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03 第三曲 なぜ
白菊の肌、ぬばたまのたてがみ、紅薔薇の瞳の獣がいた。小鹿の龍と同じモールドの小さな獣がそこにいた。紅薔薇の園から白菊の園へと辿り着いたその獣のやわ肌に、末っ子はそっと手を伸ばした。
「なぜそのように生きることができたの」
「立派な狼が寄り添ってくれたからだよ」
「なぜそのように死ぬことができたの」
「立派な狼が大切にしていたものを、僕も大切にしてみたかったんだよ」
「なぜこのような世界があるの」
「それは狼も知らなかったよ」
「創られたことに疑問はないの」
「その問いの答えは自分で作るの。狼がそう教えてくれた」
見れば、一人立ちした子狼は、再び紅薔薇へと向かっていた。その背を見送り、末っ子はぽつりとそこに佇むだけだった。
なぜ。なぜ。
僕らはなぜ問いを抱くのでしょうか。狼のように生きられれば、あるいはその問いも捨てられるのでしょうか。それとも、問いを抱くことが人の証なのでしょうか。
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