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狼の仔  作者: 加密列
第八章 血に染まる
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葛藤 〜那幾〜

笑いの余韻も一人では虚しく、寂しく響くだけだ。


(一人はいやだなんて、久しく思わなかったのに)


思ってしまう自分が怖い。また、傷つきたくない。…もうやめよう。



いたたまれずに家を出てみると、彼らはもうどこにもいなかった。どちらに向かったのかさえ分からない。ふらりと現れてはふらりと去っていく年上の友人を想った。人を、殺したとそう告げたガノシュ。驚くでもなく、恐れるでもなく、淡々とそれを受け止めていたザンサ。二人は笑い話まで披露してみせたのだ。おそらくはおらのために。


彼らは一体何者なんだろう。どこからやって来たのかも知らない。そもそも本名を名乗っているのかも定かじゃない。おらが彼らについてたしかに知っていることは、彼らがたしかにおらの命の恩人ということ。おらより年上の人で、姉や兄のように慕っているということくらいだ。


(それで十分じゃないか)


そう、思いたいのにもっと知りたいと、そう思ってしまう。


(訊いてみればいいじゃないか)


きっと隠したいことはそう言ってくれるくらいには信用があるだろう。それとも、訊いてしまったらもう二度と来てくれなくなってしまうのだろうか。


(なあ、俺はどうするべきだ?)


ふと走った震えは冷えて来た風のせいだけではなさそうだった。


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