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ただただ、逆戻りしないように

更新大幅に遅れてしまい、申し訳ありませんでしたm(__)m


部活の合宿が挟まってしまった影響で執筆に割く時間が無かったのですが、ようやくこうして更新する事が出来ました。


とりあえず、深夜テンションってコワイ(´・ω・)

 冒険者ギルドを出て、ナタリアさんの先導に従いながら、俺は早朝のメインストリートを進む。その道中、ふと疑問に思った俺はナタリアさんに質問を投げかけた。


「あとどれくらい掛かるんですか?」


「そうね……大体五分ぐらいってところかしら」


 ちなみに、俺達の現在地は冒険者ギルドから徒歩5分といった地点だ。とすると、俺の新たな住居&店舗は冒険者ギルドから徒歩10分余りという、中々好条件な立地に建てられているという事になる。


「――結構、良い立地なんですね」


 こちらが感心と共にポツリとつぶやくと、


「まぁね」


 ナタリアさんは小さく肩を竦めて、


「元々土地の所有権を持っていたのは商業ギルドだったんだけど、昨日の内に冒険者ギルドの方でそれを買い取っておいたの」


「え、値段とか大丈夫だったんですか……?」


 驚愕に駆られて俺が問い返すと、ナタリアさんは苦笑しながら答えてくれる。


「まぁ正直な話、それなりの金額はしたわね。とは言っても、冒険者ギルドの5日分の売上くらいだから、あまり気にする事は無いわよ」


「そ、そうなんですか……」


 刹那、たった5日分の売り上げだけで一軒家が買えてしまう冒険者ギルドの売り上げが如何ほどの物なのかという疑問が浮かんできた。しかし、そんな事を聞いたところで答えては貰えないだろうと思い、俺はそれを胸中に仕舞いこんだ。


 五分後。ナタリアさんの言葉通り、目的地にたどり着いた。

 その際、少し一悶着あったのだが……まぁ、それは後で語るとして。


 俺に譲渡されるという物件は、比較的建坪の広い、二階建ての店舗付き物件だった。

 一階部分は店舗兼工房。メインストリートに面している客用出入り口を通ってすぐに広がっているのは、壁床天上全てが木材張りとなったコンビニの様な内装の店舗スペース。店内奥に配置されている清算用のカウンターの更に奥には、レンタル工房の個室に負けず劣らずの広さの工房スペースがある。


 同じくカウンター奥の階段を上がれば、居住フロアである二階に移動できる。

 二階の間取りは俗に言う3LDK。階段を上がってすぐそこはダイニングキッチン兼リビングだ。四人用のダイニングテーブルが中央にデンと置かれ、他に設置された本棚等の家具も全てアンティーク調の物で統一された落ち着いた雰囲気のダイニング兼リビングと、二、三人が余裕を持って並んで作業できそうなキッチンとの間には壁が存在していないが故に視界が開けていて、家の中にいるにも関わらず、圧迫感を感じることはあまり無い。


 リビングには三つの扉があり、うち二つはトイレと風呂に通じている。そして最後の一つ、部屋の右隅にあるの扉の先には廊下が伸びていて、その廊下に入って左側の壁には、等間隔で三つの扉が備え付けられている。それぞれの扉の先は全く同じ間取りの個室であり、唯一の家具としてシングルベッドが一つずつ置かれていた。

 正直3LDKという間取りは一人暮らしをするには些か広すぎるような気がしなくも無いのだが……余った部屋は客間として使えばいいと自分を納得させる。


 こうして一通り建物の中を確認し終えた俺とナタリアさんは、続いてリビングに移動して束の間のティータイムと洒落込んだ。ナタリアさんが『アイテムボックス』から取り出したティーセットとお茶請けのお菓子をリビングのローテーブルの上に並べ、アンティーク調の対面ソファに二人で腰掛ける。

 俺はナタリアさんの手ずから淹れられた高級品種らしい茶葉より抽出された紅茶で喉を潤すと、


「美味しいですね……」


 口内を通り抜けて鼻の奥に広がる芳醇な香りに心を解され、少々脱力気味になりながら感想を漏らした。

 すると、ナタリアさんはそれは良かったと言うように微笑して、


「それで、ここはどうだったかしら。トガミ君のお気に召したなら良かったのだけど」


 と問うてきた。


「それは勿論。こんないい物件に文句なんてありませんよ」


 俺は改めて紅茶を一口嚥下してから。空になったティーカップをソーサーの上に置き、ナタリアさんに頷いて見せる。


「ここには調合師として活動するには理想的な環境が整ってますし、一人暮らしとしては十分以上の広さもあります……ただ、ですね」


「ただ?」


「お隣に知り合いがいるなら事前に教えておいて貰えると有難かったかなと」


 俺はソファから立ち上がり、リビングの窓の傍に寄った。

 そして、そこから見える景色――ここのお隣に屹立する、クラン〝紅蓮聖女(アぺフチ・カムイ)〟のクランホーム兼孤児院である建物や敷地内の運動場で子供達を整列させ、何やら叱りつけている様子のレティアの姿を視界に収めながら苦言を呈した。


「それは私のミスだったわ。トガミ君はこの街に来たばかりだから、それなりに親交のある知人が隣にいた方が安心できるかと思ってこの物件を抑えたのだけど……それを事前に伝えておくのをすっかりと忘れてしまって……。本当にごめんなさいね?」


「いや、自分からこの話題を出しておいてなんですけど……ナタリアさんが謝る必要はないと思います」


 そう、俺は通達を忘れていたことでナタリアさんを責めよう等とは微塵も思っていない。

 なにしろ、彼女の配慮はこちらとしても有難い事なのだ。


 未だ完全に慣れたとは言い切れない、この街での生活。その中で身近に親交のある人がいてくれる事の何と心強いことか。ナタリアさんには感謝してもしきれない。

 だから例え、つい先ほど俺達がここに辿りついた時に、丁度クランホームから出てきたレティアや子供達と目が合ってしまって、あれよあれよという間に子供達に群がられてしまい、心身共に滅茶苦茶にされたのだとしても、それはナタリアさんの責任ではない。そもそも彼女のミスに起因する出来事では無いのだから、彼女を責める理由にはなりえないのだ。


「あれは所謂事故みたいなものだったんですよ、きっと」


「そう……なのかしら。けど、これから先もあんな事が起こるかもしれないわよ? ほら、よく子供達は大人の想像以上にパワフルだというし」


「まぁ……それに関しては大丈夫だと思いますよ。なにしろ、今もああして現在進行形でレティアに怒られていますからね」


 レティアにこっぴどく叱られているのか、しょんぼりとした様子の子供達を見下ろしながら俺はナタリアさんの指摘を否定する。

 直後、彼女も窓の傍まで寄って来て外の光景を一望し、クスクスと微笑を漏らした。


「フフフ……どうやらそのようね。あれだけ手厳しく叱られては、やんちゃな子供達もそうそう貴方に悪戯するなんて事は出来ないでしょう」


「えぇ。ですから、話を別に移しましょう。……俺としても、一つ相談しておきたいことがあるので」


「そうね。その方がよっぽど効率的だし、建設的だわ」


 俺達は改めてソファに腰かけると、話の方向を転換させる。

 手始めに、深いスリットの入ったスカートを履いているにも拘らず、大胆に足を組んだナタリアさんが質問を投げかけてきた。


「で、相談しておきたい事って何かしら?」


「はい。冒険者ギルドでも言いましたが、俺はここをタダで使わせてもらう気はありません。賃貸式にしろ、購入式にしろ、適切なお金を払いたいと思っています。ですから、今の内にこの家に対する適正な金額と支払方法について相談しておきたいんです」


「この家に対する適正な価格と支払方法、ねぇ……」


 ナタリアさんは少し思案してから


「そうね。それなら購入方式の、金額は冒険者ギルドがこの家を買い取った時の価格の七割……いえ、半分を分割で払ってもらえれば、こちらとしては――」


「――いえ、それじゃあダメです」


 ナタリアさんの言葉を半ばで断ち切った。

 悠久の館を後にした時と同じような心境――自分らしく生きたい、自分の道は自分で決める、そんな思いで俺は宣言する。


「全額です。俺は冒険者ギルドが払った金額の全てを支払います」


「……それは、本気で言っているのかしら?」


 こちらを心配してくれているのか、ナタリアさんは表情を曇らせている。


「一応言っておくけれど、冒険者ギルドの一日当たりの利益は相当な額に達するのよ? それが五日分ともなれば、一般人には容易に返しきれないような額になるわ。具体的には――。……それでもトガミ君は全額返済すると言うの?」


「はい」


 耳元でこの家の値段を囁かれたが、その莫大な金額を聞いたところで俺の決意が揺らぐことは無かった。











次回は本来通り、日曜日更新の予定です。

……何だか最近、ここの更新予定を裏切るのが定番となってきている気もしますが、今度こそ守れるように頑張りたいと思います(・ω・)ノ

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