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狼の仔  作者: 加密列
第七章 那幾
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進む道 〜ティア〜

那幾に一時別れを告げ、口入屋へと向かった。トピの策略が成功していれば、そこそこいい役職につけるだろう。


「やあいらっしゃいませ」


相変わらず揉み手しそうな勢いの店主が迎えてくる。


「いい仕事があったかな?」


トピが問う。


「へえ、週に二度、防具屋の仕事がございます。なかなかに給金はいいとか…」


防具屋か。悪くない。


「具体的にはなにを?」

「へえ、主に皮を編んだり、それを並べたり、それから、お得意様に配達する、なんて仕事があります。その…そちら様が目立つ仕事はよろしくないといったもので…」


ひとの下で働く役職につけたことを気にしているのだろう。禿頭の男がまだ十四の少年の顔をうかがう様はなかなかに滑稽だった。


「案ずるな。今日中にでも向かおう」

「へえ、しかし先方は三日後から頼みたいと…」

「分かった。受け取っておいてくれ」


少し多めに金を払ったトピに続き、私も店を後にした。そのまま森の家に向かう。無性に森へ帰りたかった。早足で街を出る。小屋の戸口は私たちがそこを立ったときのままだった。トピが


「ないよりましだろ」


と言ってつけた簡素な掛け金もそのままだ。小屋の中に入り、買ってきた昼飯を広げる。芋を潰したものを餡に絡めて冷やしたおかずは、この国の夏になくてはならないものだ。私は食べたことがなかったのだが、なかなかに美味い。トピに作ってもらえないかな。


「ところで、店主に見せたのは具体的に何だったんだ?」


口に入れたものを飲み込んでから問うと、


「ああ、これか」


懐から布の取り出す。紺色の地に金と赤、そして緑で刺繍がしてある。かなり精巧だ。


「なんだ?これ」

「この国の隠密が持つものかな。正式には腕に巻くんだがそれだと目立つから、ここぞという時にこっそり見せることが多い」


さらっととんでもないことを事を口にする。これも街の影の知識だろう。隠密を装ったとは紙に書いてあった。まさかこんな手口を使ったとは。と、言うか


「お前まさか盗ったのかこれ?」


隠密は立派な国家組織だ。そこから盗るのはさすがにまずいんじゃないだろうか。


「人聞きの悪い事をいうな。どっかの誰かとは違う。自分で作ったんだ」

「…ここにいない人を引き合いに出すのは良くない」


さらっととぼけると、


「お前なあ」


トピが呆れた顔をした。雲行きが怪しくなりそうだ。咳払いをして


「お前こんなもの作れるほど器用だったのか」


強引に話題を変える。ますます呆れた顔をしたトピはそれでも


「この程度ならね。なにも完璧じゃなくていいんだ。ちらっと見せた時にすぐにそれと分かってもらえるほどのものであれば」


盗っ人猛々しいというか図太いというか…絶句した私を尻目にトピは黙々と昼食を口に運ぶ。おいしそうに食べるな。そう思って私も食事を再開した。


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