想いの微笑み
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屋敷に帰ったライ達を出迎えたのは、血相を変えてライを探し回っていたリースとアリスだった。
ジュウベイが事の次第を話すと、あまりの事態の深刻さに、リースは気が遠くなり、倒れそうになった。
だが、そこは長年領主の夫を支えてきた妻――すぐさま、我を取り戻し、まずアリスに、サクヤをベットで休ませるために、客室への案内を頼んだ。
それが終わると、ライ達と共に戻ってきた他の使用人達にも、タオルやお湯の用意など、矢継ぎ早に的確な指示を飛ばしていった。
サクヤを抱えたジュウベイがその場を後にし、指示を実行に移すべく使用人達もその場を離れると、その場に残ったのは母と息子、そして母の胸元で眠る娘だけだった。
「――ライ!」
リースが涙を浮かべながらライを抱きしめた。
それはアイを抱えたままだったので、ライは二人のぬくもりを同時に感じることができた。
「本当に、無事で、良かった」
リースの涙が、ライの肩を濡らす。
「……母さん、ごめんなさい」
雷蔵であったときから、女の涙には弱いライであった。
「良いの。今は、ライとサクヤちゃんが、無事だっただけで……。た、だ、し! 後でお父さんと一緒に思いっきり叱るからね」
そう言ったリースの泣き笑いの表情を、ライは生涯忘れることはなかった。
しばらくしてカイルが戻ってきたとき、ライ達はまだ抱き合ったままであった。
「――ライ!」
カイルもその輪に加わり、ライを抱きしめた。
先程の現場の光景が、未だに脳裏に焼き付いているカイルではあったが、そんなことよりも、今はただ、改めて息子の無事を確認したかったのだ。
「……父さん、ごめんなさい」
「良いんだ。今はただ、お前とサクヤちゃんが無事なら、それで……」
そうして、長い間、アーサーボルトの家族達はお互いのぬくもりを確かめ合っていた。
しばらくすると、使用人の一人が医者を連れて戻ってきた。
まだ抱き合ったままであったライ達は、それがきっかけで身体を離した。
リースが、医者をサクヤの元へ案内しようと声をかけたが、サクヤの様子を確認したかったライが、それを引き取った。
「俺が案内します。こちらへ」
サクヤが寝ている寝室に向かうライを、カイルとリースは黙ったまま見送った。
その姿が見えなくなったところで、リースがカイルに尋ねた。
「本当なの? ライが人を……あ、殺めたって……」
「……ああ。実際に見たわけじゃないが、ライ自身がそう言った。そして、確かに三人の男が死んでいた」
「でもあの子はまだ六歳になったばかりよ? 自分の何倍も大きい男の人を、その……こ、殺すことなんてできるの?」
「普通に考えたら無理だ」
特にあんな鮮やかな殺しは、とまではカイルは言わなかった。
「だったら――」
「詳しいことは僕にも判らない。とにかく、後でライと話してみるよ」
「ええ、お願い」
「リース」
「何?」
「予定より四年も早いけど、アーサーボルト家の事をライに話そうと思う」
「あのことを? もう?」
「そうだ。ライは知っておいた方が良いと思う。それも、出来る限り早く」
「あなたに、任せるわ」
「わかった。今夜伝えるよ」
「――ほぎゃあ! ほぎゃあ! ほぎゃあ!」
「あら? アイ、起きちゃった? お腹が空いたの? 待ってて、すぐに上げるからね」
リースは、アイの世話をするために、寝室に戻っていた。
「……」
カイルはそれを静かに見送った。
(アーサーボルトの事情は、リースにも結婚前に伝えてはいる。だが……)
十歳の時の父の顔が、カイルの脳裏にまた蘇った。
(当主だけが知ることを許された“輪廻転生”については、妻は何も知らない……)
〝それは選ばれた者だ〟
(果たして、本当にライが“そう”なのか?)
嵐となった外の風が、屋敷の窓を大きく揺らした。




