表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

262/264

第二百五十七話 忘れられない記憶



「――あのっ」


 クラスのみんなの前で、ひめが声を上げる。

 その瞬間、誰もが押し黙って彼女に視線を集めた。


 その光景を見て、ふと思い出す。

 ひめはこうやって、人の視線を集める。普通とは程遠い特別な存在だからこそ、自然と注目を集めるのだろう。


 そんな彼女は、凡人の俺とは違う世界の人間なんだろうな――そう思っていた時もあった。

 でも今は、違う。


 ひめの隣にいてあげられている。

 だから、彼女を支えてあげるためにも……少しだけ強めに、彼女を握る手に力を入れた。


『そばにいるよ』


 そう伝えるための仕草を、ひめもきっと感じ取ってくれたのだろう。


「……えへっ」


 こわばった表情が、ちょっとだけ緩んだ気がする。

 それから彼女は、小さく息を吸ってから……一言、みんなにこんな言葉をかけた。


「――ありがとうございました。勝つことができて、嬉しいです。とても、素敵な思い出になりました」


 その言葉を耳にした瞬間。

 俺は、ちょっとだけ泣きそうになった。


(ごめんなさい、じゃなくて……ありがとう、か)


 ひめは他人に迷惑をかけることを極端に恐れる傾向があった。

 聡いからなのか、彼女は一を聞いて十以上のことを察する。だからこそ、自分の行動が他人に与える影響の強さを考慮して、普段から感情を押し殺すような子供だった。


 結果、表情の変化が小さくなって、感情の表現を苦手とするようになったわけだが。

 でも、子供の成長は早い。


 出会ってから、彼女は少しずつ大きくなっていった。

 もちろん、身長だけが成長しているわけじゃない。心の在り方も、良い方向に変わってきていたのだろう。


 前までのひめなら、この場面でみんなに謝っていただろう。

 勝ってなお、拭えぬ罪悪感に苦しんでいたはずだ。


 でも、今は……素直に勝利を喜んでいる。

 謝罪ではなく、感謝の気持ちの方が大きくなっている。


 そこに、ひめの成長を感じて――感動した。


 同時に、すごく報われたような気持ちにもなった。


(良かった。あの時、ちゃんと鼓舞してあげられて)


 ひめが転んだ直後。変に慰めるのではなく、ちゃんとそばで励ました結果、今の成長へとつながったと思う。

 その喜びを、心から噛みしめていると。


「――いやいや! 俺たちも、星宮さんの応援のおかげで勝てたみたいなところがあるからな!!」


 門田がひめの言葉に喜ぶように、デレデレになっていた。

 分かるぞ。ひめの応援は可愛いから、彼の気持ちはよく分かる。


 そしてたぶん、クラスのみんなも同じような心境だったらしい。


「こっちこそありがとー!」


 明るい声が聞こえた。視線を向けると、太巻きさん……と呼んだら失礼なのだが、どうしてもインパクトが強すぎて、そのあだ名が先に出てきてしまうのは申し訳ない。とにかく、ひめが声をかけたクラスメイトの女子の言葉を皮切りに、クラスのみんながひめに歓声を送ってくれた。


 なんだかんだ、みんなひめのことは見守っていたのだろう。祝福の言葉に、俺も頬を緩めた。


 なんて優しい世界なのだろうか。

 一人の子供の笑顔を守るために、みんなで一丸となって頑張った。


 そのおかげで、今日という一日がとても素敵な思い出になるだろう。

 俺にとっても、もちろんのこと。


 それから、ひめにとっても。

 あるいは、俺以上に……一度見たことを忘れられない彼女にとって、今日という一日は特別なものになるのかもしれない――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ