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狼の仔  作者: 加密列
第四章 敵襲
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自分の意思 〜トピ〜

「ん…」


ふと目が覚め、陽の眩しさに目を眇める。日は高くもう昼過ぎだろう。昨日までのだるさは嘘の様に消えていた。手を軽く握る、閉じる。少し力が入りにくいが、もう大丈夫だろう。


(無理して馬に乗っていたのはまずかったか)


ティアに迷惑をかけたくなかったし、自分が弱っている事を知られたくもなかった。くだらない意地だ。ティアなら虚勢を張らなくともいいと分かっているのに、癖はなかなか抜けない。どんなに体調が悪くとも、倒れる寸前まで態度には出さない。それが体に染み付いて、どう切り出せばいいのか分からなかった。


(まったく)


後回しに後回しにしているうちにすっかりティアに迷惑をかけてしまった。額に手を当てる。強くならなきゃ。ティアに迷惑をかけないために。


「ティ…」


横を見るとティアが座ったまま眠っていた。木の幹に背を預け、槍を地面に突いてそれに額を預けていた。まるで人形のように眠っている。


どこがと言われると困るが、ひどく疲れているように見えた。彼女の手が額のサラシを何度も取り替えてくれたのをぼんやりと憶えている。熱が下がるまで徹夜で看病してくれたのだろう。もしかしたら二日前から一睡もしていなかったのかもしれない。…このまま寝かしておこう。まだ時間はある。



熾に変わった火をもう一度起こしていると無性に腹が減ってきた。ティアの薬湯以外は口にしていなかったからだろうか。あれは猛烈に不味かったが、効き目は確かだった。食欲が出てきたのはいい兆候だな。


灰を掻くと葉にくるまった魚の切り身が出てくる。口いっぱいに頬張ると焦げ臭さも少しあるが、香ばしい香りが口いっぱいに広がった。食べ物を見て、ダンミットとティックが不満げに鼻を鳴らしす。見ると繋いだ木の周りの草がすっかりなくなっている。


(しまったな)


ここで野宿をした痕跡と、馬に乗っているという痕跡を残してしまった。ただでさえ僕のせいで旅程が遅れてしまっているというのに。


「起こってしまったことは、しょうがないか」


口に出して言ってみる。うじうじ考えこまなくなったのはティアの影響だろうか。自分では悪くないと思っているのだが、あんまり影響を受けるのも考えものだな。二人とも猪突猛進だと、それこそ命取りだ。考えるべきところは考えられて、こだわらないところはこだわらない性格にならないものかな。


真面目に考え込んでいるとダンミットが再び鼻を鳴らした。ティックはふてくされた様にそっぽを向いている。何下らない事考えていたんだ。だが、自分の性格について把握出来るのはいい事だ。村にいた頃はそんな事思いもしなかった。


「分かったよ」


別の木に繋ぎなおすと、二頭は僕の方などもう見向きもせずに草を食み始めた。ティアは、まだ起きない。その寝顔ははっとするほど無邪気に見えた。彼女だって、まだ十四なのだ。


(きっと…)


ここにいるティアは、いや、ここではないどこかを漂っているティアは、父親を殺したことや、刺客を返り討ちにしたことなど、知らないのだろう。知らせたくない。思い出させたくない。…苦しんでほしくない。ため息をついた僕は、ティアの分まで荷物をまとめ始めた。


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