君に会いたい。
※ルキウスside※
『 5月13日 晴れ
今日、あの子が来なかった。
仕方なく1人で勉強をする。
心無しかいつもより薬が苦い。
つつがなく1日を終える』
『 5月14日 曇り
今日もあの子は来なかった。
あの子のために用意した勉強セットが10をこえる。
この前、多すぎ注意とメモ書きはしたものの、他にやることもないので仕方がない。
今日もつつがなく1日を終える』
『 5月15日 晴れ
今日こそと期待するも、あの子はまた来ない。
海の方からの風がふき、今日は潮風を感じた』
『 5月16日 晴れ』
『 5月17日 雨
珍しく雨が降る
あの子にだした使者をとうとう断られる
ショックだった。
少し熱が出る』
『 5月18日 雨 』
日記をつづろうと決めて、1週間。
この日記につづられるのは、ぼくのものがたり。
ぼくと、あの子とのものがたり...。
なんてことを思ったのもはや一週間。
書くことが、何も無い。
今日の日付けのページをみつめ、初日にはこんな1枚にぼくの毎日が収まりきるだろうかと心配したのはなんだったのだろう。
書くことが、何もない...。
1人で机に向かうと、やる事も特になく、またあの子のことを考えてしまう。
どうして使者を断ったのだろうか。
そもそも、なぜ、来てくれなくなったのだろうか。
プレゼントが、気に入らなかったのだろうか...。
と、モンモンと考えてしまう。
答えなんて、ここにはないのに。
でも、あの時あーすればよかったとか、この時にはこーすればよかったとか、反省もあるわけで。
1人、またしょげてしまうぼくです。
うぅ、本当に、あの子成分が...
(尽きてしまう。)
あの子が来てくれた、あの日を境に本当に健康になったぼく。
医者が言うには、
『 病は気から 』
って言うらしい。
あの子に、情けないとこ見せたくなくて、心配かけたくなくて、強くありたいって思ったから、病気と闘おうって思ったから、元気になれたってことらしい。
うん。心当たりしかない。
だけど、今はあの子成分があんまりにも減りすぎて
(病弱に戻ったら、また来てくれるかな)
なんて陰気なぼくが顔をだすよ。
そうじゃない、そうじゃないのは分かってるんだけど
「会いたい...よ...。」
と、口から言葉がこぼれ落ちる。
ついでにぼくも、雪崩落ちるように机に突っ伏す。
出るのはため息ばかり。
逆にやる気は一欠片も出てこない。
「はぁ。」
と大きくため息をつくと、
部屋横で待機していた侍女がひょっこり顔を出した。
「ぼっちゃま、大丈夫ですか?」
「だいじない。」
心配そうにしてくれるけれど、心配して欲しいのは、お前じゃないんだよ、なんて思うぼくは冷たいのだろうか。
「ねぇ、ぼくあの子に、なにか嫌われることしたと思う?」
机に伏したまま、つい聞いてしまう。
「あの子...
あぁ、プリューラですね」
「...うん。」
侍女はうーんと考える素振りを見せた。
「なんでも構わない。
お前なら、こう思うってことを包み隠さず聞かせてくれないか?」
「いえ、でも...」
困ったような顔をする侍女。
女の目線と男は違うと聞いたことがある。
ぼくには分からなくても、せめて参考に聞かせて欲しい。
「...頼む。」
机から顔をあげ、じっと見つめて真剣にお願いをした。
なんでも構わない。
藁をも掴む気持ちだ。
なんでも知っておいて、今後に活かしたい。
「そこまで仰るなら...」
「薬不味そうでしたもんねぇ」
グサッ
「5歳の女の子が、ずっと机に向かいっぱなしでお勉強なんて、わたしなら地獄ですー」
グサグサっ
「女の子たるもの、可愛いとか、少しは褒めて欲しいですけどねぇ。女の子ならみんな。」
グサグサグサッ
「あー、あんなぶっっとい本、何冊も渡されても置き場に困りますよ、ふつう。」
チーン。
なんてことだ、それ、ダメだったんだ。
喜んでくれると思ってたのに。
というか、ぼく、何一つ喜ばせてないじゃん。
危なく成仏しかかったところで、侍女がまたトドメをさすように言い放った。
「プリューラの家は海辺と聞きました。
ここまで来るのも面倒ですよね」
なんてこと...!
海って屋敷から見える、あそこ?
あんな遠いところから?
それも毎日往復で?
「わたしなら、会いたいなら、そっちから来いやっ!てもんですよ
あはは」
そこで笑うのか。
お前なんか、首だっ!
って言いかけて気がつく。
「おまえ、今なんて?」
ユラりと言葉を放ったぼくの様子に気づいてか、侍女はぱっと後ろに飛び下がり、土下座をした。
「申し訳ありません!
なんて生意気なことを...!」
ユラりユラりと滲み寄って、もう一度聞く。
「どうでもいい。
お前、いまなんて?」
「は、はいぃー!!
そっちからこいやー。と!!!」
侍女は床に頭を擦り付けるように謝りながら叫んだ。
「でかした!
まさにそれだ!
侍女長から報奨もらっとけ!」
「は?」
「出掛ける準備を!
侍女長と衛兵を呼べ!」
「ははぁ!」
「それと、馬車の用意もだ。
いそげ!はやく!」
「かしこまりました!」
こうして。
ぼくはとうとう屋敷から外へいくという行動に出た。
ただただ、あの子に会いたい。
その一心で。
長いので切りました。
次回に続きます。
コンビニ行って、挿絵スキャンでき次第、次up予定です。
よろしくおねがいします
がんばります




