冥王星
「準惑星プルートゥ、別名冥王星に出撃してちょうだい。」
冥王星。約580年前ほどに発見されたとされる惑星で、太陽系の9番目の惑星でもあった。かなり昔に定義が変更され準惑星となったと言われている。
今では惑星の循環(※)によって住める星となったが最初にアロスはここを狙ってきた。
※惑星の循環とは人類が生み出した惑星循環器と呼ばれるもので、地球と同じ環境にし人類が適応できるようにしたものを指す。惑星の循環にはおよそ10年かかる。
「……エイラス博士。正気ですか?あの星はわずか半年で大体半分ほど制圧されたんですよ、現在は超兵士によってどうにか現状維持できていますが……本部は既に冥王星を捨てたも同然なんですよ。」
「関係ないわ。それに菅野博士、私が捨て身で超兵士、それも私直々に育て上げた子を何の目的もなく死地へ放り込むとでも?」
「それは……」
「悪いけど私も準惑星プルートゥの奪還はまず無理だと考えているわ。今までの戦争では使ってこなかった新兵器がうじゃうじゃいるもの。対策の練りようがないわ。」
「それではなぜ?」
「残っている人民を脱出させる……というのもあるけどそれよりも更に重要な事を任せるつもり。でも、まだこの作戦は言えないわ。」
重要な事を……
「博士、冥王星での作戦はどのようにすれば。」
「秋山……本人が言うなら止める意味もなし、か。俺も出来るだけのサポートはしよう。」
「承諾してくれたようね。秋山くん、君の任務はまずプルートゥに出撃中の超兵士チームである【リヴァイ】に同行してちょうだい。そのチームの任務は人民を避難させることだけど……しばらくしたらあなたのもう一つの重大な任務を任せるわ。これが成功すれば少なくとも今の状況は打開できる可能性が出てくる。」
今の状況を打開?俺にはよく理解は出来なかったが、博士も言ったとおり俺はまだ知らなくていいことだ。今は、聞かされた任務を忠実にこなしていくのが先決だ。リヴァイチームとやらの詳細も聞いておきたい。
「博士、リヴァイチームについてお聞かせ願いますか。」
「リヴァイチームに関しては俺のほうが知っている。俺が話そう。」
そう言って菅野さんは話を始めた。
「リヴァイチームの構成は6人。チームとしては人数が少ないが精鋭揃いだ、心配する必要はない。男が2人女が4人。」
「女性が4人……ですか?」
「最近では珍しいことでもない。むしろ超兵士への覚醒係数は女性のほうが高いという説もある。……続けるぞ。このチームは珍しくコードネームを必要時以外は使っていない。まあそのほうが互いの心情がよく解りやすくなるとも言えるが。リーダーがアレックス・ロータス、性別男。主に作戦などを立案したり司令本部に確認を取る仕事をしているのがブライアント・ローズ、性別男。前衛を担当して、陽動作戦などを主に行うのがセリス・ジーター。チームのメディック担当兼スナイパーのナオミ。彼女だけはファミリーネームが不明だ。」
「不明……ですか」
「どうやら、2400年後期に増えたらしいな……理由も不明だ……」
「はぁ……」
苗字……いわゆるファミリーネームがない。親とのつながりがわからないということでもある。悲しむべきところではあるが俺が踏み込んで良い領域ではない。そのまま話を聞いていよう。
「話がそれたな。残りの2人は両者とも日本人だ。……さっき研究員から通信で聞いたんだが片方はお前の知り合いのようだな。」
「そうなん……ですか?」
菅野博士は間を置いてから俺の知り合いだという人物の名を言葉にした。
俺は、動揺を隠せなかった。