人斬り
よろしくお願いします。
『汝如法に見解せんと欲得すれば、但だ人惑を受くること莫れ。裏に向かい外に向って、逢著すれば便ち殺せ。仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺して、始めて解脱を得、物と拘わらず、透脱自在なり』
ただこの一心で人を斬った。
織田を斬った。
斉藤を斬った。
毛利を斬った。
島津を斬った。
大友を斬った。
長宗我部を斬った。
本願寺を斬った。
今川を斬った。
武田を斬った。
上杉を斬った。
北条を斬った。
伊達を斬った。
南部を斬った。
数多の戦場で、斬って斬って斬りまくった。
百を超え、千を超え、万まで届けと人を斬った。
塚原卜伝など歯牙にもかけず、上泉信綱など何するものぞ。
仏に逢うては仏を斬り、祖に逢うては祖を斬り、羅漢に逢うては羅漢を斬り、父母に逢うては父母を斬り、親眷に逢うては親眷を斬って――
(解脱し来たのがこの世界か……)
戦国の、群雄割拠の時代にあって、ただ一人、全ての大名から恐れられた人斬り――石動雷蔵。
種子島が普及するまで、かの人斬りを召し抱えることこそが天下統一への近道とさえ言われた戦人。
そんな彼が転生したのは、《イリス》呼ばれる、人と亜人の世界だった。