第二百三十五話 妹にいいところを見せたくてお姉ちゃんもがんばってます
体育祭は午後まで行われる。
俺とひめは最低限しか出場しないのだが、実は色々な競技があって運動部のみんなは大忙しだ。一応、出場回数の制限などあって各クラスが平等になるようにルールは設定されているものの、やっぱり運動部の多いクラスは有利だろう。
「あ、また勝ちました。陽平くん、意外とわたしたちのクラスは強いかもしれませんね」
「そうだね。思ったより、なんというか……うん。強いかも」
弱い方が良かった、なんて言ったらがんばっているみんなに失礼である。
でも、心の奥底でほんの少しだけそんなことを思ってしまった。
体育祭はクラスごとの対抗である。各学年で順位を決める形式だ。
点数は加点方式。一位さえ取れたら大きな点数がもらえるし、最下位になったら点数がもらえない。上位争いをしたければ最下位だけは取らないようにした方がいいだろう。
そして、数競技が終わった今……うちのクラスが首位争いをしていて、ひめと一緒に驚いていたというわけだ。現在、五クラス中二位である。
「お姉ちゃんのクラスも調子が良さそうです。今、わたしたちと三点差で一位ですね」
「そうなんだよなぁ。よりにもよって、聖さんのクラスが相手かぁ」
俺とひめが所属しているのは一組。そして聖さんのクラスは四組。その二つ名前が得点板の上に並んでいる。まだまだ競技数はあるのでここから変動する可能性は高いけど……はたしてこれからどうなるんだろうか。
先のことは分からない。俺たちのクラスもここから大きく調子を落とす可能性はある。
しかし、現在首位の四組だけはずっと上位にいるだろうなということは、容易に予想できた。
なぜなら、ポイントゲッターの彼女がいるからである。
「やっぱりお姉ちゃんは大活躍でした」
「聖さん、意外と動けるんだよね……」
普段はゆるゆるで、ふわっとした印象の強い人なのに。
食べることと寝ることが大好きで、運動なんて大嫌いなのに。
「お姉ちゃんは運動ができるタイプのナマケモノさんですから」
「機敏だし、パワーもあるよね」
瞬発力、というのだろうか。
持久力は見た目通りだが、瞬間的な運動能力の才能が突出している。
「あれでメンタルがタフなら、スポーツで名を上げていたと思います」
聖さんに対しては厳しいひめですら認める、運動能力。
何かしらのスポーツに適応していれば、今頃は国を背負って競技するような選手になっていたかもしれない。
さすが、ひめが生まれた星宮家である。
何かしらの才能を持っていても納得できる血筋だけど……まぁ、残念ながら天は二物を与えず。聖さんが運動に対して微塵も興味を持っていなかったせいで、その才能は宝の持ち腐れとなっている。
しかし、今この瞬間においては最も輝きを放つ才能だった。
「生徒会のせいで出場競技に制限がなければ、四組が頭一つ抜けてますね」
「今の時点でも十分すごいけどなぁ」
もしかしたら、自分がバランスブレイカーであることは分かっているのかな。
ああ見えて意外と雰囲気を大切にする人だから、みんなが体育祭を楽しめるようにあえて生徒会の仕事に専念しているようにも見える……というのは、気のせいかな。
まぁ、真相は聖さんしか分からないし、聞いても答えてくれそうにない。あまり気にしすぎても意味はないだろう。
とにかく、聖さんはこの体育祭を盛り上げるようにがんばっている。
そして、そんな姉の姿を見てなのか。
「……♪」
今日のひめは、少し機嫌が良さそうだった。
一ヵ月前は、体育祭に対して憂鬱そうにしていたのに……思っていたよりも今日は表情が明るい。
今まで練習したから、というのもあるだろう。
あと、うん……ひめもなんだかんだ、姉のことを慕っているのだ。
もしかしたら、聖さんが活躍していることが嬉しいのかもしれない。
そして聖さんも、ひめにいいところを見せるためにがんばっているのだろうか。
そう考えると、この姉妹は……やっぱり、すごく微笑ましかった――。




