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異世界で まつざかぎゅう


 僕たち帰宅部は、五人いる。

 まず、エスカリオス教会の至宝とうたわれる伝説の神官、ヒミリアさん。

 この魔王城の主にして世界に混沌をもたらすもの、スベテさん。

 ミフユさん(謎)。

 勇者の僕。そして――


「くたー……」


 たたみ部屋のすみっこに、力がぬけきった小動物のような女の子がいる。

 この子は、成宮レトちゃん。

 僕らは、ここ帰宅部では、元の世界の名前でよびあっている。

 つまりこの子も転生者。

 ある日にヒミリアさんが連れてきた。

 帰宅部に入部して、一番日が浅い子だ。


「ねえ、レトちゃん。こんにちは。ゲーム楽しい?」

「くたー……」


 しゃがんで、声をかけてみた。

 けれどレトちゃんは、眠そうな顔で、うつぶせから動こうとしない。


「あらら? ミチトちゃん、なにをやっているの?」


 ミフユさんも僕の隣にしゃがみこんできた。


「今日の声かけです。レトちゃんは、声をかけてあげると一日幸せな気分になっているらしい……って、ヒミリアさんが」

「素敵ねえ、うん、子供に声をかけることは大事よ」

「返事がないから、効果はよく分からないんですが……」

「――あら。そうかしら?」


 ミフユさんは、僕にお茶をわたしてくれる。


「ちゃーんと見てあげないといけないわ、ほら」

「ん……」


 目をこらして、レトちゃんをよーくみてみた。

 ……タイツをはいた足の指先が、くにくにーっと、動いている。


「こ、これは、さっきの返事だと思ってもいいんでしょうか」

「そうねぇ」


 さすがミフユさん、子供を見る目に関しては一流だ。


「でもレトちゃん、足でお返事をしちゃだめよ? めっ」

「……」


 叱ると、レトちゃんがもぞもぞっと動き出す。

 顔をあげて、まあるい、ぽけーっとした目で僕たちのことを見つめてきた。


「……ごめんなさい」


 謝られた、かわいい!


「お部屋にこもっていると、牛になっちゃうわよ~」

「……まつざかぎゅう……?」


 レトちゃんはローブの袖をつかんで、体をちぢこませる。


「まつざかぎゅう……めっちゃたべたい」

「あら、んー……残念だけど、松阪牛はここにはないわねぇ、高いもの」


 ミフユさんが申し訳なさそうに、片手を頬にあてた。

 レトちゃんは構わず、空中に指先をおどらせている。


「何してるのかしら?」

「あの、ミフユさん。レトちゃんは、ふだん魔法で自作のゲームをしているそうなんです。僕たちは魔法が使えないので見えませんけど……」

「まほう? げーむ?」


 首をかしげられてしまう。


「す、すごいことなんですよ。魔法でプログラムを組むなんて。この世界でのレトちゃんの名前は、魔法使いエクシリア。西で魔法文明が盛んなのは知っていますか? レトちゃんは僕たちと会う前、大魔法使いウエストアイプの生まれ変わりと言われるていたそうで――」

「あらぁ」


 やっぱり、ミフユさんには首をかしげられてしまった。


「現代っこなのね。私はダメダメ、今時のものには疎いのよ~」


 ミフユさんに理解を求めるのは、あきらめよう。


「ところで、レトちゃんは、どんなゲームしてたのかな」

「……たべるゲーム」

「食べるゲーム?」

「そう、まつざかぎゅうをね、つかまえて、焼く」

「うん」

「まつざかぎゅうたべる」

「うん」

「まつざかぎゅうおいしい」


 ……。


「高度な魔法をそんなことに?」

「……そんなこと?」


 レトちゃんにも、首をかしげられてしまった。







☆レトちゃん


とっても無口な女の子

猫毛ショートで、ぶかぶかのローブを着用

転生前も小さい女の子だった様子

大抵は寝ぼけまなこでダラけているけれど、生まれながらに天才的な頭脳をもっている

西の都でとってもすごい魔法使いとして活躍していたもよう

食べることが大好き

ヒミリアも大好き

かなり怖いものしらずのマイペースで、突飛なことばっかりしだす


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