第二百三十九話 良い意味でロリコン
久しぶりに全力で運動した。
「はぁ、はぁ……」
膝に手をついて、額を拭う。汗がべっとりと手に付着して思わずため息が出た。
天気は快晴。動かないでいたら少し肌寒さを感じることもあるのだが、全力で動いたらちゃんと暑いから人間の体って不思議だ。
一応、替えの体操着を持ってきていて良かった。汗だくな上に、綱引きで転んだり引きずられたりしたせいで砂だらけだ。後で着替えないとなぁ。
……なんて、心の中でぼやきながら息を整えていると。
「大空、お疲れ! よくがんばったな!!」
いつの間にか隣にやってきていた門田が、俺の背中を軽くたたいて労ってくれた。
今しがた、綱引きの全試合が終わったところである。戦績は上々……というか、一位だったのでこれ以上ない結果だった。
先ほどまで、門田は仲の良さそうな運動部の面々と肩を組んで勝利を喜んでいたのに、俺のところにまで来るなんて本当にいい奴だなぁ。
「門田もお疲れ。おかげで勝てて良かったよ」
「何言ってんだよ! 俺だけじゃなくて、みんなでがんばったから勝てたんだよっ」
「うん。運動部、みんなすごかった」
「運動部だけじゃなくて、お前も……な?」
くっ。なんていい奴なんだろう。
俺の活躍なんて本当に大したことなかった。それでもちゃんと俺のことも称えてくれる当たり、門田は本当に性根のいい奴だと思う。
「あと、女子たちのおかげだな! 普段はむさくるしい男しかいないけど、やっぱり女子が応援してたらみんなのやる気が違うし」
「……お、おう」
俺を労ってくれた時よりも大きな声で言われたので、ちょっとびっくりした。
鼻息が荒い……門田たちはちゃんと男子高校生なんだなぁ。女子の前でやる気を出していて、なんか青春っぽさを感じた。
女子の目線か。うーん、気にしていなかった。
俺が意識していたのは、あの子だけだったなぁ。
「それと、星宮な。珍しくなんか楽しそうだったし、みんなずっとデレデレだったぞ」
「分かる。かわいかった」
激しく同意した。
普段は無表情なことが多いひめ。俺や聖さんの隣でこそ感情豊かになってきたものの、今回は一人だけで観戦していた。それでも楽しそうだったので、あの子を見るたびにかわいくて疲れも吹き飛んでいたくらいである。
男子たちも俺と似たような感じだったらしい。女子の前でやる気満々だった、と言われるよりも俺は今の言葉の方が共感できたので、強く頷いた。
「か、かわいいってまっすぐ言えるお前はすごいと思うが……まぁ、大空らしくはあるか。うん」
「俺らしいってなに?」
「いや。ほら……だって大空ってあれなんだろ? その、小さい子が好きってやつ」
「ロリコンじゃねーよ」
なんてことを言うんだ、こいつは。
失敬な。あまりの発言にちょっと言葉が荒くなった。そんな俺を見て、門田はなぜか笑っている。
「冗談だよ。ま、とりあえずお疲れ様! 午後は玉入れとリレーが全員参加だっけ? またがんばろうな!」
そう言ってから、彼は走り去っていった。
次の競技があるのだろうか。早足でどこかへ向かっている……その後ろ姿を見送ってから、ふと気付いた。
(あれ? 俺ってもしかして、クラスメイトからもロリコンだと思われてる???)
今日までまったく会話したことがない門田にまでそう思われていたのなら。
クラスメイトみんなが、俺をそう言う人間だと認識している可能性はあった。
心外である。
でも、うん……ひめのことが好きか嫌いかと言われたら、大好きと答えるので。
(まぁ、ロリコンと思われててもいいや)
あまり気にしないことにした。
門田も、俺に対して悪いイメージを持っていたわけじゃないように見えた。良い意味でロリコンだということだろう。その単語に良い意味があるのかは知らないのだが。
と、いうわけで。
とりあえず、綱引きが終わった。疲れたので、とりあえずひめに癒してもらおうかな――!




