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異世界で ペット


 巷で、空前のペットブームが起こっているのだそうな。

 僕らの住まう魔王城は、ぷかぷか浮いてる雲の上。

 地上の情報を仕入れるのは、スベテさんの配下たちだ。

 地獄の使いみたいな悪もの顔の魔物さんたちが、新聞や大衆雑誌などを親切に届けてくれる。


「わたしもペットを飼いたいと思う!」


 ちゃぶ台にひろげた朝刊に目を通して、スベテさんがおもむろに宣言した。

 瞳がキラキラしてて子どもみたいだ。角生えてる魔王なのに。


「ペット、ですか」


 世界の情勢はあまりよろしくない。飢饉だってあるし、国同士の戦争も各所で起こっている。僕は基本ギルドには無所属で、依頼などで単身世界を見回っている。

 ペットブームは初耳だったけど、毎日をクサクサと生活している一般人の方々だって、時には癒しや潤いは必要だよね。こういう流行は悪くないと思う。うん。 


「そうだ! こういうの! きゃるんとしたやつ!」


 スベテさんは、記事にピックアップされている、流行ペットを指差してくれた。

 現在の流行は、人間に慣らされた飼育用ミニサイズのドラゴンらしい。

 描かれたドラゴンたちは、セレブな方々によって宝玉で飾られたり衣服を纏ったりしているので、わりと富裕層の趣味かな。

 短い手足と背中にちょこんとついた翼が、たいへん愛らしい。

 もちろん目も尖ってない。うるうるきゃるんとしている。


「うんうん、可愛いですね」

「フフフそうだろう! きゃるんとしているのがいいのだ」


 別にスベテさんが所有しているわけでもないのに、自慢げだ。

 そこで、ちゃぶ台を囲むもう一人、静かに縫い物をしていたミフユさんが顔を上げた。


「ペットは大変よ。生き物なのよ。魔王さんちゃんとお世話できるの? 欲しい欲しいって最初だけで、すぐに飽きちゃって、結局面倒見られなくなるなんてことになったらかわいそうよ」


 のんびりしているミフユさんらしからぬ、どこか諭すような口ぶりだ。

 転生前にペットで苦い経験でもあったのだろうか?


「それに、うちは家計も苦しいし、節約しなきゃ。ね?」

「ぐぬぬ」


 魔王だからって、言いくるめられた時にぐぬぬはどうかと。

 というか家計ってなんだろう。いつからミフユさんは魔王城の家計を掌握していることになったんだ。


「大切にする、もん……絶対、かわいがるし、毎日お世話する。腹が立っても、消し炭にしたりしない」

「そっかぁ。魔王さんは、本気で飼いたいのねぇ」


 ミフユさんが破顔した。

 スベテさんは泣きそうになってた顔を、パッと輝かせた。


「いいのか?」

「魔王さんの気持ちを聞いて、安心したわ。よぉし、私に任せておいて」


 と、言って、ミフユさんは立ち上がって部屋を出ていった。


「やったぞミチト! ペット飼っていいんだって!」

「そもそも、ミフユさんの許可を得る必要があるのでしょうか」


 そしてすぐに、ミフユさんは戻ってきた。

 頭が犬で二足歩行の魔物に首輪をつけて、鎖で引っ張ってきている。


「……!」

「……!」


 僕とスベテさんは、絶句した。

 ミフユさんはニコニコしている。


「魔王さん、ペットを連れてきたわよ~」

「ち、違いますミフユさん、彼はペットじゃないです……! 魔王軍で四天王の一人と言われているアヌビクタリウス高官です……!」

「四天王? あらぁワンちゃんなのに偉いのね」


 絶対分かってない。

 二足歩行なのに。

 地獄の使いみたいな悪もの顔なのに。

 フシュー、フシュー、とか闇の波動みたいなの出てるのに。

 

「魔王さんも、毎日お仕事大変で癒しがほしかったのよね。さっきは厳しいこと言っちゃって、ごめんなさいね?」

「あ、あぅ」


 スベテさんが対処に困っている。

 僕に助けを求める眼差しを送ってきたので、全力で目をそらしておいた。


「魔王さんに自己紹介してね、アヌビクタリウスちゃん。ワンって」


 間。


「……ワン」


 彼は付き合いの良い魔物だった。


「ほーら、癒された」


 ちっとも癒されなかった。






☆ミフユさん


メイド服に金髪ふわふわ縦ロールの転生者

見た目はレトちゃんの次に幼いけれど、発言がいちいちちょっと年季をおびている

異世界に転生していることすら、分かっていなさそう

でも、ふわふわしているし、みんなのお世話が大好きなので、大体いつも幸せそう

転生前がどんな人だったかは察して


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