08 第八曲 歌の終わり
捨てられた。拾われた。憎まれた。愛された。傷付けた。傷付けられた。そんなことがないようにぼくはお人形になったのに、優しい兄様はぼくに憧れを抱かせた。ジュンと呼んで、マカオンとして育ててくれた。
そこでぼくはたくさんの演奏舞台会場を創った。そこでたくさんのお人形に歌ってもらった。そこでたくさんの歌を聴いてきた。マカオンに為った、愛おしいお人形たちが紡ぐ歌を。
ぼくはお人形を創るだけ。舞台を設置していくだけ。歌っているのはお人形たち自身。それは立派なマカオンの姿。どれだけ雨に打たれたって、どれだけいばらで傷ついたって、白から赤へ、赤から白へ、花園の上の旅は続く。
そしてぼくが叫ぶ歌ももう終わる。ぼくには、あの子たちのような勇気はあるかしら。再び歩き出す勇気はあるかしら。優しい兄様、もしももう一度赤い花へ戻ってきたなら、あなたはそこにいるかしら。
希代の人形師がその日死んだ。レオンの元で人形を創り始めてから、わずか三年後の出来事だった。レオンは人形工房の経営を友人に引き継いだ。
しかし、ジュンの人形は消えはせず、何百年もの時を越えて受け継がれていく。さあ、次にお人形遊びをしているのはだあれ? 新しい演奏舞台のプロデューサーはだあれ?