04 第四曲 気まぐれ
「運命は一体どこからやってくるのかしら」
末っ子の問いに、レオンはやわらかく微笑んだ。
「きっと水に流れてやってくるんだ。抗えないけれど、とても綺麗な大河の一滴。わたしたちみんなはきっと、そんな小さな、それでも世界にとって欠かすことのできない存在なんだ」
兄の答えに、末っ子はしばし考え言った。
「ぼくはお人形を創っている。それは運命を創りだすことと同じこと。お人形たちは運命を背負って幸せかしら」
末っ子の顔に影が落ちるはなにゆえかと、兄はそっとその小さな頭を一撫でした。
「お前のお人形は笑っているよ。誰かの笑顔の糧になれて嬉しがっているよ。だからたくさん作っておいで。たくさんの笑顔を作っておいで。子どもたちが遊べるように。思い思いの世界を描いて遊べるように」
「では久々に新しいモールドを創りましょう」
気の向くままのモールドを創り、気の向くままのペイントを施し、気の向くままの服を着せる。人形作りというものは、なんて気まぐれなものなのかしら。
気の向くままに動かして、気の向くままの運命を与え、気の向くままにそれを終わらせる。人形遊びというものは、なんて気まぐれなものなのかしら。
気まぐれ。気まぐれ。だけどそれも大河の激流のたった一つ。その流れの中、三体の人形が出来上がった。誰かの笑顔のために雨に打たれる、小さなマカオンがまた生まれた。人形師の気まぐれと、ちょっとした憂愁の中で、ぶらんこが揺れた。
こまが回り、人形が生まれ、回転木馬が動き出した。疑問が飛び交う羽根つきのあとにラッパと太鼓が鳴らされて、シャボン玉が空に飛んで集まった。陣取り鬼ごっこと目隠し鬼ごっこを終えて、子どもたちはやがて馬を従えて跳び続ける神様と出会う。小さな旦那様と小さな奥様になった後は、舞踏会を開こうか。主役は一体誰だろう。
すべての遊びはすべて、気まぐれの中。
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