許しを乞う 〜トピ〜
戸が開いた。
(ティアか)
表に出て行った人影はよく知る彼女のものだった。が、
「おい」
ふらふらと頼りなげに歩く姿は正気とは思えなかった。ティアはいつも真っ直ぐ、大地を踏みしめて歩く。その彼女があんなにも隙だらけで歩くなどありえない。あれは本当にティアか?無意識に「仮面」を使ってしまう事もあるのだろうか。もしそうなら、名前を呼ばなきゃ。
「ティア!おい」
身を起こす。それでも彼女は止まらない。冷水を浴びせられたようでぞっとした。もし、無意識に仮面を使って、鍵を作らなかったとしたら?いつかの話みたいに一昼夜暗示をかけ続けないといけなかったら?僕にはできない。それでも、必死に追いかけた。
「どこ行くんだ。待てよ」
後を追い、転がるように外に出る。
「待てって」
その肩に手をかける。闘う時はあんなに大きく見えるティアの肩は年相応に小さかった。初めてではないのに、この感触はいつも慣れない。彼女が無理をしているのではないかと、自分が頼っていた者の思いがけない弱さが感じられて怖くなる。いつか潰れてしまうのではないかと、そんな風に思わせる。
(ティア)
まるで僕の手が岩となったかのようにティアが地面に崩れ落ちる。糸の切れた人形のようだ。彼女のそんな姿はぞっとする。
「ティア!」
とっさに抱き抱えた。
「ティア、帰ってこい!」
「…さい」
「え?」
つぶられた目。口だけがかすかに動いていた。
「ごめん、な、さい」
謝る以外のことを忘れてしまったかのように、許しを乞う。
「ティア」
両腕に力を込める。
(戻ってこい)
あらん限りの祈りを込めて。と、唐突に彼女が目を開けた。その焦点が自分に結ばれる。
「どうして、私はここにいるの?」
「何も、覚えていないのか」
疑うことを知らないようなその瞳が、信じられないというように見開かれる。頭を上げて干し草小屋を振り返った。
「まさか」
彼女を見られない。彼女に目を合わせられない。
「嘘だ!」
恐怖に目を見開いて。彼女は気づいてしまう。自分は、疑うことを知らないまま生きていく事は出来ないと。ティアの表情は逆光で分からなかった。
*
ちらりと彼女を見やる。屋根のあるところに居られる事などほとんどなく、もう少しここに居ても良かったのだが、二人ともなぜか急き立てられるように荷造りをしていた。彼女は、ほとんどしゃべらない。唇を噛み締め、一点を睨みつけて僕には頑なに目を向けなかった。
「行くぞ」
短く言う。いつも以上にぶっきらぼうで、僕は頷く事しか出来なかった。
(待って!)
どうしてそんなに寂しそうな背中をしているんだ。僕には、打ち明けられないのか?小屋からまろび出ると、眩しい日の光が目を刺した。ティックが、いなないた




