プロローグ
——この世界は『生』と『死』で成り立っている。
——所詮この世は弱肉強食。
——弱き者が喰らわれ、強き者が弱者を喰らう。
そう、きっと僕の家族は所詮はこの程度のものでしか無かったんだ。
無残な物体が僕の視界に入ってくる。
カーテンの閉ざされた暗い空間の床には、項から出刃包丁を生やし鮮やかな紅色の血を噴き出した女性が荒れた状態で倒れている。
母だ。
倒れる母の前で父は昼間から机に座り酒を飲んでいる。それも大量にだ。
部屋中が血とアルコールの匂いで充満して今にも吐き出しそうだ。
父はゆっくりと立ち上がると流血した母に向かって脇腹を蹴ったり頭を踏みにじったりと「臭いんだよ!」と言いながら暴力を振るう。
僕は泣きじゃくりながら母の元に駆け出し倒れている母を庇う。
背中を蹴られ、頭も殴られ、硝子の破片で肉を切ったり。
痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
やめて、やめて、やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。
気が付けば僕の体は動かなくなっていた。
体が熱い。痛めつけられた所が膨れ上がるように痛む。
ここから逃げ出さなきゃ。
この人は僕の父親でもなんでもない。
人殺しだ。
このままここにいたら母と同じように殺される。
逃げなきゃ、逃げ出さなきゃ、逃げ出さなきゃ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
動かないからだを必死に叱りつけ床を這いつくばりながら玄関へ向かう。
幸いここはマンション。近所には人が沢山いて優しい人も居る。
外に出られれば何とかなるはずだ。
父が母を嬲っている間に僕はドアを開け外に出た。
外は雨が降っている。それも豪雨だ。
その雨に負けないよう必死に出せるだけの声で叫ぶ。
「だ、誰か助けて——ッ! 誰か!」
叫び続けていると背後からドアの開閉音とバタついた足音が聞こえた。
僕はその光景を見て目を見開いた。
——この世界は『生』と『死』で成り立っていた。
初めまして、読んでくださりありがとうございます!
プロローグなので話はまだ見えないと思いますが、これからの物語を楽しんでいただけると幸いです。
ブクマなど貰えると執筆の糧となるのでもし宜しければよろしくお願いします! 桜姫蒼空は頑張りますっ!