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第2話:錬金術工房での学びと初めての魔道具改良

ミリアが地元の錬金術工房に通い始めて半年が経った。まだ5歳の彼女だが、毎日工房へ通い詰め、師匠のガルドから基礎を学んでいた。その姿は、大人の職人たちをも驚かせるほど熱心だった。


「ミリア、お前は本当に変わった子だな。こんなに小さいのに、疲れも見せずによく通う。」

ガルドは笑いながら、彼女の頭を軽く撫でた。


「だって、面白いんだもん! それに、もっと便利な道具を作ってみたいから。」

ミリアの目はキラキラと輝いている。その情熱に、ガルドは感心しながらも少し心配そうな顔をした。


「ただし、基礎が大事だぞ。応用に走りすぎると、錬金術は失敗した時にとんでもない結果を招く。」

「うん、分かってる。ちゃんと勉強するよ!」


ガルドの工房では、錬金術に必要な基礎知識――魔道具に使われる素材の特性やマナの流れの仕組み、簡単な調合技術――を学んでいた。しかし、ミリアの知識吸収のスピードは異常なほど速かった。


ある日、工房で一人作業しているガルドの助手が、不意にため息をついた。彼が作っていたのは、農作業で使う「魔法クワ」だったが、なかなか完成せず苦戦しているようだった。


「うーん、どうしてこんなに動作が安定しないんだろうな……。設計通りに作ったのに、マナが途中で漏れてる気がする。」


それを見たミリアは、すっと助手のそばに近寄った。


「ねえ、それ、ちょっと見てもいい?」

助手は驚いたが、特に断る理由もないので魔法クワを差し出した。


「これは……マナの流れが、ここで詰まってるんだと思う。この部分、素材の組み合わせが悪いんじゃないかな?」

彼女は小さな手でクワを指し示しながら言った。その指摘に、助手は「なるほど」と思わず唸った。


「たしかにここか……でも、どうすれば改善できるんだ?」

「ここの素材をもっと軽くして、導管の形を少し曲げてみたらどうかな? そうすればマナの流れがスムーズになると思う。」


ミリアの提案に助手は半信半疑ながらも、言われた通りに修正を始めた。そして数時間後、クワは見事に安定して動作するようになった。


「す、すごい! 本当に直った!」

助手が歓声を上げると、ガルドが奥から現れた。


「おい、何があったんだ?」

「ミリアちゃんが、僕のクワを修正する方法を教えてくれたんです! おかげでちゃんと動くようになりました!」


ガルドは驚きの表情を浮かべた。

「お前、たしかに基礎を学び始めたばかりだよな? どうしてそんなことがわかるんだ?」


ミリアは少し照れくさそうに笑いながら答えた。

「うーん、たぶん前にガルドさんが教えてくれた、マナの流れの基本と、素材の性質の話が役に立ったんだと思う。」


「それにしても、普通の弟子ならそんな発想には至らないぞ……」ガルドは呆れたように笑った。

「ミリア、お前のその頭脳、どこで手に入れたんだ?」


「……たくさん考えるだけだよ!」

ミリアは笑顔で答えたが、その目には確信が宿っていた。この世界で、彼女の前世の知識が確実に役立っているのだと。



---


その日以来、ミリアは工房の中でも「天才少女」として一目置かれるようになった。ガルドも特別な目で彼女を見始め、少し高度な技術にも触れさせるようになった。


「ミリア、次はお前に簡単な魔道具を一から作ってもらおうと思う。」

「本当?」

「ただし、これまでに学んだことを全て使ってな。失敗してもいいから、自分で考えて作るんだ。」


ミリアは大喜びで、与えられた課題に取り組み始めた。それは、工房でもよく作られる「魔法ランプ」を作ることだった。


彼女は設計図を描きながら、頭を悩ませた。

「どうすればもっと効率よく、しかも長時間光を出せるようになるんだろう……」


考え抜いた結果、彼女はマナを蓄える小型の結晶を内部に仕込むことを思いついた。それによって、ランプを頻繁に充填しなくても、長時間使えるようになるはずだった。



---


数日後、ミリアが完成させた魔法ランプは、工房内で試験されることになった。ガルドや助手たちは、期待半分、不安半分の様子で見守る。


「それじゃあ、点灯するぞ……」

ミリアがランプを軽く叩くと、鮮やかな光が部屋を満たした。その光は通常のランプよりも明るく、しかも全く熱を発しない。


「なんてことだ……こんな単純な構造でここまでの効率を実現するなんて。」

ガルドが感嘆の声を漏らすと、助手たちも一斉に拍手した。


「すごいよ、ミリアちゃん! こんなの見たことない!」

「ありがとう。でも、まだ改良の余地があると思うから、もっと工夫してみるね!」


彼女の言葉に、周囲はさらに驚いた。この年齢で完成に満足せず、次を見据える姿勢に、職人たちはただ感心するばかりだった。

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