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11月16日

「ん?」


「あ、地震だ」


 彼女と一緒に飯を食べていると、地震が来た。

 おれは飲みかけのマックスコーヒーの飲み口を片手で押さえた。


「震度3、いや4ぐらいか」


「4じゃないかな」


「しかしあれだな、揺れで大体の震度が掴めるとか」


「日本人の地震慣れパネエー」


 おれは土曜の夜は、基本彼女の家に泊まる。

 いつもならこの時間帯はスカイプを繋いでワイワイとお喋りに勤しんでいるのだが、知り合いは発売したメ○ロットで忙しいらしい。薄情な人たちだよまったく。

 カレーうどんをすすると、汁が飛び散った。

 それを目ざとく見つけた彼女――まりおさんは、むぅーと唸りながら濡れ布巾を差し出した。


「怒るよー、イッヒさん」


「いやいや、仕方ない」


「むー」


 潔癖症、とまではいかないものの、まりおさんは身の回りの汚れには厳しい。

 まりおさんとは付き合って二年半ほどになる。

 セミロングの髪に、眼鏡を掛けたおっとり系の女の子。

 高校一年の時に隣の席になったのがきっかけで付き合い始めた。お互い一目惚れだったらしい。

 まりおさんは現在学校を辞め、近所のコンビニでアルバイトをしている。

 おれはすでに進路――就職先も決まり、卒業を三月に控えている。

 なんやかんや色々あったけど、おれはこの娘が好きだし、まりおさんもおれのことを好いてくれている。

 それはとても幸せなことだし、実際幸せだ。


「そういやさ」

 

 うちの高校は不良やギャルが多い。また、女の中には派手なメイクや髪型で、指導をくらう生徒は後を絶たない。

 その中でも、おれが気になったある一年生の女の話をした。


「その子さあ、肌はまあ白い。でもデブで、太い足をわざわざミニスカートにして晒してんの。しかも目の周りが真っ黒」


「パンダ?」


「そう、パンダみたいに」


「ふーん。私さあ、わかんないんだよね。化粧をしてさ、可愛くなるならいいんだけど、何で酷くなってんの?」


 まったくだ。男のおれに言われても困るけど。


「あれじゃないの、自分が楽しむためのメイクみたいな」


「いやいや! わざわざ酷くする意味がわかんない。……あ、そういえばコンビニにさあ、ギャルが来たの」


「ほう」


「でね、レジに来たときにさあ、つけまつ毛の糊? みたいな白いのが目の周りにあるの」


「多分、糊じゃないの?」


 おれはつけまつ毛をつけるジェスチャーをした。

 そういや何でつけるのかね、あれ。全然似合ってないのに。


「まあ? 私はまつ毛元々長いから、そんなのつけなきゃならないやつの気持ちはわかりませんなあ!」


「イッヒさん男じゃん」


「まあね」

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