07 第七曲 夢のもつれ
こくりこくりと、舟をこぐ。工房の人形に囲まれて舟をこぐ。眠る末っ子を優しく見つめ、レオンはそっと揺り起こした。
「可愛い子、こんなところで寝ていては風邪をこじらせてしまいます」
ぱちりとその目を開けた末っ子は、くるりとした瞳でレオンを見上げた。
「ぼくは一体誰かしら。時の流れに惑う龍かしら。兄に焦がれる山かしら。自然に翻弄される祖母かしら。それとも黄金の国に憧れ抱く少女なの」
「私の可愛い末っ子よ、どんな夢を見てきたの」
レオンの笑みに向かい、末っ子は答えて小首をかしげた。
「胡蝶の夢を」
言って末っ子は小鹿の龍のヘッドの中から、一つを選んで手に取った。
「きっとこの子は少女の元へ辿り着く。シューマンを聴く少女の元へ。本当の黄金を見つけ出した少女の元へ。土地も時も遥かに超えて、この子はきっと一人の少年に成るでしょう。時の流れに戸惑いながら、流れを受け入れて生きる一人の龍に」
もつれた夢が絡み合う。矛盾しながら絡み合う。それは蝶が見せる夢なのか、夢が見せた蝶なのか。夢と現実、一体どちらが先なのか。あるいは現実も夢なのか。
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