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#3 浜辺のゴミを一掃せよ

 ステージの上から見下ろす体育館はやけに広かった。マイクを通しているとはいえ、自身の声がちゃんと届いているのか不安なくらいである。

「――については存続を考えています。他の立候補者の皆さんは廃止を公約にしていますが、僕たちがこれまでネット上でも我が校の生徒として恥ずかしくない振るまいができたのはアイコンを――」

 床に座る生徒たちの表情の中に、あからさまな不満を浮かべる顔が目立ってきた。

「反対!」

「廃止しろ!」

 野次が飛び始める。拒否されるであろうことは分かっていた。でもスピーチを止めるわけにはいかない。公約を取り下げるわけにはいけない。それが正しいことだと言われたからだった。正しいことをやれと言われたからだった。止めることはできない。頭が痛い。

「帰れ!」

「そうだ帰れ!」

「帰れ!帰れ!」

 バラバラだった野次はついに帰れの大合唱になってしまった。頭が痛い。マイクを通したスピーチは完全に生徒たちの声に埋もれてしまったようである。ひどく頭が痛い。

 帰れるものなら帰りたい。でも帰るわけにはいかなかった。正しいことは続けていかなければならない。そう言われた。途中で止めれば間違っていたことになってしまう。やり過ぎなんじゃないかと言って苦笑いした担任の教師の顔をふと思い出す。

 生徒たちはぴったりと声をそろえて帰れと叫び続けている。にもかかわらず、男子の、女子の、一人一人の声がはっきり聞き分けられ、頭に刺さるような気がした。

「僕は――僕は――」

 ひどく頭が痛い。



 公立の学校の体育館の中が、全国どこでも似たような造りになっているとマスケラが知ったのは最近のことだった。だとすれば転校したところであの日の光景から逃れることはできなかっただろう。

 マスケラの部屋の窓からは公立中学校の体育館が見えた。おかげで朝の光を部屋に入れようとすると、決まって陰鬱な気分も心に侵入してきた。

(おはよう諸君)

(おはよー。そのあいさつ作戦おわるまで毎日やるつもり?)

(もちろんだ。ジャッカル、起きろ。今日は重要イベントの日だ)

(――あと五分)

 マスケラはため息をつくと、ベッドの枕元に置かれた目覚まし時計を手に取った。



 二時間後、三人は朝の海水浴場にいた。

「今日は一日曇りだって。日焼け止め無くても良かったかな。でも万が一仮面の跡がついたらまずいよね」

「勘弁してくれよ。俺朝は弱いし、隣の部屋のお経のせいでろくに眠れてねーんだよ」

「止めさせたんじゃなかったの?」

 ストライプが聞くとジャッカルはどんよりとした視線をこちらに向けた。

「無理やり止めさせたよ。止めさせたけどさ、その日の夜に半透明の女が俺の部屋をすりぬけて隣の部屋へ入ってったんだよ。幽体離脱の能力持った異能者が!」

「それで結局再開させたのか」

「お経かけておかないとひっきりなしにやって来て嫌がらせするんだってよ」

 言い終わるとジャッカルは大きなあくびをした。

「ところでさ、少し早すぎたんじゃない?」

「集合時間三十分前か」

「あと五分寝れたじゃねーか!っていうかテレカンファレンスの中で目覚まし鳴らせるなら最初に言えよ。びっくりするだろ」

「びっくりさせるのは目を覚まさせるためだ。工作員見習いに物真似が上手なやつがいて、そいつのレパートリーをいくつか記憶している。ところで――」

 マスケラは辺りを見渡した。まだ人の姿はほとんど無い。

「他の参加者が来るまでに話しておくことがある」

「後にしようぜ。とりあえず眠気覚ましにひと泳ぎ」

「今泳ぐの?」

「おうよ。ちゃんと家から海パン履いてきたしな」

「小学生かっ!」

 ジャッカルがズボンを脱ごうとしたがマスケラが制止した。

「止めたほうがいい。今年はお盆前からクラゲが大発生しているってニュースになっていたぞ」

「マジで?人がいないのはそのせいか」

 人がいないどころか海の家も全て休業状態だった。犬を連れて散歩をする人が何人か見られる程度である。

「ってことは今日はひたすらゴミ拾いか。だりーな」

「だが我々にとっては重要イベントだ。レイディアントハンドや雪月花のような人気ヒーローに対抗する数少ない手段といえる」

 がっくりうなだれるジャッカルとは対照的に、マスケラの声には張りがあった。

「まず、正しさとは相対的なものだ。これは分かるな」

「金拾った時に財布から平気で諭吉抜き取るやつより小銭ならパクるやつの方がちょっとだけ正しいって話だろ?」

「そうだ。そして、本人の性格だけでなく他人が抱く印象も同じことが言える。正しい行いを多くアピールすれば、より正しい人間という印象を抱かせることができる」

「面倒くせえ」

「そうでもないさ。たとえば、深夜の病院に宿直で残る医者よりも、毎日十数件のニュースに対して良識に沿ったことを言うワイドショーのコメンテーターの方がなんとなく正しい人のような印象を受ける。大衆の心理とはそういうものだ。正しい行為の労力よりも、アピールできたかどうかが重要になる。あとは数をこなすことだ」

「正義ってやつは、つまりせこいんだな」

「そういうことだ。幸い、我々は仮の身分として大学に籍を置いている。社会人のヒーローよりは自由になる時間が多く点数を稼ぎやすい。作戦の都合上目立ち過ぎるのは困るが、大衆の支持もある程度は必要だ」

 マスケラはスマートフォンを取り出した。

「今日のゴミ拾いのようなボランティア活動も大事だが、何よりもSNSだ。異能連合の肩書があれば注目を集められる。毎日何件かニュースを取り上げて、もっともらしいコメントを添えろ。それが正しさの総量を増やす一番の近道だ。見ろ、ストライプを」

 話を聞き飽きたのだろう。いつのまにかストライプはスマートフォンのカメラで自撮り写真を量産していた。

「今日の活動をSNSで報告するための写真だろう。彼女は既にストライプの名でアカウントを作っている。ジャッカルもアカウントを作るといい。なるべく利用者の多いSNSを利用するんだ」

 話をするうちに遠くから見覚えのある人影が近づいてきた。銀色のマスクに全身をぴっちりと覆うスーツ――だが今日は下半身は海パンのみというかなりアブノーマルな温もりおじさんである。両肩からは二つの巨大なカバンを下げていた。

「やあ、おはよう。ちょっと遅れちゃったかな」

「いえ、集合時間十五分前です」

「良かった。もうそろそろ他の人たちも到着するからある程度集まったら始めよう。午前中いっぱいゴミを拾ったらお昼にして、その後はひと泳ぎしようか」

「いえ、今はクラゲ大発生中です」

「マジで?」

 ストライプがため息をついた。

「ちょっとよろしいですか?」

 温もりおじさんがやってきた方から警察官が駆けてきた。若い警官が一人、少し遅れて年配の警官が一人。

「失礼ですが身分証明書をお持ちでしょうか。ああ、あなたの方です」

 若い警官は温もりおじさんに向かって言った。

「どうしました?」

 カバンから取り出した身分証を渡しつつ温もりおじさんがたずねた。

「不審人物が海岸を歩いているとの通報が入ったので」

「そうですか。では、我々もゴミ拾いしつつ周囲の警戒にあたります」

「いえ、そういうことではなく――異能連合?」

 身分証に目を通した警察官が驚きの声を上げた。

「はい、異能連合立川支部の温もりおじさんです」

「あー、やっぱりあんただったか」

 年配の警官がようやく追いついた。

「そうか、今年ももうゴミ拾いの時期なんだな」

「はい。ところで不審者が出たそうですね」

「あんただ、あんた」

 年配の警官は苦笑いした。

「ゴミ拾いはともかくその格好は何とかならないもんかね」

「こう見えてもけっこうこだわりがあるんですよ。マスクとスーツは異能連合結成以前にレイディアントハンドが着てたのと同じデザインで――今日は上半身だけですけど」

「若い人らはもう知らないだろうからなあ」

「とにかく、あんまり変な格好でうろつかないでくださいね」

 身分証を返すと警官たちは帰っていった。



 シーズンを過ぎた砂浜にはサンオイルの匂いが染み付いていた。ロケット花火の残骸やアイスの袋でマスケラのゴミ袋はすぐに膨らんだ。

(まさかレイディアントハンドが辞めるなんてなあ)

(別にいいじゃない。作戦は今のところ継続中なんだし)

(ストライプの言う通りだ。想定外の動きはあったが、当初の目的は達成できている)

(戦闘員として言わせてもらうけどな、異能連合最強の男を野放しにすればどんな奇襲を食らうか分からないぞ)

(心配は無い。異能連合を離れたことにより、レイディアントハンドは異能特措法の対象外になった。リヴァースドの構成員や犯罪者を殺せば殺人罪で逮捕される。だからといって逮捕拘束しようにも全てを粉砕する金色の手では不可能だ)

 マスケラは、砂から顔を出しているアルコール飲料のビンを引き抜いた。現れたビン底は砕けて半分無くなっていた。

(それよりも選挙はどうするの?)

 代表が辞任したことで、異能連合は次の代表を選挙で決定することになっていた。現在のところ立候補しているのは、国民の支持率第二位のプラチナリングと第三位の雪月花である。

(プラチナリングは反レイディアントハンドで、雪月花がレイディアントハンド派だったっけ?俺らはプラチナリングに投票すればいいのか)

(そうだ。選挙の結果はどうあれ、我々は反レイディアントハンドのプラチナリングを後押しすることになる)

(アタシあいつ嫌い)

(個人の好き嫌いはこの際こらえてくれ。異能連合第二位の支持率は無視できないからな)

 額の汗を拭うと、マスケラは辺りを見渡した。いつの間にか海水浴場の外れまで来ている。手から下げているゴミ袋はずっしりと重くなっていた。

(代表戦が終わったら若手を中心にプラチナリングのサポートチームを作るとしよう。サポートチームのメンバーはテレカンファレンスの専用チャンネルに常時繋いでおく)

(まさかアタシたちもそのサポートチームに入るの?)

(もちろんだ。サポートチームを使ってプラチナリングを間接的に手駒にする)

(本気で言ってんのか)

(小人数の集団なら、あの会議よりも意見の誘導は簡単だ。そして、自分のために集ってくれるボランティアたちの意見を無視することは難しい。サポートチームの意見は他の誰よりもプラチナリングの行動に影響を与えるようになる)

「そろそろ時間なので集めたゴミを持ってきて」

 集合場所から温もりおじさんの声が海水浴場に響いた。そろそろ正午が近い。

(負い目というものは人をコントロールする上で便利なものだ。我らが立川支部長を見ろ。あんな格好で警官に連れて行かれなかったのも、毎年のボランティア活動があればこそだ)

 温もりおじさんの上半身はいつものマスクにぴっちりスーツで下は海パンのままである。着替えは持ってきて無いようだった。



「燃えるゴミはこっちに集めて。ガラスの破片は大人たちにまかせて触らないで」

 温もりおじさんの呼びかけでゴミ袋を手に子供たちが集まってきた。

 ゴミ拾いのボランティアには、異能連合の若いメンバーだけでなく家族ぐるみの参加者もいた。子供たちは比較的軽い燃えるゴミの担当である。

「だいぶきれいになったね。そろそろお昼にしようか。ゴミを持ってきた人から手を洗っておいで」

 マスケラとジャッカルは集まったゴミをまとめていた。子供たち一人一人の集めたゴミは少量だが、大容量のゴミ袋三つがすぐ一杯になった。

「君たち、そっちはもういいからお昼の準備を頼むよ。僕が持ってきたカバンを開けてくれるかな」

 温もりおじさんに言われてカバンを開けると、二リットルのペットボトルのお茶やジュースとともに折り畳まれた数枚のレジャーシートが入っていた。

「何だこりゃ」

 ジャッカルが開けたカバンには大きな立方体が二つ入っていた。重箱のようである。

「五段重ねかよ。初めて見たぞこんなの」

「今日のお楽しみだよ。とりあえずレジャーシートを敷いて」

 プラスチックの固定具を砂に挿し込み、広げたシートを並べていくと、学校の教室の半分くらいの広さになった。手を洗って戻ってきた子供たちがサンダルを脱いで上がり、歓声を上げて走り回る。

「こら、走り回っちゃダメでしょ」

 紙皿とコップを買いに行ってたストライプが戻ってきた。

「二人も手を洗ってきなよ。後はアタシたちがやるから」

 買い出しから戻った他のメンバーが持ち寄った弁当をシートの上に広げていく。ストライプも温もりおじさんの重箱を取り出そうとする。

「何これ、重っ」

「危ないから一人で持っちゃダメだよ。その重箱は必ず二人で持ち上げて」

 集まったスチール缶を右手ひとつで縦につぶしながら温もりおじさんが言った。

 手を洗って戻ってくると、シートの上には色とりどりの弁当が広げられていた。

「好きな飲み物を注いでね。食べる前にみんなで乾杯しよう」

 温もりおじさんから紙コップを手渡されたマスケラは、烏龍茶を注ぐと空いているスペースに座った。

「飲み物は行き渡りましたか。じゃあそろそろ始めましょう」

 温もりおじさんの隣にいた髪の長い女性が参加者を見渡した。準備が整ったのを確認すると、温もりおじさんが立ち上がる。マスクの口元が開いた。

「立川支部長の温もりおじさんです。今年もゴミ拾いへのご参加ありがとうございました。異能連合はリヴァースドの壊滅に成功しましたが、こうしたボランティア活動は今後も可能な限り続けていきましょう。それでは乾杯!」

「乾杯!」

 ゴミの無くなった海水浴場でにぎやかな昼食が始まった。

「さあ君たちも食べて食べて」

 温もりおじさんの持ってきた重箱の中身は半分以上が白かった。五段の重箱二つのうち三段におにぎり、三段にサンドイッチが詰まっている。

「丸いのが梅干し、三角が昆布、ゴマをふってあるのが鮭だよ。サンドイッチはこっちがハムでそっちがシーチキン、煮リンゴもあるよ」

 リンゴサンドは既に子供たちが取り囲んでいた。

「もしかしてこれ全部自分で作ったんですか?」

 ジャッカルが聞くと温もりおじさんがうなずいた。

「もちろん。弁当屋でバイトしてるからいろいろ作れるよ。揚げ物とチャーハンは無理だけど」

 他の重箱にはおかずが詰められているが、卵焼きやアスパラの肉巻などで揚げ物は一つも無かった。

 マスケラは背後に気配を感じた。小さな男の子がよちよちこちらに手を伸ばしていた。

「うわっ」

「止めなさい」

 男の子の母親があわてて連れ戻しにやってきた。

「素顔を隠して活動するヒーローの仮面を取ったらダメだよ。といってもカルネヴァーレの三人は初参加だから知らない子もいるか。じゃあ改めて自己紹介してもらおう」

 温もりおじさんに言われてマスケラは立ち上がった。子供たちの半分はまだサンドイッチに夢中である。

「立川支部チームカルネヴァーレのリーダーを務めるマスケラです。異能連合へは今年から参加しました。リヴァースドは壊滅しましたが今後も――」

「レイディアントハンドとケンカした人だ」

 小学生くらいの子供のが叫んだ。その場の空気が一瞬で凍りついた。大人たちの視線が泳ぐ。レイディアントハンドが異能連合を辞めた後、マスケラはワイドショーのインタビューを受けたことがあった。ある程度の歳以上の子供や大人たちにはマスケラが何をしたか知れ渡っているようだった。

「ケンカとは違います。異能連合の活動が過激にならないように、皆に冷静になってほしかったんです。レイディアントハンドが異能連合を去ってしまったのは残念でしたが」

 さっきまで和やかだった食事の席には、重い沈黙が漂ってしまった。

「きっとレイディアントハンドにも思うところがあったんだろう」

 大人たちは目を伏せていたが、温もりおじさんは真っすぐにマスケラを見つめていた。

「彼が言った通り、リーダーを同じ人があまり長く務めるのもよくない。リーダーを辞めても組織に残れば、彼の判断にを頼ろうとする人が多くなって新しいリーダーの活動を妨げるかもしれない。いったん組織を離れるのは妥当な判断だったと僕は思うよ」

「私は――」

 先程マスケラの仮面を取ろうとした幼児の母親が口を開いた。

「正直なところほっとしました。逆位置の世界(リヴァースドワールド)が倒されれば追い詰められた構成員によるテロが起きるという噂もありましたから、異能連合の方針を改めて確認できたのは良かったと思います」

「逃亡中のリヴァースド構成員に対しては、テレビCMや各種広告で自首を呼びかけることになったからね。小人数で行動している構成員から徐々に逮捕者が出てきているから、秘密基地突入の時のような大規模な戦闘はもう起こらないだろう」

 温もりおじさんが断言すると、緊張気味だった幼児の母親はほほ笑んだ。

「はい。この子もまだ小さいし報復の連鎖が始まって巻き込まれたらと不安だったので――マスケラさんが会議で発言してくれたおかげです」

 家族ぐるみでゴミ拾いに参加したメンバーには、彼女の言葉にうなずく者が多かった。

「あのまま緊張が高まれば、自首どころか再結成する危険性もあったはずだ」

「リヴァースドは身内の裏切りですら容赦ないからな。組織を抜けた幹部が警視庁の中で襲われた事件もあった」

 堰を切ったように皆が思い思いの意見を話し始めた。ざわめきが収まったところでマスケラは再び口を開いた。

「リヴァースドの起こした事件の解決は、構成員や幹部を倒すことではない。私はそう思っています。彼らを逮捕し、事件の全貌を明らかにして裁判を行うことが事件の解決と言えるでしょう。今後も事件解決のため、異能連合の一員として積極的に活動していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」

 言い終えて一礼すると、皆から拍手が起こった。

「異能連合の次の任務は新代表の選挙だ。立候補しているのはプラチナリングと雪月花だから、どちらに投票するか皆よく考えておいてね」

(ここにいる連中はプラチナリングに入れるのか)

(いや、そうとは限らない。わざわざ私の意見に反対を表明してこの場で議論を始める意味が無いだけだ)

「それじゃ次はジャッカルくん」

 指名を受けてジャッカルが立ち上がった。

「チームカルネヴァーレのジャッカルでーす。今日ゴミ拾いに参加した皆さんには俺の三つの秘密を教えちゃいます。まず一つ目!この仮面はフルフェイス型に変形します」

 ジャッカルが仮面の耳の辺りをいじると、頭部の上半分を覆っていた仮面の縁がせり出して頭部全体を覆いつくした。子供たちから歓声が上がる。

「二つ目!」

 仮面のマイクを通してジャッカルの声が響いた。

「この仮面のマズルの部分、実はやわらか素材でできてます」

 ジャッカルが仮面のマズルを手で押し潰したり伸ばしたりして見せると、子供たちからさらに大きな歓声が上がった。

逆位置の世界(リヴァースドワールド)が倒されたからって、こいつら皆気が緩んでるな)

(結構なことだ。報復テロなどといううかつな行為など必要ない。この機を利用してリヴァースドは組織を再編し、我々は異能連合の結束にひびを入れることができる)

 平和な食事風景の仮面一枚下に陰謀が渦巻く。そのことを知る者は、未だマスケラたち三人だけであった。

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