウスとの仲介にはいってくれた。


プリウスは自分の非を認め、僕に謝罪した。

そして、プリューラのことは、今はまた結論を出せないが、考える時間をくれ。

そして、自分の家ではプリューラの手当てが出来ないから、お試し期間もかねて、うちで預かってくれないか、との事になった。


あんな大きな体の大人が、こんなにちいさい娘のことでしょぼくれると、そこまで小さくなるのか、とびっくりもした。


それほどプリウスにとって、プリューラはかわいいということなのだろう。


うん。

よくわかる。


だってプリューラは、この子はこんなにも可愛い。

見てるだけで、幸せになれるんだ。


傷だらけできっと辛いに違いないのに、傍に居るってことが嬉しくて、つい笑顔になってしまう。


よしよしってなでながら、一大事にならずにすんでよかったと、胸を撫で下ろす。


「る...す...ぁ」


ピクリとプリューラが動き、

モゴモゴと寝言をいった


「うさ...さ...」


ぼくは、プリューラの手をとってギュッと握った。


「うん、ぼくはココだよ。

大丈夫、うさぎは無事だよ。」

挿絵(By みてみん)

って当てずっぽうに返事した。


「うん...」


って、プリューラが満足そうに笑って、またスヤスヤと寝息をたてはじめた。


ちょっと前のぼくたちなら、ぼくが寝込んで、キミがこうして座ってくれていた。

今日は逆転しちゃったね。

ぼくが熱で苦しいとき、キミはいつもぼくの手をこうして握ってくれてたっけ。

キミも、こんな気持ちでぼくの横に居てくれたのだろうか。

こんなにも心配で。

でも、傍に居られるのが嬉しくて。

独り占めしてるのが誇らしくて...。


たぶん、キミに万が一があったら、ぼくはもう生きていけない。

その確信はある。


一緒だったら冥府への道も楽しいのかもしれない。なんて逃避で思うんじゃなく、本気で思うから怖いのだけれど。


(せっかくお試し期間を貰えたんだ。)


(この土地にいられる間に、プリウスを瓦解させなければ。)


そう。

この土地への療養期間は、最初から1ヶ月と決まっていた。

治るもよし、治らぬもよし。

と連れてこられたこの土地での巡り合わせに感謝しつつ、残された期間でプリウス親子を納得させ、あの子を連れて帰る。


以前のように、雨が降ったから来られないとか、屋敷に来てくれるのを悠長に待てる時間はもうないのだから。


...あの子がいなければ、ぼくもいられないのと同じくらい、あの子さえいてくれれば、ぼくはいくらでも、どれだけでも頑張れるのだから。


ローマという都市で、皇帝の皇子という立場で、他の正統な血筋の皇子たちと渡り合い、強くなるためには、生き残るためには、ぼくにはプリューラが必要だ。


プリューラのためではない。

僕のため。

そう、これはぼくのエゴ。

ぼくのワガママ。

だからキミを連れ去るよ



キミが大好きだから...。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ルキウス闇堕ち回避できましたー!

よ、よかった...。


後出しのようですが、ルキウスがプリューラの村に居られるのは期間限定です。

だいたいあと2週間ですね。

その後幼児編での最後の選択はルキウスと行くかどうかとなります。が、ひとまずは最後までを駆け足で進む予定ですので、今はまだ選べません。

一応うさぎが伏線になってるつもりです。


次回は「ルキウスさまの世界」

プリューラside

予定です。


頑張りますのでよろしくお願いします。



※計算し直した結果、残りあと9日でした。

※次回「星降る夜に」オッサンsideにはなりました

(2019.10.31追記)

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― 新着の感想 ―
[良い点] うっうっうっ(´;ω;`) ピュアの魔法に心が浄化されそうです。 尊い……(;ω;) ぷりゅたんが旅立ったら家族は泣くでしょうね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
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