06 第六曲 寓話
いくつ作っても、納得できない、満足できない、何かが違う。モールドを作り続ける末っ子と、作られ続けるヘッドたち。無造作に捨てられ続けるヘッドを見て、レオンは息のみそっと優しく微笑んだ。
「これはなんと美しい。捨てるはなんだか惜しいもの。わたしの可愛い末っ子よ、別の子を作ってはみませんか」
しばし手を止めて考えて、末っ子は窓の外を見た。格子状に切られている絵画のような夜闇には、いくつもの星がまたたいていた。中に一筋一瞬だけ、線が流れて儚く消えた。
「ならば夜闇を照らす星の子を。流れる髪は星色に。ひたむき、ひたすら、がむしゃらに、輝き続ける星の子を。瞳はサファイアが似合うかな」
目にもとまらぬ速さでその人形を仕上げた末っ子は、小さく微笑みそっと言った。
「どうか人々の希望であって。夜闇に沈んで抜け出せず、悩み苦しむ人がいる。どうか人々の希望乗せ、夜闇を照らしてほしいのです。どうか宇宙の闇の果て、己を呑まれずにここへ来て。わずかに太陽に憧れ抱く、ぼくたちと似た星の子よ」
レオンは星の子を手にとって、そっと机に腰かけさせた。白く淡くペイントされた透き通った少年人形は、少し寂しさを覗かせていた。レオンは末っ子に笑いかけ、人形を撫でて言ってみた。
「きっと一人じゃ寂しいね。もう一人横に作っておあげ」
しばし手を止めて考えて、末っ子は窓の外を見た。格子状に切られている絵画のような青空は、偉大なる太陽に照らされていた。
「ならば恵みの太陽の子を。燃える髪は炎の色に。命を育む土の色を瞳の色に。全てを平等に包み込む、どこまでも暖かな少年にしよう」
目にもとまらぬ速さで仕上げられた、第二の人形を見つめたレオンは、目を瞠って微笑んだ。
「これは快活な男の子。全く違うモールドを作ったの」
「その子は太陽なんだもの。憧れを抱く憂鬱は、その子の顔には必要ない」
肌のペイントは麦色畑の、ほっと息つく優しい人形。レオンは末っ子の声を聞いた。
「どうか人々の希望であって。寒さに震え、耐えられず、悩み苦しむ人がいる。どうか人々に希望を与えて、どうか我らを温めて。土と太陽の大きな恵みを、どうかここへ運んでほしい。みんなの憧れを乗せていく、明るく偉大な太陽よ」
人々が紡ぐ寓話へと、お前たちは繋がっていくんだよ。