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カガク部!  作者: タカシ
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vs 図書委員会 ③

 猫とひとしきり遊んで満足した私は文集探しを再開した。べ、別に忘れてたわけじゃないよ。ただ猫ちゃんがあまりにも可愛かったものだから……つい……。


 さて、気を取り直して探そうか、うん。


 抱えていた白猫をえいほーくんに預け、本棚へと視線を移す。


「あれ……?」


 千葉くんの姿が見えない。もしかして、私たちが猫と遊んでいる間ずっと探してくれてたんだろうか。もしそうなら、ちょっと悪いことしちゃったなぁ。元々私が頼んでついて来てもらったんだし。後で謝っとかないと。


 本棚の間から千葉くんの姿を探すと、二つほど隣にある棚の前で何かを熱心に読みふけっていた。


「千葉くん、文集見つかった?」


「ん、ああ」


 声をかけても生返事。一体何を読んでるんだろう。


「…………」


 背後に回って上から覗き込む。背が高いとこういうとき便利だなー。


「なになに……」


 そこには米粒程の小さな文字がびっしりと並んでいた。それを見ただけで、とてもじゃないけど私には読めないと理解したよ、うん。む気力を根こそぎ奪い取られた感じ?


 早々に読むのを諦め、文集探しを再開。でも、棚を一つ調べ終えて思い知った。


「一人で探すと日が暮れちゃうよ……」


 こういう時こそ人海戦術! 皆で手分けして探すんだ!


「千葉くん! えいほーくん!」


 自分の事は棚に上げて二人に助力を請う。


 が、


「…………(ぺら、ぺら)」


「…………(げしげし)」


「うにゃー(ガブリ)!」


 ダメだこりゃ。


「分かった、分かりましたよ。もう自分だけで探しますよーだ!」


 男二人に対する怒りをエネルギーに換え、私は一人、本の海へと身を投じるのであった。トホホ……。



*   *   *



 こいつと出会ったのは、オレがこの学園に入学して一ヶ月が経った頃だった。


 あの時はほんとたいへんな目に遭ったものだ。思い出すだけで頭が痛くなる。


(そういえば、おぬし達は何をしにここへ来たのじゃ?)


 唐突にそんな質問を投げかけられ、オレの思考は現実へと引き戻される。


(ああ。文芸部の文集を探しにきたんだ。お前、どこにあるか知らないか?)


 千葉から伝え聞いた文集の外見を伝えると、すぐに返事が返ってきた。


(ふむ。確信はないが、おそらくあれの事じゃろう。付いてくるがよい。ワシじきじきにあないしてやろう)


(おお!)


 さすが、自称『図書館の主』!


 感心しながらそっと下ろしてやる。


「にゃぁ」


 一声鳴いた図書館の主は、付いて来いとでも言うように――実際にそう言っていたが――優雅に歩き始めた。


 それを追い歩き出そうとしてふと考える。このことを千葉と北村さんにも伝えるかどうか。


 逡巡は一瞬。答えはすぐに出た。


「黙っとくか」


 後で面倒な事になっても困るしな。



*   *   *



 地元史。そう銘打たれたこの本には、この地で起きた様々な事件が記載されていた。中には自分が小さかったころの事件なども載っており、卒業アルバムを見ている気分で読んでいた。


 しかし、お目当ての事件はどこにも記載されていなかった。落胆と共に本を閉じ、元あった場所へ戻し立ち読みで凝り固まった体を伸ばしていた。


「あったぞー」


 そんなときだ。えいほーの気の抜けた声が聞こえたのは。


「あったって……ああ、文集か」


 どうやら一時的に文集のことが頭から抜け落ちていたみたいだ。


 本来の目的そっちのけで本を読んでいたのか……。まあこういう事は良くあるので気にはしないが。


「えっ! ほんとに!」


 やけに嬉しそうな北村の声に多少の罪悪感を感じつつ、俺もえいほーのもとへ足を進める。


「よく見つけたなぁ」


「ん……まあな」


 そういうえいほーの手には、一冊の本が握られていた。


「んで、探してたのって多分これだろ?」


 差し出された厚さ一センチほどの本を受け取り確認する。間違いない。確かにこれだ。


「……んぅ」


 俺の手元を覗き込んでいた北村が、妙なうめき声を発した。


「どうしたんだい北村さん?」


「なんかさ必死に探してた私が馬鹿みたいだな~って思ってさ……」


 しみじみと呟かれた言葉の意味を理解する前に、北村は再び口を開いた。


「それにしても、文集って思ってたより小さいんだね。あとなんか安っぽいし」


 とは言うものの、文集を見つめる目は、期待に満ちた言葉とは裏腹なものだ。興味心身なのが手に取るように分かる。


「まあ、文芸部の文集っていったら大抵はこんなもんじゃないのか?」


 そう軽口を叩きつつ、文集を北村に差し出す。


 本と呼ぶのも憚られるくらい安っぽい作りの一冊。けれども俺は、俺だけは、この本の価値を知っていた。


 手にした文集は去年のもので、その年の部員は間島さんを含めても三人しか居なかったことを。たった三人で、厚さ一センチの文集を作り上げたことを。それだけの文を書くのがどれほど大変かということを。そして、その内容が素晴らしい物だということを。


 そこいらの本では太刀打ちできない面白さが、この文集にはある。


「まあ俺だって、前に居た中学のやつしか知らないけどな」


 文集が北村の手に渡る。期待して良いぞ。こいつはそれだけのものを持ってるからな。


「……うん。ありがとう。千葉くん」


「んじゃあ、さっさと戻ろうぜ」


 言葉も終わらないうちに出入口へと向かう。断じて照れくさくなったわけじゃない。断じて違う。北村の笑顔に見惚れそうになったとか、そんなんじゃないぞ。


 そう! 早くしないと昼休みが終わってしまう!


 昼飯抜きで午後の授業を受けるなんてまっぴらごめんだからな!


「ちょ、おい、礼の一言くらい無いのかよ」

 

 そんなえいほーの叫びを背に、俺は歩き続けた。


「あ、待ってよ千葉くん!」


 待って……か。悪いな北村。


「…………もう、待つのは止めたんだ」


 誰の耳にも聞こえないよう呟く。


 さて戻ろう。


 出口は目の前だ。



   *   *   *



 机の上の小さな明かり。薄暗い自室に浮かぶその中で、私は広げていた文集を閉じた。


「んぅ~~~」


 少しだけ椅子を引いて、凝り固まった体をジワリと伸ばす。読了までにかかった時間は一時間弱。身動き一つせず夢中になって読んでいたから、関節という関節がミシミシ悲鳴を上げてるよ。


 体中に広がるじんわりとした感覚。まるで本の内容が染み渡っていくみたいだ。


「それにしても、ほんっと面白かったなぁ」


 この文集を読んで、間島さんの才能を実感されられた。私と一つしか変わらないのに、こんなに面白い物語を書けるなんて。いや。これは去年のだから、今の私と同じ年齢の時に書いたことになるのか。


 文集を手に再び体を伸ばしながら、頭上でパラパラとめくっていく。これは癖みたいなもので、なんていうのかな。感動を再確認する儀式……みたいな?


「あれ? これって……」


 そんな時だ。私がそれに気付いたのは。


「……?」


 ページの余白。一行目よりも右側の余白部分に、薄っすらと文字のようなものが見て取れた。お札なんかでよく見る、透かし彫りとかいうやつだ。


「こんなのあったっけ?」


 気のせいかと思い明かりの下でまたペラペラとめくっていると、他のページにも透かし彫りを発見。最初は分からなかったのに、一度見つけてしまえばいやでも分かる。べつに嫌って訳じゃないんだけどね。


「どうして気付かなかったんだろう?」


 騙し絵を見ていて最初は何に騙されてるか分からなかったのに、ふとした拍子で分かって以降、今度はなんで分からなかったのか分からなくなった時のような、そんな気分。


「え~っと、なになに……」


 とりあえず、ノートを出して見つけた文字を書き出していく。その全てがアルファベットや記号で、一文字じゃ何の意味も見出せなかったからだ。


 文集の一ページ目から順に並べて書いていくと、半分ほどで透かし彫りされた文字の正体に行き着くことが出来た。


「これって……URL……?」


 どうしてこんなところに……。


「考えるよりもまずは行動!」


 部屋の明かりをつけ、久しぶりにPCを起動させる。インターネットを開いてURLを直接入力。普段はキーワードで検索しているから入力にちょっと手間取った。


 意を決してエンターキーをタップ。いつもと違う事をするってなーんか緊張しちゃうなー。

短い読み込み時間が終わり表示されたのは、個人でやっているらしいブログだった。


「なにこれ……」


 このブログは明らかにおかしかった。ブログなのに記事が一件しか載っていない。それだけなら、単に製作者が三日坊主だったで終わりだけど、問題はその唯一の記事だった。


 タイトルも本文もなく、一つのリンクが張ってあるだけ。


 クリックしてくださいと言わんばかりに堂々と鎮座しているそれを、私はついつい押してしまった。だって気になるんだもん。



【未解決事件紹介】



 飛んでいった先で表示された文字に、若干気後れしながら読み進めていくと、どうやらここには、私が住んでいる街で起こった事件のうち、未解決の事件について書かれていることが分かった。いったい誰が作ったのか知らないがけど、やけに悪趣味なページだよ。一応最後まで流し読みしてみたものの、興味のある事件は一つとしてなかった。


 一番最後に現れた「戻る」ボタンをクリックして、前のブログに戻る。結局何だったんだろうこのブログは。製作者の意図がまったく分からない。


「……ん?」


 とそこで、ある変化に気が付いた。


「記事が……増えてる……!?」


 最初からあった記事の上に、新たな記事が書かれていた。


「……えっ?」


 タイトルを見た瞬間、唐突に世界から音が消える。


 痛いほどの静けさの中、胸の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。



【全国同時多発児童誘拐事件】



 妙に長い事件名と共に記された事件のあらまし。それを読み進めようとして、はっと手を止める。


 これは見ちゃいけない。


 本能がそう悲鳴を上げていた。


 半ば反射的にウィンドウを閉じ、PCをシャットダウンさせる。


「…………」


 過ぎたる好奇心は身を滅ぼす。


 いつかどこかで聞いたフレーズが、頭の中でうるさいくらいに反響していた。



【本日の発明品、大・解・説!】


北村「本日の発明品は――って無いよ! 今回は何も発明品出てきてないよ!」

千葉「まー図書館行って文集とってきただけだったからな。逆にどう発明品を使えと」

北村「でもでも、そんなこと言ったらこのコーナーの意味なくなっちゃうよ! そもそも作品的にどうなの今回!?」

千葉「こんなこともあろうかと、今日はゲストを呼んでおいた」

北村「おお!」

千葉「栄えある最初のゲストはこの御方! 図書委員のえいほー君でーす」

永峰「えいほー言うな!!」

千葉「えいほーはえいほーだよなー」

北村「ねー」

永峰「くっ……北村さんまで……」

千葉「それでえいほー、お前何しに来たんだ?」

永峰「はぁ!? 呼びつけたのはそっちだろ!?」

千葉「いや、元々ゲスト呼ぶ予定なんて無かったんだけど、弥桐部長が」


部長『やることが無いならゲストでも呼んでお茶を濁すのが王道だあぁぁ!』


千葉「……って言うもんだからさ。とりあえず呼ぶだけ呼んでみた」

北村「あー。なるほど」

永峰「納得したの!?」

千葉「というわけだから何か喋れ」

永峰「雑っ! オレの扱い雑っ!」

千葉「まあ落ち着けってえいほー」

永峰「えいほー言うな! オレの名前は奉介だ!」

北村「え、えいほーくん落ち着いて」

永峰「~~~~~っ!!!」

千葉「おや、電話だ……っげ、沙耶加先輩」


 ピッ


宮原『ちょっと勝彦! どうしてゲスト第一号があたしじゃないのよ! こういう時はまず登場順にゲス――』


 ピッ


千葉「…………(登場順ならメガネ先輩が先でしょうに)」

北村「どうしたの千葉くん? 苦い顔して」

千葉「なんでもない」

永峰「その様子だと宮原先輩か。お前まだこき使われ――」

千葉「というわけで今日のゲストはえいほー君でした。みんな、名前だけでも覚えて帰ってね」

北村「バイバーイ」

永峰「漫才の掴みみたいに締めるな!!」


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