星の誕生
いつの頃からか頭にあった物語です。悩みながら成長する二人に寄り添っていただければ幸いです。
「『ナダッサ』の民は三年に一度、村で、決められた数の強者を試合によって選出し、その者を皇帝の近衛兵とするべく差し出さなくてはならない。その者らは皇帝に絶対の忠誠を誓い、その忠誠を裏切るものは一家断絶とする。皇帝はその者らの身内に兵役中の金、食物を約束する」
ナダッサ「大いなる約定」より抜粋および要約
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何かが違っていたのだ。その夜は。それは、産声が二つ重なった事にだけ原因があるわけではない。数多の星が流れていった事にだけ原因があったわけでもない。ただ、それらのことが複雑に絡み合って、そして、気脈さえも動かしていた。
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外でいまだ星が降る中、岩穴の中にはかすかに人の気配がこもり、目を凝らせば岩々の間に四つの人影を見る事ができる。跪き、拳を握りしめている者もいた。だが、共通点が一つ。彼らは何かを待っている。全身を緊張させ、微動だにせず何かを待っているのだ。そして、今しも待ち人たちの声に出さない問いに答えが示されようとしている。
岩の一つが微かに動き、跪いた人影が身を強張らせた。岩、いや、それは老婆だった。岩穴の精気を吸って生きているかのような、どこか明らかに普通ではない気配を持った人だ。苔むした着物を着ている様は仙人を思わせる。ゆっくりと振り向き、皺に埋もれたその目はしかし真っ直ぐに四つの人影を見据えているように見えた。小柄な体をさらに丸めて、それでも誰より存在感を放っている。
「生まれてきたのは『星の子』である。しかし、それは他の村に知られてはならない。たとえ、その子らが、『星の子』であろうとも」
長い年月の染み込んだ声。
「『対の子』として育てよ。百年に一度現れるかどうかの星の子。さらに対の子でもあるとなると先例がない。何も分からないが、決して動じるな。その子達を守り、育てよ」
その声に震えが混じる事に気づく者はいない。人影が一斉に首を垂れる。