11月28日
「…………」
「…………」
おれとまりおさんは向かい合っていた。
あとほんの少し動けば、キスなんて容易く出来るような距離。
まりおさんの息が顔を撫でる。
「はっ…………」
朱に染まった頬、荒い息づかい。
おれの頬もおそらく、いや、確実に赤くなっているだろう(こたつに足つっこんでるからな)。
身体も固くなっていることだろうな。
なにせ――
「何してんだろうな、おれたち」
――お互いの頭に豚のぬいぐるみを置いて、バランスを取り合っているのだから。
「んおー!」
まりおさんがぬいぐるみを抱きしめる。
「んあー!」
おれはそれを取り上げ、腕の中に抱えた。
「んー!?」
「ん”ん”ん”ん”!」
豚のぬいぐるみを巡っての、醜い争いが繰り広げられる。
というか何やってんだろうね、おれたち。
いつもこんなもんだけどさ。
十八になったというのに、この付き合い。そこらの小学生の方がまだ彼氏彼女してるだろう。
しかしおれたちはこれで良いのである。
ふと、まりおさんを見ると、何故だか豚のぬいぐるみを撫でていた。
しかも、手つきがエロい。雰囲気もなんかエロい。
指先が上に行ったり来たりを繰り返し、やがてはぬいぐるみの頭のてっぺんにたどり着く。
そして頭を手の平で柔く揉み、それが終わると人差し指を一本立て、つーと下に徐々に滑らしていく。
指はぬいぐるみを過ぎて、おれの股間へと……またこの展開か。
さわさわとズボンの上から愚息を刺激される。
でも悲しいかな、いまはまったくそんな気分じゃないのよ。
いつまで経っても、勃たないおれの愚息に苛立ちを覚えたのか。
足でぐりぐりと股間を踏むまりおさん。
「ほらほら、これが良いん……いやああ! ダメー!」
いらっときたので、おれはその足首を掴んで、足の裏をぺちぺちと叩く。
「やだー! やだー!」
「ああん? 聞こえないな」
「ごめんなさい!」
まりおさんは足の裏が弱い。