むかしむかしのそのまたむかし
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「“アーサーボルトに生まれた者は、亜人と共にあり、互いに護り合い、互いに助け合い、いつか人と亜人を繋ぐ架け橋とならん”僕たちの祖先――イグニス・アーサーボルトが遺した言葉であり、アーサーボルトの家訓でもある言葉だ」
ライは、とにかくカイルの話を最後まで聞くことにした。
そうせざるを得ない空気が、この書斎を支配していた。
「ライは、昔お母さんに聞かせてもらった“イリスの童歌”を覚えているかい?」
「はい。自分の部屋で寝るようになるまで、時々、子守歌代わりに歌ってくれていましたから」
【イリスの童歌】はテクシスリウス王国建国以前から民達の間で伝承されてきた童謡の一つであった。
誰が創り、いつ何処で歌われ始めたのかは不明だが、その歌詞の内容から、少なくとも創られたのは千年近く前だとされている。
王国の各地方によって微妙に歌詞や節奏に違いがあったりするが、大まかにはこういう歌である。
むかしむかしのそのまたむかし。
イリスのめがみがせかいをつくった。
みんながなかよく、くらせるせかい。
むかしむかしのそのまたむかし。
いりすのめがみがみんなとわらった。
みんななかよし、しあわせだ。
むかしむかしのそのまたむかし。
だれかとだれかがけんかした。
いりすがそれみてないちゃった。
むかしむかしのそのまたむかし。
いりすのなみだがそらからふった。
みんながなかよく、できないからだ。
むかしむかしのそのまたむかし。
なみだがだいちをわっちゃった。
みんながなかよく、できないからだ。
むかしむかしのそのまたむかし。
となりのみんなとあえなくなった。
みんながなかよく、できないからだ。
むかしむかしのそのまたむかし。
なかよくするならまたあえる。
みんななかよく、いりすがいった。
「ライはあれを聞いてどう思った?」
「正直、子守歌には向いていないかと……。特に後半はあまり好きではありません」
ライは六年前に言葉を交わした女神のことを想った。
「そうかもしれないね。でも、あれを代々子供の頃に聞かされるのも、アーサーボルトとして義務付けられたことなんだ」
そこで、カイルはライを真っ直ぐ見た。
「あそこに歌われていることは、全て本当にあったことなんだ」




