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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第六十三話 星宮家のお手伝いさん

 ――学校が終わった。


 放課後はいつものように、ひめと教室でゆっくり過ごした。聖さんが生徒会の仕事を終えるまで二人でお菓子を食べながら雑談して、聖さんがやって来てから一緒に校門に向かう。星宮姉妹は送迎の車を待って、そんな二人に手を振って別れる。


 これがいつもの流れだ。

 しかし今日は少し、様子が違った。


「……あれ? もう到着していますね」


 歩いている途中で、急にひめがそんなことを呟いた。

 到着って、もしかして送迎の車のことかな?


 言われて気付いた。校門の近くに見慣れない形状の、なんだかフォルムがかっこいい車が停車している。俺の語彙力だとこういう表現しかできないのが心苦しい。ああいうのって高級外車……になるのかな? 左座席にハンドルがついているので、たぶんそうだと思う。


「あれって、ひめのお迎え?」


「はい。お手伝いさんが来てくれてますね」


「いつもはもう少し遅いのに、今日は早いね~」


 予想は当たった。そしてなんだか急に緊張してきた。

 や、やっぱり挨拶はした方がいいよな? 星宮姉妹とは仲良くさせてもらっているし。


 恐らく、運転席にいるのがお手伝いさんだろう。まだ細部が見えないが、女性っぽい気がする。


 星宮姉妹はかなりのお嬢様。そんな家に仕えているお手伝いさんということは、つまりメイドということになるのかな?


 俺、大丈夫だろうか……星宮姉妹に悪影響を及ぼす悪い虫として警戒されないか、ちょっと不安だ。


「陽平くん、せっかくなので紹介してもいいですか?」


「ひめちゃんがいつもお家でよーへーのこと話してるから、みんなすっごくよーへーのこと気にしてるみたいだよ~?」


「き、気になってるんだ……」


 緊張が更に、強くなる。

 気分は恋人の両親に挨拶するときの彼氏みたいだ。いや、女性とお付き合いしたことが無いので、そのたとえはあっているか分からないのだが。


 とにかく、変に疑われないように礼儀正しくいよう。

 そう心がけたタイミングで、運転席の扉が開いた。


 距離はあと数メートルほどだろうか。車から出てきてくれたおかげで、ようやく容姿が見えた。


 姿を現したのは――メイド服を着た、子供だった。


「……え?」


 思わず声が漏れた。

 視線の先に、小さな女の子がいる。


 黒髪のボブカットで、ぱっつんと切り揃えられた前髪と、頭の上にちょこんと乗ったプリムが印象的だ。


 色素の薄い瞳はまっすぐ俺を見据えていて、微動だにしない。


 そして小さい。八歳のひめよりは流石に大きいのだが……彼女はせいぜい、11~13歳にしか見えない。私服でランドセルを背負っていたら、間違いなく小学生と認識していたと思う。


 そんな彼女が、高級外車の運転席から降りてきたのだ。

 驚きのあまり、言葉が出てこなかった。


「あ、めいちゃんだ。おーい」


「芽衣さん。今日もお迎えありがとうございます」


 星宮姉妹が気さくに話しかけている。

 そこでようやく、メイドさんは動いた。


「……お嬢様、おかえりなさい」


 ゆっくりと丁寧にお辞儀をする。

 その所作と、落ち着いた話し方を聞いて、無意識に背筋が伸びた。


(あ、子供じゃない)


 見ていたら分かる。

 態度が、明らかに『大人』だ。空気感がどこかひめに似ている気がする……見た目ではなく、中身からにじみ出るタイプの人なのだと気付いて、緩みかけた気を引き締めておいた。


 だからこそ、あまり動揺せずにちゃんと礼儀正しく対応できたのだと思う。


「それと、はじめまして。伊藤芽衣よ」


「はい。はじめまして、大空陽平です」


 今度はこちらに頭を下げて挨拶をしてくれたメイドさん――芽衣さんに、俺も頭を下げて挨拶を返す。


「……うちのお嬢様が、お世話になってるみたいね」


 ただ、芽衣さんの表情は変わらない。

 無表情で冷たいままで……その態度は、どこか警戒されているようにも感じた。


 しかし、嫌な気分はしない。というか、既視感を覚えていた。


(出会った頃のひめに似てるかも……?)


 仲良くなる前は、ひめもこんな感じだった気がする。

 それを思い出して、なんだか懐かしいくらいだった――。

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