第12話:食料問題を解決する「マナ温室」
マナメスの開発が成功し、医療現場に革命をもたらしたミリアの工房には、さらに多くの依頼が寄せられるようになった。その中で、地方の農村から届いた手紙がミリアの目を引いた。
「ミリア様、突然のお手紙をお許しください。我々の村では今年、凶作に見舞われ、食料が不足しています。このままでは冬を越すことができません。どうか、食料生産を助ける魔道具を開発していただけませんでしょうか。」
手紙を読み終えたミリアは、深刻な表情で考え込んだ。工房の机に座り、リオとエマにも相談する。
「この手紙を読んで、農村の食料問題をどうにかしたいと思ったの。でも、一体どうすればいいのかしら……。」
リオが腕を組みながら答えた。
「農村って、作物を育てるのが生活の基本だよな。土地や気候の問題でうまく育たないってことも多いんじゃないか?」
「それなら、気候を調整できればいいのかもね。」エマが補足するように言った。「寒さや干ばつの影響を受けずに作物を育てられるようにすれば、食料問題の解決に近づけるんじゃない?」
ミリアの目が輝いた。
「気候を調整する……それだわ! 魔道具を使って、作物を育てるための理想的な環境を作り出す『マナ温室』を作ればいい!」
リオが驚いたように言った。
「温室? そんなことができるのか?」
「ええ、理論上は可能よ。マナを使って内部の温度や湿度を一定に保つ装置を作れば、どんな気候でも作物が育つ環境を作れるはず。」
エマが頷きながら言う。
「それに、マナ温室なら作物が育つスピードも速くなるかもしれないわね。土壌や水分を調整すれば、収穫量も増やせるかもしれない。」
ミリアは早速設計図を描き始めた。彼女の頭の中には、前世のビニールハウスや温室のイメージが浮かんでいた。それに、マナの力を組み合わせれば、さらに効果的な装置が作れると確信していた。
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工房に籠り、数日間の試行錯誤の末、ミリアたちは最初の試作品を完成させた。それは小型の温室で、内部にマナを循環させることで、温度と湿度を一定に保つ仕組みが組み込まれていた。
「これが……マナ温室の試作品よ。」ミリアはテーブルに置かれた装置を見ながらつぶやいた。
リオが装置をじっと見つめる。
「見た目はシンプルだな。これ、本当にうまくいくのか?」
「試してみましょう!」ミリアは笑顔で答えた。
彼らは温室内に種を植え、装置を稼働させた。内部の温度がじんわりと上昇し、湿度も適切に保たれている。エマが装置を観察しながら言った。
「これ、すごいわね。外が寒くても、温室の中は暖かいし、乾燥もしてない。」
「でも、これで作物がちゃんと育つかどうかは、まだわからないわ。」ミリアは慎重に言った。「少し時間を置いて、結果を見てみましょう。」
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一週間後、ミリアたちは温室内の様子を確認した。そこには、元気に育った緑色の芽がいくつも並んでいた。リオが目を丸くして叫んだ。
「おい、見ろよ! 芽がこんなに元気に育ってる!」
エマも笑顔を浮かべる。
「すごいわ……外の寒さの影響を全く受けてないみたい。」
ミリアは嬉しそうに頷きながら言った。
「成功ね! これをもっと大きくして、村全体の農作業を支えられるようにすればいい!」
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ミリアたちは試作品を元に改良を重ね、マナ温室を大型化することに成功した。そして、彼女は完成した装置を持って、農村を訪れることにした。
手紙を送ってきた村の長老が、ミリアたちを迎えた。
「おお……ミリア様、本当に来てくださったのですね!」
ミリアは笑顔で答えた。
「この装置を使えば、作物を育てる環境を整えられます。ぜひ試してみてください!」
村人たちと協力し、マナ温室を村の畑に設置すると、長老は半信半疑の表情で尋ねた。
「これで本当に作物が育つのですか?」
「ええ。少しだけ待ってみてください。」
数日後、温室の中では、これまで育ちにくかった作物が順調に育ち始めていた。村人たちはその様子に驚き、歓声を上げた。
「こんなに早く芽が出るなんて!」
「今年の冬はこれで乗り越えられるかもしれない!」
長老が感激の面持ちでミリアに頭を下げた。
「ミリア様……この装置は、まさに私たちの命を救うものです。本当に、本当にありがとうございます!」
ミリアは微笑みながら答えた。
「これからも改良を続けて、もっと多くの村や町で使えるようにします。食料問題を解決するために、全力を尽くします!」
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村からの帰り道、リオが感心したように言った。
「お前の発明は、人の暮らしを変える力があるんだな。農村に笑顔が戻るのを見ると、俺も嬉しくなるよ。」
エマも静かに微笑みながら言った。
「ミリア、次はどんな魔道具を作るの? きっとまた誰かを助けるものなんでしょうね。」
ミリアは空を見上げながら答えた。
「そうね……次はもっと多くの人の生活を支える道具を作りたい。みんなが安心して暮らせる世界を目指して。」
彼女の挑戦は、さらに大きな目標へと向かって進み続けていた――。




