第二百三十六話 意外な出番
俺とひめの出番はリレーと玉入れだけ。
玉入れもリレーも午後にあるので、午前中はひめと一緒にクラスのみんなを応援して過ごそうと気楽に思っていたのだが。
「大空、そろそろ集合時間だぞ~」
二年一組の待機場所に指定されているテントの一角。ひめと一緒に横並びで座って、すぐ近くで行われている女子のドッジボールを眺めている時のことだった。
「え? 集合時間って……な、なにが?」
クラスメイトの男子から急に声をかけられて、ちょっとびっくりした。
慌てて振り返ると、坊主頭の爽やかな男子がそこにいた。いかにもスポーツマンといった風体である。袖から見える腕と太ももは筋肉でパンパンだ。
当然だが、普段はまったく会話しない相手である。まぁ、そもそも俺はひめ以外のクラスメイトとそんなに会話をしないのだが……とにかく、ほとんど初めての会話といってもいいだろう。
たしか名前は……門田だったかな。
いったい、何事だろうか。
「おいおい、自分の出場競技を忘れてんのか?」
「……出場? 俺が?」
「うん。綱引き、お前の名前があるんだが」
え。そうなの?
不思議そうにリストを眺めている門田。俺も隣に行って用紙を確認してみると、たしかに『大空陽平』と名前があった。
「き、記憶にない……」
「そうなのか? まぁ、綱引きなら別にいいだろ! なんか色々あったんだろうし、とりあえず来いよ」
そういえば、出場競技を決める際に色々とごちゃついていた記憶がある。各種目に振り分ける際に、人数の調整として割り振られていたのかもしれない。
「分かった、すぐ行くよ。呼んでくれてありがとう……集合場所って、あそこの綱が置かれている場所でいい?」
「おう! 俺は先に行ってるからな~」
気さくにそう言ってから、門田は走り去っていった。
さて、そういうわけなので。
「ひめ。申し訳ないけど……」
少し待ってて。
そう言い切る前に、ひめが俺の言葉を遮ってこう言った。
「わたしも行きます」
「行くの? いやいや、ひめは出場しないから待ってた方が……」
「いえ、出場はしません。ただ、近くで見ているだけです」
あ、そういうことか。
いきなりの事態で少し動揺しているのかな。冷静になって考えると、ひめが出場するわけないのに。
まさか綱引きに出ることになるとは。
個人競技でもなければ、球技でもない上に、やることと言えば綱を引っ張るだけなので、大きく足を引っ張ることはないと思う。
でも、なんだかんだちょっと緊張していた。
だ、大丈夫かなぁ。
「えへへ。陽平くんががんばっているところを応援したいと思います」
一方、緊張している俺に対して、ひめはなんだか楽しそうだった。
聖さんの活躍を見て以降、分かりやすく機嫌が良かったけど……更に表情が明るくなった気がする。
(が、がんばろう……!)
そんなひめを見て、俺はちょっと気合を入れた。
聖さんと同じだ。ひめにいいところを見せたいので……大活躍は絶対に無理だけど、せめてみっともないところは見せないように努力しよう。
そう決意して、ひめと一緒に待機場所へ向かうのだった――。




