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第七話 彼女が妹になるたった一つの方法

『星宮さんを妹にしたい』


 星宮さんを慰めたくて、つい口に出してしまった一言。

 人によっては気持ち悪いと思うセリフだ。しかし、素直で純粋な星宮さんは、言葉に含まれる好意だけを抽出して、受け取ってくれたようで。


「わ、わたし、お兄ちゃんという存在に憧れていて……! 陽平くんなら大歓迎です!! わたしでよければ、ぜひぜひ妹にしてください♪」


 照れているのか、顔を真っ赤にしているがすごく嬉しそうだった。

 喜びのあまり、俺の手を両手で握ってブンブンと振っている……可愛いけど、予想外の反応で逆に俺が困っているくらいである。


「い、いや、これはその……言葉の綾というか、実際にそう思っているくらい可愛いと思っているだけで――!」


「それは……つまり、ウソということですか? わたしでは、陽平くんの妹になれませんか……?」


「いや、むしろ妹になってくれたらすごく幸せだけど――!」


「し、幸せなのですか……えへへ、そうですかっ♪ まったく、陽平くんはすごく褒め上手ですね。オシャベリしているだけなのにすごく気分が良くなってくるからズルいです」


 ダメだ。否定しようとすると、星宮さんはすごく落ち込んだ顔をする……その顔を見ていると罪悪感で胸がいっぱいになって、どうしても否定できなかった。


 いや、もちろん星宮さんが嫌いというわけじゃない。

 妹になってくれるのなら、ぜひぜひ妹になってほしいくらいだが……やっぱり、俺程度の存在が彼女の兄だなんておこがましすぎる。


 別に、卑屈に考えているわけじゃない。

 自分のことは自分が一番よく分かっている。だからこそ、自分の価値というのも理解しているのだ。


 星宮さんの価値と比較したら、俺なんて道端の石ころ程度にすぎない。

 どこにでもある、ありふれた存在でしかないのである。


 いや、でも……落ち着け。

 妹にしたいとは言ったものの、実際に俺が彼女の兄になる方法は現実的に存在しない。養子縁組とか、そういう手段を使ったら話は別だが……それは少し、現実的とは言えないだろう。


 だとしたら、これは言葉上の関係性でしかないのかもしれない。

 それならまぁ、あまり気にしなくてもいいのかもしれない――と、思いかけたその時である。


「そいうことなので、陽平くん……わたしのお姉ちゃんと『結婚』してください!」


 星宮さんが、とんでもないことを言い出した。

 透き通った瞳をキラキラと輝かせて、満面の笑みを浮かべながら。


「これでわたしは、陽平くんの『義理の妹』ですっ」


 ……たしかにそれはそうだけど!

 でも、星宮さんの姉と結婚!?


「無理だよ! 俺が結婚できるわけがないっ」


 星宮聖さんといえば、学校で一番の美少女と有名な人である。

 黒髪黒目の清楚系美人で、スタイルも良くて……だというのにとても温厚で優しく、誰に対しても礼儀正しい人らしい。周囲の人からの信頼も厚く、二年生ながらに生徒会では副会長を務めているのだとか。


 さすが、天才である星宮ひめの姉だ。

 彼女もまた俺とは違う特別な人種なのだろう。


 住む世界がまるで違う、異世界の住人。

 そう俺は思っている。


 まさしく、俺なんかには到底手の及ばない高嶺の花なのだ。

 こんなにすごい人と結婚だなんて……当然、無理に決まってる――

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