冥王星へ出撃2
「通達します……!宇宙船に侵入者確認!通達します!宇宙船に侵入者確認!戦闘員は直ちに侵入者を排除してください!」
やかましいサイレンと共にやって来た。忌々しいあいつらが。
「戦闘準備は既に出来ている……侵入者を排除する!」
無線のスイッチを入れ敵の位置を聞く。
「秋山哲人少佐、ダクトエリアに侵入者です、排除をお願いします!」
「わかってる。敵の数とクラスは?」
「レザムが10体、アザムが3体。それからフォルが1体です。アロスの小隊かと思われます。」
「了解。10分以内でケリを付ける。」
「それから……コントロールルームへは近づけないでください。あそこがやられるとこの宇宙艦もただではすみません!」
「ああ。任せておけ。……通信を終わる。アウト。」
なぜ、こんなことになっているのか?……時は遡り約2分前。冥王星まで後10分程で着くところだった。目的地まであと少しというところでこの艦が”襲撃”された。強い衝撃とともに奴らの宇宙船からアロス兵が出てきたのだ。そのままダクトへ侵入され今現在に至る。
しかしもうこんなところまでアロス軍が進出してるとなるとこれからの作戦、支障が出なければ良いのだが……頭抱える問題ではあるが今は敵の殲滅に全力を注ごう。
装備を確認しつつ侵攻されてきた場所へ向かう。あまり被害が出ないように戦わなければ……
「秋山少佐!こっちです!」
「分かった。」
この艦の乗組員の声がした方へ急ぐ。まだサイレンは鳴り続けており艦内はパニック状態に陥ってるが冷静さを保たなければ。
ズドォォォンン!
「うわあ!?」
「どうした!?」
通路の横のドアがいきなり吹っ飛んだ!?馬鹿な、まだダクトエリアは遠いし第一今吹き飛んだドアは観測室だぞ!?
「グルゥゥゥ……」
「で、出たあああ!」
「慌てるな今助ける!」
大きくもない上装備も貧弱、見たところレザムだ。大したことはない!
「はっ!」
攻撃をされる前にこちらから仕掛ける!
ズガガ!
「グルゥ!?」……ドサ。
「レザムはやはり大したことはないな……ドアをふっ飛ばしたのもこいつじゃないだろう……」
「え……じゃあ一体誰が?」
それが今喋った乗組員の最期の言葉だった。
ズガァッ!グチャッ……
乗組員の首から上が一瞬にしてグロテスクな音とともに消え失せた。
「貴様ら地球人も戦闘力がない奴は大した敵でもない。」
全体的にごつい体つきをしているが、こいつ……フォルか。俺達人間の言葉を話せている、フォルクラス以上ともなれば地球の言葉も喋ることができる。憎たらしい事この上ないぜ……
「こんな警備もロクになっていないような艦に乗ってるやつなんざ大したことないと思っていたが……よりによってなんだ?超兵士が乗ってやがる。まあいい、ぶっ倒して……!?」
「お喋りがすぎるぜ、フォル1体ごときに超兵士が”苦戦”すらすると思うなよ。」
バン!……
「フォルでも頭を撃ち抜きゃ所詮それまでだ。」
捨て台詞を吐きながら艦内に入った敵を探しまわる。……いないな。さっきの情報からするにレザムとアザムがまだ残っているはずなんだが。別の乗組員が始末したのか、それとも逃げ出したのか?レザムや、まれにアザムは部隊長クラスが死ぬと戦場から逃げてく場合がある。
今戦ったフォルが死んだのを何かしらで感知して逃げたのかもしれんな……
「よくやってくれたわ、秋山くん」
「博士……無事でしたか。」
エイラス博士は無事だったようだ。目立った外傷もないようだし一安心といったところか。
……次の博士の言葉を聞くまでは。
「秋山くん、もうそろそろ冥王星に着くわよ。」
「……え?」
頭が真っ白になった。どういうことだ?……まさか。
「……攻撃を受けてたのにもかかわらずそのまま進行してたんですか。冥王星に向けて。」
「乗組員には止められたけどね、私は待つのって嫌いなのよ。昔からせっかちだから。どうせ秋山くんが処理してくれると思ったしね。」
なんて人だ……この人の大胆さというか無鉄砲さというか、その辺のことは分かってたつもりだったがここまで来ると逆に恐ろしいという域にまで到達するな……
「さ、もうそろそろね。行くわよ秋山くん。」
「了解。」
半ば呆れつつも歩みを続ける。
……これから赴く地の不安を抱きながら。