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朝の光

挿絵の表示がおかしい場合があります。治せるようになるまで、少々おまちください すみません

※ルキウスside※


(日記をつけたらいいのだろうか)


天窓からやわらかな光が差し込んできて、僕の部屋も自然と明るくなった。


(こんな時間に、自然と目が覚めるようになるなんて...)


少し前の僕なら、この時間にまたひと熱あげ、うなされ、嫌な汗をかきながら侍女に起こされていた事だろう。


それが、たった1週間でこんな健康な身体になるなんて...。


熱もない。体のどこも痛くない。関節だって、ギシギシ痛むこともない。べったり汗をかいて、気持ち悪いなんてこもなく、適度に空腹をかんじる。


(これが、健康ってことか...)


と、自分の身体を不思議に持て余す。


(なんて、爽やかなんだろう)


両腕を上へのばし、

んーっと背中を伸ばす。


こんな爽やかな朝、本当に初めてで。


ぼくは、あの子を思い出す。


(これも、毎日いっしょに薬を飲んでくれたから)


苦くて苦くて、大嫌いだったあの薬。

物凄く不味そうに、飲み干してたっけ。


(あの顔)


くくっと、自然と顔が笑顔になってる。

思い出すだけで、ぼくを幸せにしてくれる、あの少女。


あの子が来るようになった2日目。

僕は高熱を出して人に会えるような状況じゃなかった。

でもあの子は、ズカズカとベッド脇まできて、ぼくを心配そうに覗き込んだ。

ぼくはうなされて、視界もボヤけてたんだけど、あの子の顔だけはよく見えて。

あの子ってば、目に涙をいっぱいうかべて、いたいのいたいのとんでけーっ!

てしてくれたのが嬉しくて。

わたしがおびょうきかわってあげるって、今にも泣きそうに言ってくれて、なんでか勇気をもらって。

ぼくの熱が高いからってあの子が帰されそうなのを、無理矢理わがまま言ってそのまま居てもらって。

あんな不味い薬、本当に一緒に飲んでくれて。

1人じゃないんだって、すごく実感しちゃって。

それまで病魔に好き勝手させてたけど、

『 闘わなくちゃ 』

って、初めて思ったんだ。

それもこれも、みんなあの子のおかげなんだ。


熱が引いてからも、支えるように、付き添うように、そっと傍にいてくれて。

どれだけ心強くて、どれだけ勇気づけられて、どれだけ頑張りたいって思わせられたんだろう。


あの子のことで、胸がいっぱい満たされていれば、ぼくはそれだけで元気になれる。

なんでも出来るような、気になってしまうんだ。



(今日こそ、ゆっくり引き留めよう)


明るくなったとはいっても、明け方はまだ寒くて、トーガを自分で羽織りながら、あの子の笑顔を思い浮かべて。


(なにをして喜ばせようかな。)


って、ずっとあの子のことを考えてる。

あんな小さな女の子の、ことばかり思ってる。


確かにぼくは、ずっと病弱だったから、あまり外のことは知らない。


とはいえ、それなりに人とは会うし、なにかしらはやることがある。


でも、考えることはあの子のことばかり。


(はやく、会いたいな...。)


(昨日、あんなに早く帰ってしまったから、あの子成分が足りない。)


って、胸がきゅっ。てなるのを感じる。


(3つも年下の女の子なのに。)


(可愛くて仕方ない。)


(もしも、僕に妹がいたら、あんな感じなのかなぁ)


って思って、頭を振った。


もしもぼくに妹がいたら、ぼくと同じ金髪碧眼になる。好奇の目で見られるなんて、そんなのぼく1人でいい。

だから、妹なんて、いらない。


じゃあ、あの子のことは、どうしてこんなに気になるんだろう。


羨ましい程の生粋のローマ人的見た目。

きっと、成長したら、美しい乙女になる。


(ドキッ)


自分で想像して、自分でドキリとする。

大人になったあの子。

どれだけ美しくなってしまうのか。


大きくなった彼女はどんな男に娶られるんだろうか。


(それは...)


(イヤだ)


ギリッと歯軋りするほどに

黒い感情が芽生えて、胸がまた違った痛みに襲われる。


なんだろう、このぼくは。


あの子を中心に、なんの感情に支配されているんだろう。


とにかく今は、はやくあの子に会いたくて。


どんなことで喜ばせようかと、また胸が高鳴って。


天窓から入ってくる光はこのローマ中に振りそいでいるはずだから。


「おはよう。

君にも良い目覚めが訪れて居ますように。」


挿絵(By みてみん)


いままで神なんて信じていなかったこのぼくが、祈りを天に捧げるよ。


あぁ、はやく会いたい。

今日もあの子へ、使者を届けよう。


自分で自分の扉を開けて、いままでなかった世界へと進むんだ。





そして昼下がり。


「ぼっちゃま、使者がプリューラの返事を受け取ってまいりましたよ」


「!」


いつもは


「はい、かしこまりました」


の一辺倒だったのに、とうとう返事が!

どうしよう、嬉しい。

胸が、心臓が、早鐘を鳴らしてる!


「うん、みせてくれ。」


と、手紙を受け取って、周りに僕の動揺がバレないように平常を装って。


手紙をそっと開いて、文を読んだ。


「.........」


「ぼっちゃま?プリューラはなんと?」


「昨日...

本を読みすぎて眠いから、

今日はお屋敷に伺えませんって...」


ガッカリするぼく。

言葉を失う屋敷の一同。


本の量、ちゃんと考えるべきだったと、今日一の反省点を、しっかり日記に書き残そうと胸に誓いつつ、この虚脱感に襲われた今日の日を、どう過ごすべきか悩むぼくであった。




挿絵(By みてみん)




うぅ、あの子に会いたいよ!

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ルキウスはプリューラにメロメロです。でも、幼すぎて、それが恋だとまだ自覚できていません。

というのが上手く書けていたら嬉しいです。

ついでに挿絵つけ忘れました。

後日改めてアップしようと思います。


註釈なのですが、古代ローマにおいて女に個人名はありませんでした。

なので、プリューラはプリウスの娘、もしくはプリウスの女という意味です。

ルキウスはこの頃から独占欲があるようで、プリューラをその名前で呼ぶのが好きではありません。むしろ嫌がってます。その辺は、短編にも書いてありますので、お読みいただけたら幸いです。

よかったら感想をお聞かせ下さると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


次回こそ、『 プリューラ、家族と仕事の間で揺れ動く』の巻き

の予定です。

がんばります。


9/24追記 挿絵upしました。遅くなったので、頑張って2枚書きました。2枚目、なにも泣かんでもと思ったことは内緒です。

感想いただけたら励みになります。よろしくおねがいします


次回『君に会いたい。』になりました

(2019.09.30追記)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 胸がほっこり。 とても温まる素敵な回でした。 文章の温かみを、増す挿絵も素晴らしいですね。 次話も楽しみに伺います。
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